クチナハ 〜平安陰陽師賀茂明淫妖物語〜 1 - 5


(1)
悶えながら珍子に手が伸びる明たん。次第に我を忘れて感じ始める。
「う・・ん、くっ・・ふ・・・ああっ、あっあっ・・・!」
そこに音もなく忍び寄って「賀茂殿、神聖なる禁中で何をしておられる」
と手首を掴む男登場(;´Д`)ハァハァ


(2)
はしたない姿を見られ凍りつく明たん。
己は清浄を保ち禁中を守護すべき陰陽師であるのに・・・
男はそんな明たんの手首をひねり上げ、白魚の如き指に付着した
欲望の証を見て哂う。「ふん。陰陽師殿も人の子というわけですな」
――暗闇の中、男の顔は見えない。


(3)
「些か己を失っておりました。己の立場にして有るまじき不覚悟。
が、このようなことが外に知れては禁中の護りとして示しがつきませぬ。
勝手なお願いではありますが、出来ますればこの件はどうぞご内密に」
明は咄嗟に手をついた。立場はこちらが圧倒的に不利だが
楚々とした風情の己がしおらしくうなだれて見せれば
大抵の相手は蕩かされてしまうことを知っていた。
だが男はくっくっと哂い欲望に塗れた明の掌を己が口元に持って行くと
チュルリと音を立てて舐めた。瞬間、明の背筋に震えが走る。
蛇か何かの長く割れた舌で撫でられた気がしたのだ。
「ッ・・・!」


(4)
おぞましさに手を引こうとする明だが、
男の異常なまでの剛力にがっちりと手首を取られ叶わない。
「そなた・・・人では・・・!」
「陰陽師殿。貴方の精は大変に美味だ・・・私は、もっとそれを長く味わいたい」
闇の中で男がチュルリと舌なめずりする音が響いたかと思うと、
男の影が次第に細く長くなってゆく。
――これは妖。対抗しなければ。
必死で呪を唱えようとする明だが金縛りに遭ったように舌が動かない。
巨きく黒く長い影が哂う。
「無駄な足掻きはお止しなさい。今の貴方が私に敵うはずもない。
都一の陰陽師殿とは言えまだ子供・・・
貴方にとっては不幸、私にとってはまことに好都合」
そう告げると影は一閃、弾けるような音を立てて天井近くまで跳ね上がるや
ズルリと明の表袴の裾に潜り込んできた。
「あ・・・っ!?嫌!?あっ、あっ!」
ズルリ、ズルリッ。
巨きい影は床に長々と尾を引いて這い回りながら袴の中で明の秘所を探り当て、
ずぶずぶずぶとその狭い肉の内部に身をねじり込んでゆく。
――嘘だ。こんな巨きい長いモノがこの身の内に・・・
「あ、嫌、嫌っ・・・!ア、アーッ!」
限界を超えて内部を拡げられ、拡げられてなおぎっちりと満たされ、
強烈に奥の一点を圧迫される刺激とおぞましさに耐え切れず明は絶叫し、
精を放つと同時に気を失った。


(5)
「賀茂っ。・・・大丈夫かよ?賀茂!」
聞き慣れた声に明はゆっくりと目を開いた。
陽の色の前髪を持つ友人が心配そうに覗き込んでいる。
はっとして己が身を見たが着衣のどこにも乱れはなく、指も汚れてはいなかった。
「・・・ゆめ・・・?だったのか・・・?」
「あー?居眠りして怖い夢でも見てたのか?すげェ悲鳴が聞こえたから
慌てて来たってのに。賀茂でも、そんなことあるんだなー」
近衛光は名前そのままの翳りない明るさでにぱっと笑った。
闇の中に居た身にはそれが眩しく感じられて、明は思わず目を細める。
「ホラ、いつまで寝てんだよ。まだ勤務時間中だろ?
どこも悪くないなら、起きた起きた!」
普段は自分のほうこそ昼間から眠いだの退屈だのと騒いでいるくせに、
強引に明を起き上がらせようとする。
子供のように元気な声を微笑ましく思いながら、先刻――夢の中で?――
はしたない行為に及んでいた右手を取られそうになり、思わず払い除けてしまった。
パシ、とやけに高く音が響く。
光が呆気に取られた顔をする。
「あ・・・」
謝らなければ。
そう思うのに喉が詰まったように言葉が出ない。
明はこういう場面に慣れていなかった。物言わぬ式神を家族として十数年も、
謝罪の言葉も感謝の言葉も口にする機会がほとんどないまま過ごしてきた。
だが今目の前にいる光は生きた人間で、自分の友人で、
自分は今彼の親切に対して無礼を働いた。
ここは謝っておかねばなるまい。
そうだ、こんな時のための言葉は――
「近衛、すまなかっ――」
「ちぇっ、イッテーの!人がせっかく親切にしてやってんのに!」
明の謝罪の声は、頭の後ろに手を組んだ光の大声で掻き消されてしまった。



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