ヘタレ 1 - 5
(1)
正直、俺は大変な事をしてしまったと思う。
最近は情事の最中でも、こんな風に考え事をする余裕も出てきたが、
きっと、今の状態はとんでもないんだ。
その証拠に、終わったらとてつもない後悔の念に際悩まされる。
でも、それは俺だけじゃなくて、進藤もそうだ。
進藤は拒める立場なのに、絶対に拒まない。でも、
「進藤さ、何で、いつも、終わった後そんな顔するんだよ。」
我ながら意地が悪いなと思いつつも、聞いてしまう。
ただ、これは儀式みたいなもんで、この質問に進藤は答えたことはないが。
進藤は泣きそうな顔になって、ソレを見た俺はまた欲情して。
ずっと、ずっと、その繰り返し。
この関係がいつ崩れるのか。
崩れて欲しいのか、続いて欲しいのか、もう俺には判断出来なかった。
解ってるのは、今、俺の下には進藤がいるってことだ。
もうすでに自分のもので潤っている進藤の下肢にそっと指をあてがう。
数えられない位に繰り返しているこの行為。しかし、いつまで経っても進藤は
慣れないらしく、挿入する瞬間全身を強張らせた後、決心する様に力を抜き目を閉じる。
俺を見たくないのだろうか。それとも、俺のを他の誰かと重ねて感じているのだろうか。
そんな進藤を見たくなくて、俺も目を閉じる。
(2)
目を瞑っていると、より感覚が鋭敏になるのか、本当に進藤の中は気持ち良い。
粘膜を掻き分けて中へ中へと進入していく。奥まで届くと、進藤の口からは言葉に
ならない音が上げる。それが、まるで俺の名前を呼んでいる様に聞こえて。
より激しく動くと、進藤はそれに合わせて締め付けてくる。
そのまま本能に任せ、ただ、進藤を貪り続けていると不意に下腹部に何か当たる
のに気付いた。
よくよく見てみると、自分で自分のものを弄んでいるようだ。最初こそ弄ぶ、
というものだったが次第に手の動きは激しくなり、こすり、扱きだす。
俺に後ろを犯されながら自慰をする進藤。
正直、見てはいけないものなんじゃないかと思った。しかし、ソレを見てより
欲情したという事実は否めない。
中のものが硬度を増す事で、更なる刺激を得た進藤の手は、より激しく動き、
いい、いい、いすみさぁんと、喘ぐ。
名前を呼ばれる事で俺は益々興奮し、進藤が二回目に俺の名前を呼んだ時、
中へ射精してしまった。
出してしまった後、ああ、ゴム着けてなかったな、と、冷静になったが、次の瞬間
進藤が達し、俺の液の最後の一滴まで搾り取ろうとする様に締め付け、行為は終わった。
(3)
進藤とこんな関係が始まったのは、俺が中国から帰ってきて、進藤に仕切り
なおしの一局を挑んだ日の事だ。
対戦を進めていき…気がつくと、進藤は泣いてて。
それが、恐ろしい程愛おしくて。
ほんの出来心だったのだが、つい、進藤の唇を奪ってしまった。
最初は、本当にもう、触れるだけ。二三度、啄ばむ様なキスをし、一旦離れる。
…進藤を見つめると、驚きからか、涙は止まっていた。
目の下をそっと舐めると、少ししょっぱかった。
「なぁ、進藤、俺さ、お前の事好きなんだけど。」
「!!」
目を見開く。でも、拒絶はされていない。
いける、と根拠ない確信を感じ、今度はさっきよりもずっと深いキスを。
…が、進藤はこんなキスは初めてらしく、唇を開く、という思考はないらしい。
そんな進藤も可愛くて仕方が無くて、これ以上ないって位に俺は欲情していた。
今考えると、かなり先走った行動だったが、あの時は余裕なんてなかったんだ…
目の前の進藤が可愛くて、卑怯だが今なら手に入れられる気がして。
そっと体重をかけながら腰のあたりを掌でなぞる。それに驚いた進藤は二歩程
下がるが、部屋は結構狭くてベットに突き当たる。
流石に危機を感じたのか、制止の為に声を上げようと開いた唇にすかさず舌を入れ、
貪る様に進藤の口内を犯す。
俺が満足して唇を離す頃には、初めての刺激に耐えれず、息が上がりきっていた。
(4)
進藤は完全に顔を上気させ、さっきまでの泣き顔とは少し違う、
困った様な恥ずかしい様な顔で眉根を寄せて俺を見上げる。
どう行動したらよいのか解らない様だ。
確かに俺は進藤より体格もいいし、力もある。しかし進藤だって男だ。
本気で反対される前に勝負に出なければ。
俺は決心した様に下唇を噛み、進藤、と小さく名前を呼ぶ。
呼ばれた瞬間、正気に戻った様にビクッと身体を震わせる進藤。あ…と
小さく嬌声を上げる。
それは俺を更に興奮させ、起爆剤になった。これからの行動を決心させたのは、
この進藤の声だ。
もっと、もっと聞きたいと思ったんだ。
今度は首筋から。跡を残す位に少し強めに吸ってから上へ巡っていく。三度、
唇に辿り付いた時には、進藤は目を閉じていた。
ソレを確認して、腰に当てたままの手を動かし、ゆっくりベルトを外す。進藤は
何か呻いているが、唇を塞いだままなので声が出る筈もなく。
声を聞きたかったのだけど、正直、この時点で「やめて」と言われて無視出来る
自信がなかった。
そのままジーパンのファスナーに手を掛ける。
ゆっくり時間をかけてファスナーを下ろし、下着の上から進藤自身を掌で包みこむ。
………進藤自身は既に半ば立ち上がっていた。イヤ、表情を見て感じている事は
解っていたのだけど、目の当たりにすると感動がある。
進藤が、俺に感じているのだ。
その事実だけで俺は射精寸前だった。
(5)
下着の上からじゃもどかしくて、少し乱暴にジーパンと下着を脱がす。
唇を塞いだ状態なので、結構な力が必要だったが、そんな事気になる筈がない。
下半身を剥かれた進藤は、俺に与えられる刺激でもう言葉らしいものが出せない様だ。
ぎゅっと、俺のシャツを握りしめている。
そんな進藤の可愛さにクラクラきている反面、俺は一変して窮地に立っていた。
ココまで勢いできたはいいが、これからどうしたら良いのか解らない。
女相手なら、解る。知識として持っているだけだが。でも、相手はいくら可愛くても男だ。
ないじゃないか!
…しかし、世の同性愛者が弄り合うだけで終わる筈がない。やはり挿入するのだろう。
でもどこに?
…イヤ、ソレは一つしかないんだが。まだ頭では理解しきれてない状態だったが、
少しでも先に進みたいが為に(それでも恐る恐る)後ろに指をあてがう。
つぷ、と先端が進藤の中に侵入する。その瞬間、「ひッ…イ、ャ、」と短い嬌声が上がり、
腰が逃げようとする。しかし、俺が抱きしめている状態だったので、逃げるに逃げれない。
抱きしめている手に更に力を入れ、ガッチリと進藤を固定し直し、鎖骨の辺りから耳の裏まで
一気に舐め上げる。そして進藤が新たな刺激に震えた瞬間、指を更に奥に挿し入れた。
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