肉棒だらけの打ち上げ大会 1 - 5
(1)
ここは、ある地方温泉施設内の大宴会会場。
今日の主役達が浴衣を着て、酒をかわし、おおいに盛り上がっている。
その中からアキラが会場前ステージに現れた。手にはステージ用マイクを
持ち、大きな声で話し出す。
「皆さん、盛り上がってますか?」
「もりあがってまあああ〜すううっ!!」
今日の主役達は、TV出演終了には納得しているが、本誌終了なのは腑に
落ちなく、ヤケ酒をあおっていて、かなりテンションが高い。
その代表が緒方と加賀だ。この2人、宴会が始まってから酒を一気飲み
をし、素っ裸になって裸踊りを披露していた。
「連載終了がなんだあぁあ〜コラッ!、碁には終わりが無いんだ」
緒方は片手に菊正宗のビンを握りながら、マイ肉棒をブンブン振り回す。
加賀は腹に「将棋一筋」と筆で書き、フルチンで会場中を歩いている。
その様子を友達の筒井は、赤面しながら隅っこで小さくなって必死に
見ないフリをしている。
そんな会場内の様子に、呆れ果てているアキラの横に岸本が声を掛けた。
「塔矢、コレ預かってきた」
電報一通をアキラに手渡す。
「ボクにですか?」
「今日この会場主催の愛○会≠ニいうところから電報で届いたらしい」
「愛○会?」
よく分からないが、とにかく自分宛の電報だということでアキラは
とりあえず中身を見た。
『アキラたんお願い、お洋服を脱いでチョダーイ』
(2)
それを目にした途端、アキラは目を丸くした。
「なっ、なんなんですかコレ!?」
「・・・塔矢、こっちを見ろ」
岸本は五円玉に糸を通した物を、アキラの目の前に吊るし、それを左右に
揺り動かした。
「お前は、だんだん眠くなーる」
一昔の古くさい仕掛けに、アキラは いとも簡単に催眠状態になった。
「お前は、だんだん服を脱ぎたくなーる」
目がトローンとしたアキラは素直に「ハイ」と頷くと、自ら浴衣の紐を
解きだした。こんな方法で暗示にかかるアキラが不憫で、岸本は涙ぐむ。
「下着も取れ」と岸本が命じると、アキラは白いブリーフを脱ぐ。
「すまない塔矢、お前が脱がないと代わりにオレが脱がなきゃ
ならないんだっ!」
裸のアキラは、肌の色は白く華奢で無駄な肉はなく、見事な肢体だった。
同性である岸本でもドキッとする。
「仕上げに・・・お前はピンクレディのUFOの歌・振り付けをしろ」
アキラにゴメンと両手を合わせて謝り、岸本はその場からスタコラサッサ
と逃げ出した。
「UFO!」
アキラは、ピンクレディの歌を歌いながら踊りだした。
その様子はオカシイやら、色っぽいやら、とにかく滅多にお目にかかれ
ない芸が繰りひろげられているので、アキラの周りに野次馬が群がり
始める。宴会の料理を頬張っていたヒカルも ようやく事態に気づき、
急いでアキラの元へ走り寄った。
(3)
「うわああー! 塔矢なんてカッコしてるんだよっ!!」
床に落ちている浴衣を裸のアキラに被せる。
「ああ、進藤君駄目だよ! 今ちょうどデジカメでアキラ撮って
るんだから」と、芦原が文句を言う。
「私も写真を撮っているんだから邪魔しないでよ進藤っ!」
芦原の隣に奈瀬がパシャパシャとアキラの写真を撮っている。
「芦原先生、それに奈瀬まで・・・・・何やってんだよおっ!」
「何って、デジカメ撮ってるんだよ。アキラのやつは高くマニアに売れる
しなあ」
「院生でも、塔矢君のファンって多いのよ。この写真売れるわよ!」
「駄目だっつーの!! 塔矢はオレ以外に裸を見せちゃ駄目なんだっ!」
自分のセリフにハッとなるヒカルに、芦原と奈瀬の二人はニヤニヤして
いる。
「なーんだ、アキラとは そういう仲なんだ」
「へー、進藤と塔矢君デキてたんだ」
「悪いかよっ!!」
「いや、オレは他人のことに とやかく干渉はしないからさあ」
「私も別にどうでもいいな。それより進藤、お願いがあるんだけど」
「なっ、なんだよ お願いって」
奈瀬と芦原は、お互い目を合わせて いっせいに口を開けた。
「ヤッているところをゼヒ撮らせて。高く売れるから」
ヒカルの額にピキっと青筋が立ったその時、会場内がザワザワと騒がしく
なった。なんだろうと賑やかな声が聞こえる方にヒカルは顔を向けると、
そこには全裸の行洋がディズニーマーチを歌い、ミッキーマウスの振り
付けをしていた。行洋の脇から五円玉をぶら下げた岸本が走り去っていく
姿があった。
(4)
一瞬会場は静まり返ったが、皆ヤケになっているのか、またムリヤリに
盛り上げたてまくる。ヒカルが呆然としてアキラを抱えながら目の前の
成り行きを立ちつくして眺めていると、また芦原と奈瀬の2人がアキラを
撮り始めた。
「だっ──! もうヤメロよぉ!!」
ヒカルは大声で怒鳴った。
「まあまあ進藤君、そう熱くならないでさ。もう少し撮らせてよ」
「なによ、別に撮ったって減るモノじゃないでしょ。進藤のケチ──!」
カメラ小僧と化した芦原と奈瀬、それにヒカルの3人の けたたましい
言い争いがヒカルの腕の中にいるアキラの耳に届いた。その声がきっかけ
で岸本のかけた催眠術が解け、アキラは正気に戻った。
「進藤・・・・ボクは、いったいどうしたんだ・・・?」
「その・・・・・話せば短いんだけど、何て言っていいのか」
──ホントの事を話せば、プライドの高い塔矢のことだ。
マジぎれするんじゃねぇかなあ・・・・・コワ・・・・。
ヒカルがどうアキラに説明すればいいのかアレコレ悩んでいる中、
アキラは自分が浴衣の下が丸裸な事に気付いた。
「な、なっ、なんでボクは裸なんだ!? コレはどういうことだ進藤!!??」
「イヤだから、その〜えーとおぉお。どう話せばいいのかなあぁっ──!?」
いまいち現状を把握出来ないアキラを横に、ヒカルはアキラ以上に
オロオロと うろたえた。
そんなヒカル達をよそに会場は、行洋・緒方・加賀の3人の裸踊りが披露
され、酒もかなり進んだ事もあってさらにハイテンションになっていく。
その様子を遠くから森下九段が睨みつけていた。
(5)
「打倒塔矢を果たせず酒に溺れるのは、ざまあねえなあチクショー!」
鬱憤晴らしに多量の酒を飲んだのか、森下は目がすわっている。
「森下師匠、せっかくの宴会だから楽しくやりましょうよ」
門下生の一人である冴木が、荒れ気味の森下に さりげなくフォローする。
「そうですよ師匠、塔矢元名人はまだ碁を打っているのですから、打倒の
機会がありますよ。さあ、もう一杯どうぞ」と、同じ門下生の白川が森下
の盃に酒を注ぐ。
「あ〜、オレも二部にはもっと出演したかったぜ。必ずいつか塔矢や進藤
に追いついてみせるぞオレは! だけど・・・・・」
和谷はオレンジジュースを飲みながらチラッと会場を見てボソッと言う。
「最後の最後で目立つのは、塔矢門下だなあ」
和谷の何気ないその一言が森下の半分腐っていた闘争心に火をつけた。
「塔矢門下ばかりデカイ顔させてたまるかっ!
オイお前らも裸になって踊って来い──!!」
「師匠冗談きついっスよ」
大笑いながら和谷は森下を見た・・・、森下の目は とても大真面目だった。
「和谷、オレはマジだっ! その証拠にオレがまず裸になってやる」
森下は勢いよく豪快に服を脱ぎ、和谷が止める前にスッポンポンになる。
「げえぇえっ!」
和谷・冴木・白川の3人は、声にならない声を上げ顔面蒼白になった。
「・・・・・さてと、お前らも早く脱がんか──い!!」
「ぎやぃいああああうああああああっつ―――!!!!!」
最初に白川、次に冴木が森下に捕まり、あっという間に剥かれ、裸に
された2人は必死に股間を両手で隠して、その場で震え縮こまっている。
その様子を目のあたりにした和谷の顔から血の気がサーと引いた。そして
自分に方向を定め走ってくる森下から逃れるために和谷は猛ダッシュ
した。
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