浴衣(分岐)青 1 - 5
(1)
彼が欲しているものを、僕は理解した。
それは、僕も欲しているものだった。
僕は手を伸ばし、進藤の髪に指を忍ばせた。
彼の唇が、指を追い、滑っていく。
足の甲の水滴を舐め取り、舐めあげる。
かりっと踝に痛みが走った。
進藤が歯を立てたのだ。
僕の下腹部に熱が集まる。
僕は、少し強引に足を引くと、地面におろし、立ち上がった。
「進藤……」
僕は深い酩酊のなかをさまよう心地で彼の名前を囁いた。
進藤の瞳にも、各仕様のない熱がある。その事実に僕の体はふるっと震えた。
僕の足元にしゃがんでいた進藤がゆらりと立ちあがった。
至近距離で見つめあう。
どちらが先に腕を延ばしたのだろう。
僕たちは他人の気配のない水場で、きつく抱き合っていた。
進藤の汗の匂いが、僕を刺激する。
お世辞にもいい匂いじゃない。でも、僕は進藤の汗の匂いが好きだ。
むっとする汗の匂いの名かに、微かにキャラメルのような匂いがする。
よほど近くにいなければ気づかないほど微かなものだけど、とても進藤に似合った匂いだと、僕は思う。
本当に……、つい最近知ったことだけど……。
それに、僕は溺れる。
進藤が僕の髪に顔を埋めている。
汗臭くないだろうか。進藤は…僕の体臭を、どう思っているのだろうか。
(2)
「塔矢……」
僕の名を呼ぶ、進藤の息が荒い。
僕は、進藤の首に腕を回した。
ほんの少し進藤のほうが背が高い。
だから僕は彼の肩口に、頬を預ける形になっていた。
進藤のうなじに流れる血流の鼓動を、僕は頬で聞いた。
昂ぶった気持ちは、冷たい水で一度は冷やされたはずなのに、進藤がまた掻き立てた。
僕の踝には、微かに痛みが残っていた。
いまこうして目を瞑り、進藤の体温を感じていると、瞼の裏にありありと浮かんでくる。
僕の足を濡らした水を、舐め取っていた進藤の舌。僕の指を咥えた唇。
そして、僕を上目遣いで身つめていた瞳が、僕をただただ煽っていく。
進藤が、しがみつく僕を自分から乱暴に引き剥がした。
少し驚いて見上げたそこに、キスが落ちてきた。
掠めるようなくちづけは、何度か重ねてきたけれど、激しいものはあの晩以来だ。
僕はゆっくりと瞼を閉じた。
そのとき印象に残ったのは、微かに震える進藤の睫だった。
進藤の舌は我が物顔で、僕の口腔をまさぐった。
頬肉を舐め上げ、歯の裏を探り、僕の舌を絡め取る。
歯茎をくすぐる動きに僕は驚いた。
あまりに気持ちがよくて、耳の付け根の下辺りに、ぞくぞくとした快感が走った。
キスだけで、こんなに気持ちよくなるなんて…と、僕はうっとりとしてしまった。
すると、進藤はもう一度舌を絡ませて、僕に唾液を注ぎこんでいた。
僕は自力で立っていられなかった。
普通なら、人の唾液なんて汚いと思うはずなのに、僕は……。
僕は甘いと思った。
薄荷味の唾液が、アンズ飴よりも甘いと思った。
(3)
貪るように、進藤の唾液を僕は喉を鳴らして飲みこんでいた。
欲しくて欲しくて、自分から、進藤の唇を吸いさえもした。
唇が離れたとき、唾液が糸を引いていた。
それが頭上の水銀灯の光を受けて、銀色に煌き千切れて落ちる。
僕も進藤も、肩で息をしながら、お互いの濡れた唇を見つめていた。
ジジッジジッと、水銀灯が音を立てている。
遠くのほうから、がやがやと人のざわめきが聞こえ、テキ屋の男たちのしゃがれた呼びこみの声がする。
喧騒は届くのに、ここは静かだった。
僕は、そっと手を伸ばし、進藤の頬に触れ、髪を梳いた。
もっと彼に触れていたかった。
キスだけで、この昂ぶりがおさまるはずがなかった。
「進藤……」
僕が囁く口元を、進藤はぎらぎらした眼で見つめていた。
「進…藤………」
僕は苦しかった。
目の前の男が欲しくて、欲しくて、息苦しく思えるほどだった。
進藤に触れる僕の手を、彼は強い力で掴んできた。
手首を痛いほど掴む進藤の手は、燃えるように熱かった。
「こっち」
彼は、僕の手首を掴むと、山吹の茂みを掻き分けるようにして、暗がりへと入っていった。
進藤が僕を連れていったのは、大柳の葉影だった。
子供の頃、この柳が僕は怖かった。
誰が幼い僕に吹きこんだのかは覚えていないが、この大柳の枝が地面に届くほど伸びると、幽霊がでるのだと信じていた。
進藤は空いたほうの手で、その問題の枝を左右に払い、中に入った。
それは、柳の緑が織り成す天然の御簾だった。
(4)
「塔矢……」
どんと背中にあたったものが柳の幹だと気づいたときには、既に進藤の腕の中にぼくは捕らわれていた。
「悪りぃ……、もうとまんねえ」
自棄にきっぱり宣言すると、進藤はまた唇を重ねてきた。
強く吸われて、僕の舌は進藤の口腔に捉えられる。
僕は、悪くなんかないと答える代わりに、自分から積極的に舌を使った。
ついさっき、進藤が教えてくれた快感を、今度は僕が彼に与えてやりたかった。
柳の枝に守られていることに安心したのか、僕はその行為に夢中になった。
進藤の上腔を舌で舐め擦ったとき、彼の体が小刻みに震えた。
僕は、僕の拙い愛撫に感じてくれる進藤が愛しく思えた。
僕は進藤の髪を掻きまわし、彼の唇を貪った。
そうしている間にも、進藤は進藤で、僕の浴衣の裾を割り、僕の内股の間に膝を割り入れ、閉じることができないようにさせると、手を差し込んできた。
無作法な手が、浴衣の前を大きく割り、下着を膝までずり下げると、僕の尻に延ばされる。
左右の手が双丘を揉み解しす。
指が食いこむほど強い力で、大きく開かれると、普段は隠れている奥城が外気に触れた。
ほんの少しの涼しさと、頼りなさ。
進藤の指が、そこに触れた。
僕は思わず唇を離し、「あぁ・・・」と声をあげていた。
「そそる……」
進藤が濡れた唇をぺろりと舐めて、そう言った。
そんな君のほうがよっぽどそそると言ってやりたかったが、円を描くようにして、後孔を刺激されては、下手に口を開けばどんな声が零れるかわからない。
(5)
「塔矢……」
どんと背中にあたったものが柳の幹だと気づいたときには、既に進藤の腕の中にぼくは捕らわれていた。
「悪りぃ……、もうとまんねえ」
自棄にきっぱり宣言すると、進藤はまた唇を重ねてきた。
強く吸われて、僕の舌は進藤の口腔に捉えられる。
僕は、悪くなんかないと答える代わりに、自分から積極的に舌を使った。
ついさっき、進藤が教えてくれた快感を、今度は僕が彼に与えてやりたかった。
柳の枝に守られていることに安心したのか、僕はその行為に夢中になった。
進藤の上腔を舌で舐め擦ったとき、彼の体が小刻みに震えた。
僕は、僕の拙い愛撫に感じてくれる進藤が愛しく思えた。
僕は進藤の髪を掻きまわし、彼の唇を貪った。
そうしている間にも、進藤は進藤で、僕の浴衣の裾を割り、僕の内股の間に膝を割り入れ、閉じることができないようにさせると、手を差し込んできた。
無作法な手が、浴衣の前を大きく割り、下着を膝までずり下げると、僕の尻に延ばされる。
左右の手が双丘を揉み解しす。
指が食いこむほど強い力で、大きく開かれると、普段は隠れている奥城が外気に触れた。
ほんの少しの涼しさと、頼りなさ。
進藤の指が、そこに触れた。
僕は思わず唇を離し、「あぁ・・・」と声をあげていた。
「そそる……」
進藤が濡れた唇をぺろりと舐めて、そう言った。
そんな君のほうがよっぽどそそると言ってやりたかったが、円を描くようにして、後孔を刺激されては、下手に口を開けばどんな声が零れるかわからない。
僕は、唇を噛んだ。
進藤が下腹部を擦りつけてくる。
布地ごしではあったけれど、お互いの張り詰めたものが擦れ合う。
「俺、もう…濡れてきた……」
正直過ぎる進藤の言葉に耳まで侵される。
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