禁断・純愛の章 1 - 5
(1)
放課後、オレは久しぶりにあかりと歩いていた。
家が隣同志ということもあって、幼稚園・小学・中学と
一緒だったあかり。
でも、オレが佐為と出会い囲碁をやり始めプロになってからというもの
あかりとは何故かすれ違うことが多くなった。
オレは特に気にしていなかったが、あかりからしてみれば寂しくも
あったのだろう。
オレが囲碁をやるとなると、自分も全然興味のない囲碁を
習い始め囲碁部員になる辺り・・・。
そんなことを考えながら、自分より小さくなった彼女を見つめた。
自分より目線が低いあかり。前はオレが彼女を見上げてた。
あ、オレが大きくなったのか・・・。年月を感じさせる。
あかりは全学年男子の中で結構人気があった。
彼女にしたいベストランキングの上位にいたのではないだろうか。
身体つきも、すっかり女らしくなった?
そういえば中学に入って囲碁をやり始めてから、夏にあかりと
海へ行かなくなった。
あかりも邪魔してはいけないと思って誘いにもこなかった。
三谷達といったみたいだが。あかりの水着姿はどんなだったんだろ・・。
静かだった空間に、ふいとあかりが口を利いた。
「ヒカル・・・」
「な・なに?」夢想にふけっていたオレは、あかりの突然の言葉に
心臓が飛び出しそうなほどドキッとした。
「これからヒカルの部屋いっていい?あげたいものがあるの・・」
あかりの静かでかすかな笑顔がオレをドギマギさせた。
(2)
「いいぜ」
オレは、あかりの申し出に即OKした。
「なにくれるんだ、あかり」
「それは、部屋に入ってからのお楽しみ」
あかりは、ほほえむと俯き、顔を少し赤らめる。その態度に
ヒカルは少し怪訝に思うものの、あまり物事を深く考えようとしない質なので、
深く追求しようとはしなかった。
それよりもさっき、自分があかりの水着姿を想像して妄想に耽っていたのが、
本人にばれたのではないかとヒヤヒヤもんだったので、あかりの言葉に
ホッと胸をなで下ろした所だ 。
あげるものか・・・なんだろうな・・・。
ヒカルは、あかりのくれるプレゼントを想像して少し浮き足立った。
ま、手作りのおかしか、マフラー系の編み物だろうけど。
でももらえるものならどんなものでも嬉しいものだ。
こういったことに対して進藤ヒカルは遠慮しない。
塔矢アキラなら、やんわりと断りを入れる人からの贈り物でも
進藤ヒカルは平気で受け取る。
年上に受けがいいのは、そういった面も含まれていた。
なんだか、心がうきうきし出してちょっと興奮気味になったヒカルは、
「オレもお返しに指導碁してやるよ」といい
とびっきりの笑顔をあかりに向け少し小走りで家に向かった。
(3)
「あれ?お母さん、出掛けているのか・・・」
カチャカチャとドアノブを鳴らしながらヒカルは、つぶやいた。
チャイムを鳴らしても何の反応もない。
おそらく買い物か、じいちゃんちにでもいっているのだろう。
しかたないなぁ・・・。
「おばさんいないの?」
あかりは、さっきよりもっと顔を赤くして話かけてきた。
「うん、でも待ってな・・・」
ヒカルは、以前母親から預かってて今だ返してない鍵の存在を思いだし、
ガサガサとリュックを探った。
「あった!」
カチャと玄関のドアが開き、あかりを招き寄せる。
「あかり、入れよ」
「う、うん・・・」
あかりは、ゆでたタコのように顔を赤く上気させ、ヒカルに誘われるまま
家の中に入った。
(4)
「鍵閉めて、おまえ先に部屋に行ってろ!」
ヒカルはそういうと、先に家に入り一階の台所へ足を向けた。
「うん」
あかりは玄関の戸を閉め、鍵に手をかけ回そうとしたが、
思い直し鍵をそのままかけないで、二階に上がった。
さっきから足が、手が、ぶるぶる震えて落ち着かない。
これから起こる事に、不安と喜びと恐怖が入り混じる。
そしてうずまく快楽の波も。
「あ」
きゅん、とあかりのあそこが疼いた。
熱い・・・。
ヒカルと帰る前に飲んだクスリ・・・。
あれが効き始めたのであろうか。
「私には強すぎるよ、三谷くん・・・」
ヌチャ、足を動かすたびにこすれて変な気持になる。
さわらなくても分かる、ヌルヌルとした液体があふれて
股を覆い下着を濡らしている・・・。
じんじんとする下腹部を手で押さえながらヒカルの部屋のドアを
片方の手で回した。
(5)
−おじいちゃんの家に行って来ます、冷蔵庫にケーキがあるから
食べなさい。 母−
置き手紙が絶対あると思ったので、ヒカルは台所へ寄った。
でも、その手紙を見るまでは、心が落ち着かなかった、
佐為がいなくなってからのヒカルは、一人になるのを非情に嫌った。
親しい友人、両親、祖父母がいずれ自分から去る・・・そんな恐怖が
常に心の奥底に巣くってしまったようだった。
自分で自分を叱咤する。
”なさけないな、オレ、男のくせにびくびくして”
”佐為にいずれ会えたとき、笑われちまう”
やがて目頭が熱くなり、視界がぼやけてくる。
”やっべ〜、またオレ・・・”
ぱんっ
なんとか自分の頬を両手で打って、思考を切り替えた。
”そっだ、あかりのおやつ・・・”
冷蔵庫を覗くと手紙の通りケーキが入っていたが、やはりヒカル一人分しか
ない。”やっぱりねえか、2つは・・・・”
ふ〜とため息が出た。ヒカルはケーキを取り出して眺める。
ショートケーキだ、おいしいという店の・・・ヒカルはじっとそれを見た。
あかりに食わせるか・・・別の何かにするか・・・。
ヒカルもそこのケーキが好きだった。そこは行列の出来る店でなかなか
機会がないと食べられない有名なとこ。
だが、男の自分が並んでまで食べるなんて恥ずかしいと思ってしまうヒカルは、
母親がまれにこうして買ってきてくれるのを結構期待して待っていた。
あかりにあげるべきかな、でもオレも食いたいし、あいつダイエット
してないかな、そしたら食えるでもあいつの前でケーキ食うっていうのも・・。
う〜んと腕組みして迷ったが、食べたいという自分の欲求が勝ってしまった。
”よし、あいつが帰ってから食べよ、他の菓子があるかな”
冷蔵庫にケーキをしまい込み、そして棚を物色し始めた。
母親が、明日客人の為に出す羊羹を見つけるのはそれから約10分後・・・。
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