密か事 1 - 5


(1)
「きょうはここまでにしておきましょう。」
碁盤を前にうつらうつらしだしたヒカルに佐為が声をかけた。
寝ぼけマナコで碁盤を片付けてベッドに入ると、またたく間にヒカルは眠りに
引き込まれていった。
「ヒカル……ヒカル…? もう眠ってしまったのですね、ヒカル。」
すう、すう、すう…。
規則正しい健やかな寝息がヒカルのベッドから聞こえてきた。
ベッドの脇にいってひざまずくと、佐為はヒカルの寝顔に見入った。
昼間は元気いっぱいでヤンチャなヒカルだが、寝静まった今見るその顔は意外と
華奢で愛らしく、見る者誰をも惹きつけずにはおかない。ヒカルの寝顔を見入るのは
深夜独りになった佐為の密かな楽しみだった。
そして、ヒカルの寝顔をたっぷりと見つめた後に、時にはもう一つ密かな楽しみを
味わうことが佐為にはあった。


(2)
佐為の手がヒカルに伸びた。佐為は安らかに上下するヒカルの胸に触れた。
その手はなんの障害もなく、ヒカルに届いた。羽布団も、パジャマ代わりのジャージも、
下着も、佐為は取り除ける必要はなかった。胸ばかりではない。佐為は、手を伸ばす
だけでヒカルの柔らかな髪に、薄くあいた唇に、細いうなじに、そしてまだ大人には
なりきらない陰部にさえも触れることができるのだった。

ヒカルは佐為に触れることはできない。いくら手を伸ばしても、嬉しい時に
抱きつこうとしても、その手は佐為をすり抜けてしまう。ただ空気の感触が
手に残るだけだ。同じように、佐為もヒカルに触れることはできなかった。
だが、正確には、互いに触れたと感じることができないと言うべきかもしれない。
実際には、佐為はヒカルに触れることができた。ただ、それをヒカルが感じられない
だけだ。佐為が幽霊だという固定観念が感覚を阻害しているのかもしれない。
ヒカルが意識をなくしてしまってから佐為がヒカルに触れると、ヒカルはかすかに
それに応える。気が通じるということなのだろう。深夜には、五感が休んでいる分、
それ以外の感覚が働いているのかもしれない。
そのことに気付いてから、佐為は時折、ヒカルとの間で昼間とは違う感覚の交歓を
楽しんでいた。


(3)
佐為は右手を伸ばし、ヒカルのあごを撫でた。耳の付け根からあごの先端まで
包みこむように形の良い手がすべった。人差し指に触れる頬はまだ子供らしい
ふくよかさを残している。中指はムダな肉のない滑らかなあごに触れる。
あごを辿った手が先端までくると、佐為は細く長い人差し指一本で、
まだのどぼとけの目立たない細いのどを辿り、のどもとの窪みに達した。
だが、深く寝入っているヒカルはコトリとも動かない。
眠り続けるヒカルを見つめ、いたずらっぽく微笑むと、佐為はその指を
真っ直ぐ下に降ろしていった。緩やかに上下する薄い胸に達すると横に逸れ、
薄紅色の突起に到達した。左手は同じように右の乳首に触れた。
やさしく揉むように指の腹で転がす。皮膚の色が違っていただけのその場所から
先端が少しずつ形を現してきた。明らかになった固まりを親指と人差し指で
摘むように揉み続ける。
一定のリズムを刻んでいたヒカルの呼吸が少しずつ変わってきた。
はぁ、はぁ、はぁ……。浅く、引きつるように、佐為の行為に呼応して息をする。
口が薄く開いている。胸の上下動は見た目にもわかるようになっていた。
ヒカルが焦れるように体を揺らした。
「ふ、ふ…。その先が欲しいのですね、ヒカル。」
左手は乳首の愛撫を続けたまま、右手をゆっくりと下にずらしていった。


(4)
生え始めたばかりのまばらな叢の中で、ヒカル自身が頭をもたげていた。
ヒカルの反応に微笑んだ佐為は、肌と変わらない色のヒカルの陰茎を握ると
ゆるやかに擦り始めた。

佐為の存在を気にしているのか、囲碁に夢中で欲望に気付かないのか、ヒカルが
自分で手淫することはない。
「ヒカル、私たちの時代にはあなたくらいになれば、こうしたことは当たり前に
していたものですよ。」
こうして男同士で睦みあうことも…
昔、自分の側にいた愛らしい少年検非違使。宮中で難しい立場にある自分を
なにかにつけて守ろうとしてくれた近衛…。
佐為の脳裏に切ない面影がよぎった。

こうした行為に慣れないヒカルは、あまり強く刺激するとすぐに達してしまう。
佐為は再びヒカルに目をやった。早くに到達しないよう気遣いながらゆるゆると
擦っていくと、ヒカルは次第に大きさを増し、先端から露を零し始めた。
乳首に置いた左手が離れると、その手が今度はやわやわとふぐりを嬲る。
はぁ…、はぁ…、はぁ…。
いつしかヒカルの息が荒くなっていた。苦しそうに身を揉んでいる。
「そろそろいきましょうか。」
佐為の扱く手が速くなった。
はあぁっ…、はぁ…、はぁ…、はぁ…。
ヒカルのあごがのけぞり、到達の快感に体がビクビクと震えた。


(5)
あ、ヤバイ!またやっちゃった。
冷たい下着の感触に、ヒカルは顔を赤くした。
「おはよう、ヒカル。どうかしましたか?」
「お、おはよ。い、いや別に何でもナイ!」
慌ててそう言いながらも、ヒカルは昨夜の夢を思い返してみた。
一年前の大会で、途中から佐為に代わって「オレが打つ」って言って、オレが
一手打ったところだったんだ。なぜあんな夢、みたんだろう…。
不思議な気持ちが残ったが、とにかくこの事態をなんとかしなければならない。
ヒカルは階下のバスルームに駆けこんだ。
下着を手早く水でゆすぐと洗濯機に放り込んだ。これでお母さんにはバレないかな…。
ようやくホッとしてシャワーを浴びた。
新しい下着に着替えながら、ヒカルは悩んでいた。
みんな、こんな風なのかな。だからって、こんなこと聞けねぇしな。
佐為に聞くわけにもいかねぇし…。
「ヒカル、朝ごはん早く食べなさいー。体操服は出しといたから、忘れないようにね」
「はーい」
ヒカルは元気よく食卓に向かった。
ちょっと照れくさく、恥ずかしい朝だった。

                                了



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