少年王アキラ? 1 - 5


(1)
「ハハハ! ボクが1位か……!」
 可憐な執事・座間から報告書を受け取った少年王はご満悦だった。
「ふふ、レッドと同じだ」
 今流行のパウダービーズクッションをぎゅっと抱きしめて、枕元に貼り付けた
先週の金曜日の報告書をうっとりと眺める。夜着に着替える途中だった少年王は
今、パジャマの上着だけを着けていて、動くたびにその裾からまろやかな双丘が
ちらちらと覗いていた。
「ねえ座間、ここに。レッドの隣にボクの名前が並ぶように貼って」
 二つの丸みの奥に、何か別の色が見え隠れしている。座間はレェスのハンケチ
をはらりと床に落とし、それを拾うついでにまだチェリーなはずの少年王のチェ
リーな部分を盗み見た。
「……ハァハァ……」
「座間!?」
「アキラさ、ま…はまだ清いお体でいらっしゃいますね」
 図星だった。
 少年王アキラは陶器のようなつるりとした頬を薔薇色に上気させ、クッション
を両手で掴むと座間に向けて放り投げる。
 碁笥よりも重いものを持ったことのない非力な少年王のクッションは目的物に
到達する前にぽとりと大理石の床に落ちたが、ボタンを留めていないパジャマが
はらりとはだけ、少年王のパールピンクに輝く美乳と美珍が座間の濁った目を見
事に直撃した。


(2)
 後に執事は著書『我が少年王』の中でこう語っている。――少年王のそれは、
まるで内側から発光しているかのように光り、私は幻を見ているのだと朦朧とし
た意識の中で自覚した。それほどまでに美しいものを私は見たことがなかった、と。
「オウッ」
 ゾウアザラシのような叫び声を上げ、座間はもんどりうって倒れた。
「当たり前じゃないか! ボクはレッドと共にさいもえトーナメントで同票1位
になり、それから少しずつ大人の階段を上ればいいかなって…。あと1月後くら
いに結ばれれば…って思ってるんだから」
 少年王は『ああっ、言っちゃった』と両手で顔を覆い、ベッドの上で転げまわっ
て悶えている。彼が幼少の頃から仕えてきた執事がそこに倒れていることにも気
づく様子はなかった。
「どうしようか。やっぱり1位のお祝いはき…キッスに決まってると思うんだ。
ボク、上手くできるかなあ」
 少年王は側にあった枕を抱き寄せ、その中央部分にあるウサギの刺繍を目標に
唇を寄せた。このウサギちゃんはヒカルという名のウサギちゃん……。そんな気
持ちでカリっと甘く噛んで確かめると、ウサギより2センチほど外側に噛み跡が
ある。アキラはがっくりと肩を落とした。
「ああ…やっぱり上手くいかないや。どうしようか座間」
「………」
「座間、ボクが相談しているのに何故返事をしない!?」


(3)
 少年王はガバリと身を起こして、そこでようやくベッドの下に転がっている座
間を発見する。レェスのハンケチを握り締めて、座間は白目を剥いて倒れていた。
「なんだ座間、寝ちゃったのか…」
 いつもならすぐに処刑室に連れて行くところだったが、少年王はその判断を下
さずに、枕の下から抜き出していた護身用の鞭を元に戻した。
「今日は気分がいいから、恩赦にしてあげるね」
 大理石の床は固くて冷たいと思うけど、好きで寝てるんだしそのまま寝かせて
あげよう。――こんな優しいボクを、レッドはどう思うだろうか。
 この国を統べる少年王は、こんなところで懐の大きな所をアピールする。
 だが、恐らく座間は今回も放置プレイを望んではいなかった。
 廊下に出て口笛を吹くと、全速力でハマグリゴイシが現われる。馬と言えども、
少しでも王の意に添わぬことがあれば折檻されてしまうので必死だった。
「ハマグリゴイシ、オガタンの部屋へ」
 凛とした声で命じると、ハマグリゴイシは速足で歩き出す。ハマグリゴイシの
筋肉が揺れるたびに、剥き出しのピンクがピタピタとハマグリゴイシの背中を叩
いた。

 オガタンの部屋の扉をハマグリゴイシに蹴破らせると、パソコンを真剣な表情
で見入っていたオガタンがガタッと立ち上がった。
「オガタン、キッスの秘技を教えてくれ」


(4)
 壊れてしまったドアを呆然として眺めた後、オガタンはハッとしてマウスをめ
ちゃくちゃに動かしてパソコンのデスクトップを表示させた。
 その間にも、少年王を乗せたハマグリゴイシはずんずんずん近づいて来る。
「いや…まだ早いよ。それにオレは今それどころじゃなくてね」
「何故だ! この間教えてくれると言っただろう!」
 ハマグリゴイシに跨ったままのアキラ王はおかっぱを振り乱して彼の主治医に
教えを請うた。
「ボクは早く習得しなければならないんだ。レッドと交わす、祝福のキッスの
為に……!」
 興奮してきたらしい少年王のパールピンクのチェリーはぴょこぴょこと反応を
見せはじめる。オガタンは目の前で繰り広げられるスペクタルな光景に息を呑ん
だ。
「表彰台でシャンパンを渡されるだろう? みんなはお互いにかけあったりする
みたいだけど、レッドを濡らしちゃうわけにはいかないから、ここはやっぱり口
移しでシャンパンを飲ませた方がいいと思うんだ」
 自力でパジャマの裾を持ち上げたチェリーは今や細身のエリンギ程の大きさだ。
もう見てらんない。オガタンは無理矢理そこから視線を引き剥がすと、少年王の
脇に両手を差し込んで抱えると、馬から下ろした。
「フッ、まだまだお子様だな…。お上品に飲ませるよりも、ワイルドに口を覆い、
シャンパンを顎から滴り落ちるほど溢れさせた方が燃えるんだぜ」


(5)
「なるほど」
「いいかい? 拙いテクニックながらも、それを上回るアツイ情熱で口を塞ぐん
だ。――こんな風に」
 オガタンは軽く少年王の薔薇の唇に自分のそれを触れさせた。素早い動きだが、
オガタンの唇は的確に目標を捕らえる。
「あっさりキスされてもつまらん。意表を突け」
「わかった」
 アキラ王はすぐに納得した。確かに今のは全く、全然ときめかなかった。
「今のは悪いお手本なんだね。意表を突けばいいんだな」
 オガタンは背後に庇ったパソコンのディスプレイをチラチラと気にしている。
「じゃあな、これでいいだろう。オレは忙しいんだ」
 苛々とした様子で吐き捨てると、オガタンは自分の執務椅子に腰掛けてマウス
を手繰り寄せた。だが、少年王の目を気にしているのか、一向にウィンドウを開
けようとはしない。
「あ、ねえオガタン」
「なんだ」
「ボクをハマグリゴイシの背に乗せて」
 自分で乗れない歳でもないだろう。オガタンは肩を落としたが、この程度のワ
ガママはかわいいものだと思い直す。少年王は自分への愛情を図るために、ちょ
くちょく小さなワガママを仕掛けてきては安心するのだ。



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