祭の後・又はプチの恩返し 1 - 5


(1)
「まったく、世話の焼けるヤツらだぜ。」
ランたん小説をうpし終えたパパは大きく息をついて伸びをした。
「大体今週は『ううん』でハァハァ、『打ってみます?』でハァハァ、それだけでも
酸欠で死にそうだったんだ。更に今日はハガシ流星剣も出たって言うのに、
幾ら兄弟スレだからって、ランたんにまでハァハァしに出張して、さすがのパパも
疲れたよ…いや、パパはまだヒカルたんハァハァし足りないぞ!今から魔境に
戻ってヒカルたんハァハァだ…今日はどんなヒカルたんに会えるのかなあ…
ああ、ヒカルたんハァハァ、ヒカルたんハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ」


(2)
そんなパパを物陰からそっと覗く男達がいた。
プチ魔境に住む、今は祭の熱も醒めきらない、だが普段は小羊のように温厚で大人しい
プチ住人達であった。
「やっぱさ、ここは一つ、パパにお礼を言わなきゃいけねえよな。」
「あんな良い意味で期待を裏切るハァハァ小説、賑やかな祭、流石はパパだよ。」
「お礼って言ったって、パパの喜ぶものと言えばヒカルたん以外にはねえだろ?
そうか、オレ、帰ってヒカルたんAAの新作にチャレンジしてみるよ!」
住人の一人が新作を練るべくAAアトリエに走って帰って行った。
「いいよな、手に職のあるやつは…オレなんかパパにお礼したくたって何も出来ないよ…」
そんな泣き言を言い出した住人の肩をガッシリと掴む手があった。
「大丈夫だ」
それはそんなプチ住人達を見ていた魔境からの出張者であった。
「こんな時のために用意したものがある。」

見なくてもそれが何であるかは、プチ住人も既にわかっていた。
いや、最初から誰もがそれはわかっていた事だったのだが…
その意味する事の恐ろしさに皆、口を噤んでいたのである。
こんな所がプチ住人は小心者と言われる所以かもしれない。
勇気のあるもの一人がそれを恐る恐る取り上げた。
「問題は…このヒカルたんマスクを誰が被るかだ。」
ヒカルたんマスクを装着してヒカルスレに乗り込み、魔境に祭を提供する。
それが一番の恩返しであると、わかってはいた事だったのに。


(3)
「486、おまえ行けよ、パパ最高って言ってたじゃねえか。」
「それはおまえも同じだろ、>487」
「それを言うなら祭に浮かれてうっかりageた465が最適じゃねぇか」
醜い押し付け合いである。
何しろヒカルタンハァハァの激しい魔境住人達の事、ヒカルたんになってスレに行って
しまったらどんなことになるやら…ドーナツやチョコパイ一つ、カステラのかけらでも
祭を開催できるような陽気な住人達なのだ。
いくらSMっ気のあるプチ住人達と言えど(いや、だからこそ?)、容易に想像できる
祭の様子に恐怖を禁じ得なかった。
一体誰がヒカルたんを演じるのか。住人達は牽制しあいながらお互いを見やった。
その淀んだ空気を打ち破るように、愛らしい声が響いた。
「みんなだめだなあ!パパへのかんしゃのきもちがたりないの?
そんなおくびょうものはボクはすきじゃないなあ…
おとこのこなら、こわくてもにげちゃいけないんだ!
たちむかっていかなくっちゃ!ねえ、おがたくん?」
「ハハハ、アキラくんは強い子だねえ。さすがはみんなのアイドルだよ。ナデナデ
大丈夫だよ、ここにいるのはそんな臆病者ばかりじゃない。
アキラくんの為ならなんだってできる勇者達ばかりだ。
そうだろう?」
突如現われたアイドル達に住人達の空気は一変し、一気にハァハァで一杯になった。
「ち、チチャーイアキラたん…ハァハァ」「兄貴…ハァハァハァハァ」
「つ、ついにちっちゃいアキラたんに会える日が来るなんて…オレ、もう死んでもいい…!」
「兄貴…、兄貴の言う事だったら、オレ、何だってするぜ…靴だって舐めます…」


(4)
「オレやるよ!アキラたんのためならなんだってできるさ!」
「なんだと!?アキラたんに良いとこ見せようとしやがって…オレが行くんだよ!!」
「何言ってやがるんだ、アキラたんのための勇者と言えばオレだろう!?」
「兄貴、兄貴のためだったらオレ、身体はれるぜ!」
「ああん、兄貴ってばカッコよすぎるぅ!あたし、もおダメェ…ハァハァハァハァ
ね、ね、あたしじゃダメかしら?大丈夫よねっ、こんなに可愛いあたしだもん、魔境の
人達だってきっと喜んでくれるわっ!そうよ、ヒカルたんなんか目じゃないわ、プチでも
魔境でも本当のアイドルはあたしなのよっ!」
「し、茂人は止めといた方が良いんじゃないかなあ…オレが勇者になるからさ、」
「なによっ!アタシじゃアイドルになれないって言うのっ!?ひどい、ひどいわ!
あぁあん、兄貴ぃい、住人Aたんが茂人をいぢめるのよぉ…ひどいわ、ひどいわぁ…!」
「じゃ、真の勇者はオレって事で。」
住人の一人がヒカルたんマスクに手を伸ばし、それを頭に被ろうとした。
「あっ、テメェ、一人だけアキラたんの前でカッコイイとこ見せようとしやがって、よこせよ、それ!」
「なんだよ、おまえ、さっきは泣いて嫌がってたくせに!」
「だいたいおまえみたいなヤツがヒカルたんマスクを被ろうなんて図々しいんだよ!」
「図々しい?そんな単語はおまえに返してやるよ!」
先程とは逆にヒカルたんマスクの奪い合いに、スレ内は騒然となった。
(まったく、場の雰囲気に流されやすいヤツらである。)


(5)
住人の一人が頭に被ろうとしていたヒカルたんマスクに、もう一人の住人が手を伸ばした。
奪われまいと被りかけたマスクを両手で抑える。だがもう一人はそれにも構わずマスクを
引っ張った、その瞬間、ピッ、と嫌な感触が手に走って、二人は顔を見合わせた。
その隙を突いて、別の住人がマスクに手を伸ばして奪い取ろうとした。
「あ、」「バカ、やめろっ!!」
声をあげた時には遅かった。
「あぁっ、」 「あああああああああああ………………」

「…テメエら…なんて事しやがるんだ……!」
その様子を見ていたマスク製作者が顔面蒼白となってよろよろと歩み寄った。
そして呆然としている3人の手からヒカルたんマスクの残骸を奪い取った。
「オレが、オレが丹精こめてつくったヒカルたんマスク…
ヒカルたんの愛らしいお口が…大きなお目目が…ぷにぷにのほっぺが…
ああ、ヒカルたん、オレのヒカルたんが…」
マスク製作者は目に涙をいっぱいに溜めてマスクのなれの果てを握り締めた。
涙がぽとりとマスクに落ちた。製作者の涙はヒカルたんの大きな愛らしい瞳のところに
落ちて、まるでヒカルたんが泣いているように見えた。
「…畜生、こんなスレに関わったオレがバカだった。
お前らなんて…お前らなんて、ずっと荒らされてれば良いんだ…!」
製作者の涙は後から後からぽろぽろとこぼれ落ちた。
「ゴメン、ゴメンよ…」
「そんなつもりじゃなかったんだ…許してくれよ…」
とり返しのつかない事をしてしまった。そんな重く苦しい空気が漂って、プチ住人達は
黙りこくってしまった。すすり泣く住人もいた。



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