少年王@1周年 1 - 4
(1)
「ボクが即位して1年……!」
素っ裸で鏡の前に立った少年王・アキラはグリコのポーズをとりながらうっとりと呟いた。
「お父さん、お父さんの息子であるボクの愛息もこんなに大きくなりました!」
執事である座間から手渡されたグロテスクなぺ二スケースを横に立てかけ、少年王はそれ
を息子の真上、丁度少年王の可憐なおヘソの上に装着した。
「今はケースのほうが8倍ほど大きいけど…」
横を向くと、変な位置に突出したぺ二スケースが笑いを誘うが、誰も大声で笑ったりは
しない。それは少年王の逆鱗に触れることを恐れているわけではなく、誰もが敬愛する少年
王の確かな成長を見守ることができた喜びを微笑みに変えているからだった。
「ホラ座間、ボクがちょっと擦っただけでこんなに元気に!」
「そ…それはようございました。なんと羨ましいことか…っ」
座間は糖尿が悪化して、全く愛息に元気を与えてやることができないでいる。懐からラ
ベンダーの香りを染み込ませたレェスのハンケチを取り出してさめざめと涙を流す執事に、
あるものは労わりをもった視線を送り、またあるものはムフフと笑ったりしていた。
「アキラくん、キミが触ったらそうだろうが、例えば…」
立つ足を右足から左足に替え、アキラ王は相変わらずグリコのポーズのままだ。そんな
アキラ王の少し元気になったエリンギを、オガタンが遠慮なく伸ばして来た手がするりと
なで上げてゆく。
「ひゃん!」
アキラ王はびくんと身体を震わせると、左右に伸ばされた手が大きくバランスを崩した。
(2)
「他人の手で触られるともっと気持ちがいいだろう」
「……なんだ今のは…。電流が走ったぞ今」
「1周年の記念に、今日は他人の手でイかされることを教えてあげよう。大人への一歩だ。
…そのポーズを頑張って続けるんだよ」
オガタンの指が輪を作り、今度はエリンギ(大)を根元から先端に向かってじりじりと
攻め立てた。鏡に映るのは、立ち上がりかけたエリンギ大とパールピンクに輝くアキラ王の
アリの門渡り部分だ。
「も、もう駄目……!」
大きくよろけた王子を、今となっては何スレ目かも判らなくなってしまった506がとっ
さに支える。506の指先が少年王の左胸の飾りを捉えた瞬間、アキラ王は更に身体をぴち
ぴちと跳ねさせた。
「ああん」
…その甘い声に、506を始めとするギャラリーの4分の3は前屈みになるしかなかった。
前屈みになると、鏡に映るアキラ王の淫らな部分がより鮮明に映る。506は幻と言われる
少年王のパールピンクの菊門までをもその目に映したとか映さなかったとか。
「ね、オガタン、このおへちょのケースをボクに被せて……!」
息も絶え絶えに訴えるアキラ王のため、オガタンは執事座間に目配せしておヘソに巻きつ
けたぺ二スケースをエリンギにそうっと被せた。
「ああ、満たされるよ…! このケースに包まれるとすごく安心するんだ」
アキラ王は相変わらず右足を上げたままで、エリンギケースをうっとりとなで上げる。
(3)
毎朝、全身のバランスを見るために両手を上げ、片足で立つことをアキラ王に勧めたのは
彼と彼の父君の主治医であるオガタンだったが、アキラ王は律儀にそれを守っていた。
「オガタン、もう足を下ろしてもいいだろうか?」
「そうですね。今日のバランス感覚も絶妙だ」
「ああ、ボクはいつでも完璧だからね」
アキラ王は鶴のように折り曲げていた右足を一度可憐に頭の上まで振り上げてから降ろし、
腰に両手を当てた。
「さあ、今からちょっと音を立てちゃうけど気にしないでくれ」
少年王はその華奢な腰を少し振った。それだけで、ケースの中はペタンペタンと淫靡な音を
立てる。そのあまりにも微かな音を聞き逃さないために、736はインカムで調理場と音楽係
に連絡を入れ、しばらく音を立てないように命じた。
「フフ、冷たくて気持ち(・∀・) イイ!」
アキラ王は朗らかに笑いながら腰を揺すった。ケースの中で奏でられるペタンペタンがぺっ
たんぺったんへと、そしてビタビタと変化するのも時間の問題だった。
「アキラ王。…それではまた自分でイってしまうつもりか?」
「だってこうすると気持ちいいんだもの」
「オレが逝かせてやるって言ってんだが…」
「もう始めちゃったから、明日してよ……あんっ」
まるでフラフープでも回しているような激しい動きで腰をグラインドさせ、アキラ王は放心
したように顎を突き出した。
『あ〜あ、逝っちゃった』………と、その場にいた誰もが同じ言葉を脳裏に浮かべた。
(4)
「あ〜あ、いっちゃった」
少年王・アキラはテヘッと照れたように笑うと、座間の手を借りてエリンギをケースの中から
取り出した。外気に触れた途端、エリンギからもわもわと湯気が立ち上る。
「みんなが見てるから、ボクもがんばっちゃったよ。座間、拭いて」
可憐という代名詞がよく似合う執事は、ハイ、と蚊の鳴くような声で返事をすると、ポケッ
トから取り出したラベンダーの香りつきレェスのハンケチでそっとアキラ王の萎びたエリンギを
包み込んだ。しっかりとした重量のあるそれは、茹でたてのタコのような感触で手に馴染む。
「ねえ座間」
「なんです?」
エリンギの汁を拭き終わった後のハンカチを顔に近づけてみると、ぷうんと青臭い匂いが
鼻についた。それを大事に胸のポケットに仕舞いこみ、座間は少年王のパンツを手に跪く。
「今度レッドに会ったら、このケースをつけて迫ってみようと思うんだ。どうだろう?」
「それはそれは」
茂人の菊門占いによると、今日はパンツもタイツもブーツも全て左足から穿くことになっていた。
座間は注意深くパンツを穿かせ、マントを羽織らせる。
「レッドもこのマグナム加減にきっとビックリしてくれると思うんだ」
夢見がちな少年王の瞳はキラキラと輝いていた。
泡風呂で丹念に磨かれる肌もキラキラ艶々に輝いていた。
ただ、ビックリするであろうレッドがそのあと盛大に引いてしまうことは確実で、そのことは
誰も指摘することができなかった。
そんなわけで、少年王即位1周年の朝は穏やかに過ぎていったのである。
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