ぬくもり中毒 1 - 3
(1)
(これは夢だ。)
それがヒカルには解っていた。
解っていた けど 止められない。
止まりたくない。
体を這う手、唇、ぬくもり
夢の中であるというのに、現実よりリアルな
いや、現実ではあり得ない筈のリアルな感触。
だから止められない。
夢だから。夢の中だけでも。
お前に抱かれたいと思ったんだ。
佐為
ぼやけた天井が見える。目をこすってみると、湿った感触がした。
こすった目で辺りを見回すと
まだ辺りは暗く、夜は明けてないようだった。
しばらくボーッとした後に、ゆっくりと上半身を起こし布団を軽く持ち上げ
股間の方へ目をやった。やはり…やってしまっていた。
今週で何度目になるだろう、母さんに何て言われるんだろう、また自分で洗うんだろうなぁ…。
そんな事ばかりが頭の中を駆け巡る。
布団をおろして、大きなため息。
「はーー………」
生ぬるい温度を持った下着がとても気持ち悪く感じた。
夢の中じゃあんなにも気持ち良かったのに。とまた、さっきの夢を思い出しかけ
じんわりと下腹部に刺激が来るのにハッとして
両手で頭を抱え込んで、左右に振る。
何を考えてるんだ、俺は。
ちらりとベッドの右側に視線を落とす。
(2)
居ない
もう、佐為はどこにも居ない。
それは理解したつもりだった。それでも俺の碁に佐為が居るのだと、そう理解した筈だった。
頭では理解していても、あの夢の中でのあり得ない程の肌の感触が体を反応させる。
けだるい体を動かし、ベッドの上に座ったまま湿っている下着を脱いだ。
下着を取りに行くのに面倒くさい。そのまま下着もズボンも床にほうり出し
上半身をベッドへと背中から倒れ込んだ。後頭部を枕が優しく受け止める。
夢の中の佐為、あたたかかったな…
夢の中の佐為はちゃんと触れるし、キスだって…
ぼんやりと、また夢での出来事を思い出し無意識に左手は自分の唇を触っていた。
目を閉じると、夢の続きでも見ているかのように佐為の顔が瞼に浮かぶ。
じわじわとした刺激がヒカルの下腹部を刺激する。
「佐為…」
右手が徐々に下へと伸びる。
指が性器へと触れたとたん、ピクッと何かに弾かれたように体に電気が走った。
股間がビリビリとした刺激に覆われ、熱を持つ。
「…ぁ…はぁっ」
呼吸は荒くなり、ベッドによがるようにしてうずくまった。
右手で性器を握りゆっくりと上下にこすると硬く膨らんで来る。
唇を触っていた左手を、ヘソから胸へTシャツをまくりあげながら滑らす。
自分の手の平の温度がやけに熱く感じ、まるで自分の手では無いような感覚に陥る。
(3)
佐為の手、佐為の温度。
今度は、ヒカルの体を触る佐為の姿が浮かんだ。
「ッ、う、んっ…」
ゾクゾクッ。また体に電気が走る。
一段と性器は硬く勃起し、上下にこする速さが増す。
左手は乳首をつまんだり揉んだり忙しくヒカルの体を滑ってゆく。
「あっ、あっ、ぁあっ……さ…い…っ……はあっ…」
上下にこする度に小刻みな吐息まじりの声と、佐為を呼ぶ声が出る。
性器が心臓のようにドクドクと鼓動しているようだった。
(トク トク トクン トクン トクン ドク ドクン―――――!!!!!)
「はあっ、あっ、あ、あ、あああ、っ!!!」
(ビュクッ ビュルッ…)
溢れ出た精液がベッドに、ヒカルの体に零れ落ちた。構わずヒカルは横倒れになってうずくまる。
「っふ……は…」
恍惚の表情で息はまだ荒く、肩は上下に揺れている。
ゆっくり瞼を開けると、途端に視界がぼやけた。
後から後からとめどなく涙が溢れてきた。
夢でもいいから、
オマエが俺を抱いてくれるのなら
オマエがそこに居てくれるのなら
それでオマエのぬくもりが感じられるのなら
溢れてくる涙を拭いもせず、再びヒカルは目を閉じ
体に零れ落ちた精液を指につけ、そっと肛門へと近づけた。
ずっと抱いていて、佐為
(終わり)
|