こもりうた 1 - 3
(1)
がばっ
佐為 「どうしました?ヒカル…随分うなされてましたけど。ああ、すごい脂汗、嫌な夢でも見たのですか?」
ヒカル「……さ、さい…?」
佐為 「はい?」
ヒカル「ゆ、ゆめかぁ…よ、よかったぁ…!」
佐為 「ヒカル、そんなに恐ろしい夢をみたのですか?…ああ、泣かないでください、ヒカル!」
ヒカル「佐為、佐為…オレさ、オレ…うっ、オレ、夢の中でさぁ…」
ヒカル「オレさ、夢の中で佐為とケンカして…佐為に『どっか行っちゃえ!』って言っちゃったんだ…そしたらさ、
お前『分かりました、私は虎次郎の所に帰ります』って言って。……マジで帰っちゃうなんて、
オレそんなつもりじゃなかったのに…オレ…ひっく…」
佐為 「ヒカル…ヒカル、それは全部夢ですよ。ネ?ほら、私はここにちゃんといるでしょう?」
ヒカル「うん、でも…ごめんな、佐為…ごめんな。だから…どこにも行くなよな…」
佐為 「どこにも行きませんよ、行けるわけないじゃないですか、私はヒカルにしか見えないんですから」
ヒカル「でも…でもさ、佐為は帰りたいって…思ったこと無いか?」
(2)
佐為 「何処にですか?私の帰る場所なんて…」
ヒカル「虎次郎のところにさ」
佐為 「ヒカル…虎次郎はもう…」
ヒカル「うん、だけどさ…いつも佐為言ってるじゃん、虎次郎の事…良い奴だったんだろ?」
佐為 「…ええ、虎次郎は私にとって大事な人ですよ」
ヒカル「それに比べて…オレは馬鹿だし、佐為の言う事聞かないし…嫌にならない?」
佐為 「ヒカル…そんなことありませんよ、ヒカルだって私には大事な大事な人です…」
ヒカル「じゃ、じゃあさ…オレと虎次郎、どっちの方が好き?」
佐為 「ヒカル…」
佐為 (ヒカルのこんな必死な瞳、初めて見ました…ヒカル、そんなに私のことを思ってくれているなんて)
佐為 (「同じ位好き」なんて、欺瞞の言葉はこの子はきっと喜ばない…)
ヒカル「さ、佐為…?(やっぱり困るよな…こんな事聞いちゃってサ…)」
佐為 「そうですね、虎次郎は私にとって一番良い子でしたよ…とても優しい人でしたし」
ヒカル「そ…そっか…そうだよな…」
佐為 「…でも、一番可愛いのはヒカルですね」
ヒカル「かっ…!?」
佐為 「ヒカルはいつも元気があって、一緒にいると明るい気持ちになれる…私はいつもヒカルの元気に助けられていますよ」
ヒカル「ばっ、馬鹿!男が可愛いなんて言われたって、嬉しくなんかねーよ!」
佐為 「フフフ、そうですか?でも本当にそうなんですよ?ヒカル」
ヒカル「バカバカっ!バカ佐為!」
(3)
佐為 「もうおやすみなさい、ヒカル」
ヒカル「うん、じゃーさ…佐為、歌うたってよ、子守唄」
佐為 「おやおや、ヒカルはまるで赤子のようなことを言うんですね。この年になって…ウフフ」
ヒカル「なんだよ、いーじゃん!千年前の子守唄、聞いてみたい!」
佐為 「うーん、困りましたね〜私、歌はちょっと…」
ヒカル「いいの!いいから…オレ、佐為の歌が聞きたいんだよ」
佐為 「……分かりました、ヒカル坊やは困った子ですね」
ヒカル(……………ほ、本当にヘッタクソ……)
佐為 「考えてる事は分かりますよ、ヒカル!もう、せっかく歌ってあげたのに…」
ヒカル「あ、ゴメンゴメン!でもさ、オレが初めてだろ?佐為の子守唄聞いたの」
佐為 「ええ、そうですよ。天童丸殿にも虎次郎にも、聞かせた事は有りませんでした…」
ヒカル「…何か、優越感」
佐為 「えっ?」
ヒカル「なんでもねーよ!なあなあ、続き歌って、佐為」
佐為 「まったく、しょうがないですね〜…ちゃんと寝るんですよ?ヒカル」
ヒカル「はーい…」
終わり
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