通過儀礼 覚醒 1 - 5
(1)
「アーキーラーくん、あーそーびーましょ」
玄関から幼稚園の友達の声がして、アキラは顔を上げた。
「あ、たかしくんが来た。お父さん、ボク遊びに行くね」
アキラはそう言うと、対局後の検討もそこそこに出かけようとした。
「待ちなさい、アキラ。まだ途中だぞ。遊ぶならこれが終わってからにしなさい」
「でも…」
アキラは俯く。
「あなた、囲碁が大切なのはわかりますが、お友達とのお付き合いも大切なのですよ。そ
れにもうずっと対局していたのだから、そろそろ開放してあげてもいいじゃないですか」
困り果てているアキラの頭をなでながら、明子はそう言った。
「いかん。どんな理由であれ、小さい頃からそう甘やかすのはよくない」
行洋はそう言ってアキラに座るよう指示する。アキラは仕方なく元の場所に戻った。
「まったく困ったわね。本当にアキラに甘いのはどちらかしら」
明子はため息をつくと、たかしにまたあとで来きてもらおうと頼みに玄関へ行こうとした。
だがまだ幼い遊び盛りのわが子がかわいそうになって、明子はちょっとした嫌味を言った。
「アキラと離れたくないのはわかりますが、そのようなことをしていたら、いつかアキラ
に嫌われてしまいますからね」
それに行洋の眉はピクリと上がった。
(2)
「ねぇ、アキラくん。お父さんすごーく怖い顔してたけど、遊んで大丈夫なの?」
「う〜ん。わからない。でもお母さんが遊びに行きなさいって言ってたから平気だよ」
アキラはそう言うとたかしと手をつないで近所の公園へ向かった。
明子の嫌味は効果覿面だった。行洋はすぐさま遊びに行くのを許した。だが必ず早く帰っ
てくるようにと耳にたこができるほど言ったのだった。
公園に着いた二人はブランコに駆け寄った。午後の昼下がり、そこには同じような年の子
どもであふれていた。そのためブランコもひとつしか空いておらず、二人は一緒に乗るこ
とにした。
「オレが立ちこぎするからアキラくんが座りこぎね」
たかしはそう言うとブランコに飛び乗った。
「え〜、ボク嫌だ。だってたかしくん、すごくいっぱいこぐから怖いんだもん」
アキラは駄々をこねる。
「アキラくん男の子だろ。そんなの怖がっちゃダメだよ」
たかしはあくまでアキラを座らせようとした。というのもアキラが怖がるのが楽しかった
からだ。
「ヤダ。それだったら違う遊びがいい〜」
アキラはそう言うと、砂場の方へ行こうとした。
「わかった、わかったよ、アキラくん。それじゃあ、オレ座るよ」
たかしはあきらめてブランコに座った。それを見てアキラはにっこり笑うと、ブランコへ
乗った。
(3)
「や〜、怖いよぉ」
アキラはブランコの鎖をぎゅっとつかんで叫んだ。アキラのゆったりとしたこぎ方では物
足りなかったたかしは、思い切り座りこぎでこいだのだった。
「とめて〜、とめて〜」
アキラは涙声で懇願する。そして怖さのあまり腰が抜けたのか、内股になって震えだした。
さすがにかわいそうだと思ったたかしはこぐのをやめて、ブランコを急いで止めた。だが
その衝撃で、アキラの股間がたかしのあごに思い切り当たった。
アキラは固まったまま動くことができない。
「アキラくん大丈夫?」
たかしはあごをさすりながらアキラを見る。アキラは痛そうに股間を押さえて泣き出した。
「ごめんね。ごめんね。痛いの痛いの飛んでけ〜」
たかしはそう言ってアキラの股間をさすった。
「ア…ン」
アキラは泣き声に混ぜて甘い声でないた。ふと腰の辺りにゾクッと何かを感じる。ただ股
間をなでられただけなのに、気持ちよくなってきたのだ。
アキラはなんでだろうとぼんやり考えた。
「もう痛くなくなった?」
たかしは必死になって聞く。
「うん…。でもまだちょっと痛い」
そう言われて不安になったたかしはさらにアキラの股間をさすった。アキラは本当はほと
んど痛みなど感じていなかったが、あまりの気持ちよさにもっとなでてと何度も頼んだ。
「ねぇ、アキラくん。まだ痛いの?」
あまりにも何度も言うのでたかしは心配になった。だがアキラは股間を握ってモジモジと
するだけだった。気持ちいいからなんて本当のことなど言うわけにもいかず、ただ俯いて
股間を握る。そんなアキラにたかしは自分のせいで痛くなったのだからと、謝罪の気持ち
をこめて言った。
「それじゃあ、オレの家に行こう。薬もあるから、オレが手当てしてあげるよ」
本心を言えないアキラはそれに戸惑ったが、たかしは構わずアキラの手を握ると家へ向か
った。
(4)
たかしの部屋に通されたアキラは自分の股間の異変をどうしたらいいのかわからないでい
た。だがさすってもらった快感が忘れられず、幼いアキラは心のままに快楽を求めてしま
う。
「アキラくん、救急箱持ってきたよ」
たかしが息を切らしながら部屋へ入ってくる。それと同時にアキラの鼓動も高鳴った。
この前弟が生まれたばかりのたかしは、お兄ちゃんになったという自覚が芽生え、面倒見
のいい性格になった。
「手当てしてあげるから、ズボン脱ごう」
たかしはそう言うとアキラのズボンへ手を伸ばした。
「や…やっぱりいいよ」
快楽を求めてしまう気持ちはあったが、自分の股間をさらけだす勇気がなかったアキラは、
羞恥心からたかしの手を拒んだ。
「そんなこと言って、あとで痛くなったらどうするんだよ。ホラ、早く」
「やん!」
たかしは慣れた手つきでアキラからズボンとパンツを剥ぎ取った。
アキラは股間を両手で必死に隠す。
「アキラくん、手をどけて。それじゃ見えないよ」
たかしはアキラの手をどけようと、アキラの手首をつかんだ。だがなかなか股間から手を
放さない。困ったたかしはなにがなんでも手をどけようともみあった。その時誤ってアキ
ラの手を握ってしまう。
「アン…!」
たかしの力がアキラの手を伝って股間を握る手に届く。アキラは甘い声をあげた。
「ご…ごめん。痛かった?」
幼いたかしは、アキラがどのような気持ちでいるのかわからない。ただアキラの怪我を治
そうと必死だった。
(5)
「アキラくん、痛いの早く治そう。大丈夫。怖くないよ」
たかしは優しい声でそう言う。それに促されるように、アキラは手をどけた。先ほどの快
感で、アキラの羞恥心は一気に消え去っていたのだ。たかしによく見えるよう、脚をゆっ
くりと開こうとさえする。
「あれ〜? どこにも怪我したとこがないね」
たかしはアキラの股間に顔を寄せて見つめる。そのためたかしの息が股間を優しくかすめ、
そのくすぐったさにアキラはそこがムズムズするのを必死でこらえた。
「ねぇアキラくん、どこが痛いの?」
何の異常も見当たらない股間をマジマジと見つめたたかしは、アキラの珍子にふれた。
「ヤァッン!」
直にふれられたアキラはつい声をあげてしまった。
「え? アキラくん大丈夫? チンチンが痛いの? どんな風に痛い?」
そう聞かれたアキラは何も言えなかった。なぜなら痛いのではなく、気持ちよかったから
だ。だがこのまま何も言わないままにするわけにはいかないとも思った。
「…えっと、ズキズキする」
それを聞いたたかしは救急箱から薬をさがす。そして大きな箱を取り出した。
「ズキズキするっていったら捻挫とかだよね。そっか、だから見てもわからなかったんだ」
たかしは痛みの原因が何かわかりホッと安心すると、箱から湿布を取り出した。そしてア
キラの股間にあわせてカットすると、そこへ貼り付けた。
「ア…冷たいッ」
アキラはぶるぶると体を震わせる。
「大丈夫。これでもう治るから、ちょっと我慢して」
たかしは湿布がはがれないようにぎゅっとそこに手を押し付ける。すると湿布の上からで
も形がよく分かるくらい、珍子が浮き彫りとなった。
アキラは珍子が湿布のねっとりとした粘着物に包まれる感覚と、やんわりとそれを包み込
むたかしの手が気持ちよくて目を閉じて感じていた。
「…アキラくん、気持ちいいの?」
気持ちよさそうに目を閉じるアキラを見て、たかしは不思議そうに言う。
アキラはハッとして目を開けた。
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