平安妄想艶聞録 1 - 5
(1)
―――今は昔、夜の平安京は百鬼が夜行し、人々を苦しめていました。
今日も、都のはずれの荒廃した古寺に、悲鳴が響き渡ります。それは…。
「うわあああああ!!」
近衛光は自分を押さえつける妖怪の何本もの触手から逃れようと身を捩りますが、
全くの徒労でした。ぬらぬらとした粘液に被われたその触手はしっかりと光の体に
絡みついて、却って光の体をぎゅうぎゅうと締め上げるのでした。
「近衛!」
「光!おのれ妖怪、光を離しなさい!」
陰陽師の賀茂明と棋士の藤原佐為が叫びます。妖怪は嘲いながら言いました。
「コイツの命が惜しければ、そこを動くな。ケッケッケッ、怯える事は無い…かわいがってやるよ」
言うや否や、光の体を羽交い締めにしていた触手が蠢き、明確な意思を持って動き出しました。
「うああ…や、止めろ!なんだって…この、離せよっ!」
光は必死に抵抗しますが、手足を拘束されたままで殆ど効果はありません。
触手は光の狩衣の下の小袖の襟から、内衣の袖から、果ては指貫を脱がしにかかって、
その素肌をまさぐり出したのです。やがて触手は狩衣や指貫の内側の大口袴や下着を取り去って、
光は今や単と小袖を辛うじて身にまとっているような状態にされてしまいました。
すると、触手は光の露わになった肢体に粘つく体液を擦りつけるように這い、弄び始めました。
「あっ…いっ、嫌だ…やめろっ!やめろったらぁ!」
光は羞恥と恐怖から喉が張り裂けんばかりの悲鳴を上げましたが、触手が股間に及ぶと
あっ、と息を飲みました。その未成熟な性器を舐めるように弄くられると、光の口からは先程とは違った
悲鳴と息遣いが洩れ始めました。
「…あっ、ああん…やっ、やだぁ……!だ、だめだ…あっ、あっ…」
妖怪の体液と光の性器から漏れ出した先走りの液体が混じり、その健康的な肌を艶っぽい色に映しました。
そして触手はついに光の尻を弄りながら、粘液に潤む肛門にその一本をゆっくりと侵入させました。
「あああっ!ひっ…やだあああ!!」
ヒカルの中の触手はそれほど深くは入りこまなかったものの、体液の助けを借りて腸壁を柔らかく掻き乱し、
ぐちゅぐちゅと音を立てて光の性感帯を抉るように刺激するのでした。
「ああ、んぅ!ひゃう…ふぅん……た、たすけ…助けて…ああっ!あっ…」
しかし光の痴態に、頼みのはずの明も佐為も前屈みになって股間を押さえながら俯いてしまっていたのでした。
(2)
内部をくすぐるような触手の動きに、光の口からはあられもない嬌声が洩れ続けていました。
「あんぅ!ふぅん…あっ、やぁ…もれちゃうぅ!おしっこ…も、もれちゃうよぉ……」
あまりの快感に尿意を我慢できなくなった光が懸命に叫びますが、触手の動きは止まりません。
足を開かされたまま、佐為達の目の前で光は堪えきれずについに失禁してしまいました。
「おやおや、検非違使ともあろう者がおもらしかい?グフフ、こいつはとんだ見物だ」
妖怪の嘲笑に、光は本格的に泣き出してしまいました。
「ふ、ふええっ…!あくっ……んっく………ああっ、うああっ…ぅええぇっ…ん…!」
「近衛…すまない。もう少し、もう少しだけ辛抱してくれ!」
明は悔しそうに顔を歪めますが、光の失禁と泣き顔の為に更に前屈みになってしまった姿勢では、
何とも格好のつくものではありませんでした。そして佐為もまた顔を真っ赤にして俯いていました。
妖怪はそれに気付き、揶揄しながら明達の方へと近付いてきました。
「ケケケッ、何だ貴様ら…このおもらし検非違使に欲情しておっ勃ててるのか?ケケケケケ…」
何も知らない妖怪は、見せつけるように光を拘束している触手を揺らめかせて笑いながら寄って来ます。
「……かかったな、妖しめ!」
そう、そこにはあらかじめ明が結界を張っていたのでした。足を踏み入れた妖怪は、最早一歩も動けません。
「消え去れ、妖怪っ!」
明が何やら呪文を唱え始めると妖怪は途端に苦しみだし、光をとっとと放り出してしまいました。
投げ出された光を佐為が抱き留めるのを確認した明は、術の完成に力を注ぎます。そして…
「ぐわああああああああああ!!」
妖怪は断末魔と共に塵となって砕け散り、その灰はさらさらと風に流れて消えていきました。
妖怪の最後を確認した明は大きく深呼吸をして乱れた息を整えると、急いで光の元に駆け寄りました。
「大丈夫か!?近衛!」
「光、光!しっかりしてください…光!」
明と佐為が覗きこんだ光の顔には、今だ悦楽が色濃く残っていました。
「…なんか変…なんだ……なに、これ……お腹の奥が、熱くて、熱くて…痒いの…」
潤んだままの瞳で訴える光は、どんな淫魔も顔負けするであろう程に妖艶で淫猥でした。
「助けて、助けてくれよ……賀茂…佐為…」
(3)
明と佐為はほとんど同時に息を飲みました。先ほどまで燻っていた劣情がまた頭を擡げてきました。
「痒い、痒いよぉ……あっ、ど、どうしちまったんだよ、オレ…オレ、死んじゃうのか?なあっ、賀茂…?」
細い腰を揺らめかせながら、光は怯えと体から湧き上がるどうしようもない熱さに顔を歪めました。
明は、光を落ちつかせるように優しい声音で話しかけます。
「近衛…どうやらこれは妖怪の呪のせいらしい…これを駆逐しなければ、とても大変なことになる」
「呪…ほっ、本当か!?」
嘘でした。明は冷静に光の体に起こっている現状を見破っていました。恐らく、妖怪の触手の粘液には
催淫作用があったのでしょう。光の中に入りこんだそれはとてつもない掻痒感と性欲を伴った熱さを生み出し、
本体が滅んだ今なお、光を苛んでいるのでした。
「そうだ、だがボクの言う通りにすれば何も問題はないよ」
いつの世も、陰陽師は適当なことをいうものでしたが、成す術のない光は明に従う他ありません。
「佐為殿も協力していただきましょう。よろしいですか?」
「…はい、私に出来る事があれば、何なりと」
明の目配せで、佐為は彼の考えている事を全て了解しました。佐為にしてもこの機会を逃す筈もありません。
「いいかい近衛、この呪に克つにはより強い力で対抗するよりないんだ。その為に、陰陽師であるボクの力と
棋士の中でも特殊な力を持っている佐為殿の力を合わせれば、その呪に拮抗出来る筈だ。
そして、それをキミの中に送り込む…少し荒っぽいけど、我慢できるか?」
「ど…どうすればいいんだ…?オレ、何でもするから…だから、早く……助けてよ…!」
むずがるように叫ぶ光に、明と佐為は顔を見合わせて頷きました。佐為は光を四つん這いになるように抱え直し、
その腰を上げるような格好にして後ろから柔らかく抱きました。明は光の顔を覗きこんで続けます。
「…あの妖怪は淫の魔物だった。だからこっちもそれに相対するには、精の力で呪を解くしかないんだ」
言いながら明は前を寛げます。佐為もまた、光の背後で同じように準備を始めました。
「ボクの精と、佐為殿の精を…キミに直接同時に送りこむんだ…意味が分かる?」
光は目を更に潤ませながらコクンと頷きました。これから待ちうける悦楽に思わず喉を震わせます。
そして、熱く昂ぶった明自身を目の前にした光は躊躇することなく、それをぱくりと口に含みました。
明は息を詰めて、光の髪を何度も優しく撫で上げました。
「んっ…いいよ、近衛っ…」
(4)
明の一物に歯を立てないように細心の注意を払いながら、光はまるで乳飲み子のように
しゃぶりつきました。竿から袋へと拙い動作ながら一生懸命舌を這わせます。
それにつられて、明の口からは熱い吐息が洩れるようになりました。
「んっ…うん……ふっ、んぅ…」
「くっ…近衛、…あぁ……気持ち、良い…よ、っ……はぁっ…」
時期を見計らっていた佐為も、光の細い腰に手をかけると囁くように話しかけました。
「では…私も。光、いきますよ…?」
言うが早いか、佐為の猛ったモノが光の潤みきった後ろの入り口に侵入してきました。
明に歯を立てないよう光を気遣ったゆっくりとした動きでしたが、それでも待ち望んでいた
感触に、光は全身を震わせて悦びました。無意識に腰が揺れてしまいます。
「はぁっ…光の中、とても熱いですよ……ん…」
佐為が初めはゆっくりと、やがて緩急をつけて動き出すと、光は明への奉仕もままならずに
ただただ内壁を掻き乱される感覚を追うばかりになりました。
「ひゃあ!ああっ、あん、ああ…き、きもちイイよぉっ!…ふぁ…んぁ!熱いよぉ…!」
佐為の一物は太さこそ標準でしたが長さは並ではなく、掻痒感に疼く奥まで擦りつけて貰えば、
光は涎を垂らしながら快楽に啼きました。
「そこ、痒い…もっとぉ…もっと掻き回してぇ…佐為っ!うぅん……ひぅ!」
明はそんな光の後頭部をもって疎かになっている自身への愛撫を促しました。同時に佐為もまた
腰の動きを再び緩やかなものにし始めました。
「近衛…口がお留守になってるよ?ほら…」
「んっ……はぁ、んむ…はん……」
光は後ろから得る確かな感覚と、明を高みに導く事に集中しました。やがて、口の中の明の限界が
近い事が分かると、光は吸い上げるように明の竿を喉元まで飲み込むようにしました。
「う、くぅっ…近衛っ……あああっ!」
「んんっ…んぅっ!………ぷはっ!ゴホッ!ッゴホッ!…はぁ、はぁ、はっ…ケホッ!」
明は一際甲高い声を上げると、光の口の中へとその精を吐き出しました。光は殆ど飲み込んだものの、
全ては受け止めきれずに、明自身から口を離すと苦しそうに咳き込みました。
(5)
光が息をつく暇もなく、今度は佐為が待っていたとばかりに大きく腰を使い始めました。
叩きつけるように動かすと、光の尻との間にパンパンと小気味良い音が響きます。
「あぁん!やぁ、さぃっ…はぁん!も、もう出ちゃう…出ちゃうよぉっ!」
「わ、私も…んっ、ひかる…ううっ……はあっ…ああっ!」
「…ひゃっ…あああんっ!」
「……ん、うううっ!…はぁ…」
光が泣き叫びながら射精すると、佐為を強く締め付け、その刺激で佐為も光の内に
熱い精子をぶちまけました。佐為が自身を光からゆっくりと引き抜くと、入り口からは
とろりと佐為が出したものが内股を伝って流れました。荒く息をつく光に明が尋ねます。
「…近衛、どう?まだお腹の中が熱痒い感触が残ってる?」
光はしばらく焦点の合わない瞳でぼんやりとしていましたが、やがて下腹部を確かめる
かのようにさすると、明の問いにコクリと首を縦に振りました。
「……まだ、むず痒い…どうしよう、まだ呪が解けてないみたい…」
「そうか…まだ精が足りないのかも知れないな。佐為殿、今度は交代してみましょう」
「はい、分かりました。光の為ですからね…」
佐為は自身を明の持っていた清水できよめると、光の前にきてその髪を梳くようにしました。
明は光の腰を抱え上げ、妖怪の粘液と佐為の精液でしとどに濡れたそこに一物を宛がいます。
そして光は、心なしか妖艶な笑みを浮かべながら、佐為自身に手を伸ばしました。
長い夜の狂宴は、まだ終わりそうにありませんでした。 <触手の呪編・終>
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