夏休み最後の日 1 - 5


(1)
 どこかでセミの声が聞こえる。八月も今日で終わるという日に、
窓もカーテンも締め切ったオレの部屋は、薄く西日の当たり、ただ
いるだけでも暑かったが、そんなのは気にならなかった。
 窓を閉めたのは、今、腕の中にいるわがままな天使が、明るいと
恥ずかしいと、可愛い顔で拗ねたからだ。省エネ構想を打ち出して
いる石原都知事に、都民として申し訳ない気もするが、オレの優先
順位はヒカルたんの方が遥かに高い。
 寒くない程度にエアコンを効かせて、ヒカルたんのカットソーの
シャツとジーパンをゆっくりと脱がせた。
「バカっ、そんなにジロジロ見るな!」
 オレの視線に真っ赤になったヒカルたんが、どこを隠していいの
か迷ったように、横を向いて躰を丸めた。
 そんなことをしても、二人っきりのこの部屋じゃ、かくれんぼは
無理だよ、ヒカルたん。
「ヒカルたん、真っ白だね」
「だって、プール行けなかったから」
 楽しみにしていたホテルのプールを思い出したのか、ヒカルたん
の表情が少し曇った。
「九月に入ってもまだまだ暑いよ。一緒に泳ごうよ」
「・・・うん」
 頷きながら、ヒカルたんがふぅっと息を吐いた。声をかけながら
オレがヒカルたんの脇腹から腰へのラインを指で辿っていたからだ。


(2)
「お前、何だか、馴れてる?」
「そ、そんなこと、ないよ」
 実は葉瀬中に転校する前に女の子とは経験済みだったが、ここは
わざわざ言うべきところじゃないだろう。それに、ヒカルたんと出
会ってオレは生まれ変わったんだよ。あの頃のやれれば誰でもいい
と闇雲に(;´Д`)ハァハァしていた頃のオレとは違う。
「ほんと?」
「本当だよ。オレにはヒカルだけだよ」
「あっ、名前・・・」
「ご、ごめん。嫌だった?」
「ううん。何だか、くすぐったくて、だけど、嬉しい」
 くすくすと小さく笑うヒカルたん。
「嬉しいの?」
「うん。もっと呼んで、オレの名前」
 ヒカルたんが望むなら、何百回でも何千回でも呼ぶよ。
「ヒカル、ヒカル」
「うん」
「ヒカル」
「オレも、名前で呼んでいい?」
 もちろんだよヒカルたん。小首を傾げ、上目遣いにお強請りされ
たら、例え、何を言われたとしても頷いてしまうよ。
「ツクル・・・」


(3)
 ゆっくりと、ヒカルたんがオレの名を呼ぶ。とても大切な言葉を
告げるように。オレは、今まで生きてきた十五年間で、自分の名前
を一番好きになった。ヒカルたんが呼んでくれる、オレの名・・・。
「ツクル、大好き」
「うん、ヒカル、オレも好きだよ」
 首に回された細い腕に引き寄せられて、何度もヒカルたんにキス
を贈る。絡み合う舌、馴れなくてうまく唾液を飲み込めないヒカル
たんは、それでも一生懸命オレに応えてくれた。
「はぁ、ツクル、オレ、何か、変だ・・・」
「変?どこか痛いの?」
 慌てて身体を起こすと、ヒカルたんは違うと首を振った。
「何だか熱い、ここ・・・」
 躊躇いがちに指差された場所は、ヒカルたんの身体の中心。オレ
とは違い、未成熟な果実のように綺麗なピンク色をしたヒカルたん
自身。それが微かに震えながら勃ち上がっていた。
 最初は女の子と勘違いして一目惚れしてしまったヒカルたんだが、
こうやって雄の証を見ても、萎えるどころかヒカルたんが感じてる
のがはっきりと分かって嬉しいくらいだ。
「オレのキスに感じてくれてるんだ」
「オレ、変じゃないの?」
「ちっとも変じゃないよ」


(4)
 すごく可愛い、嬉しいよ。そう続けると。ヒカルたんの顔に笑み
が戻った。やっぱりヒカルたんには笑顔が一番だ。
「これからもっと熱くなるけど、オレも同じだから」
「うん」
「オレに全部、任せて、ね」
 ヒカルたんの目元、鼻先、顎から首へのなだらかなラインを降り、
白い胸に唇を寄せる。おいしそうな膨らみに誘われて、左側を指先
で摘むようにしながら、まずは右の先端を味わうことにした。
「あっ、やん!」
 突然の刺激に、ヒカルたんの身体が跳ねる。クリーム色のシーツ
上の桃色に染まった肢体。ヒカルたんは神々しいくらいに綺麗だ。
「あぁ、はぁ、あっ・・・」
 部屋の中に響くのは、ヒカルたんの蜜のように甘い吐息と、オレ
の舌が立てる、ピチャピチャという水音だけ。
 ふと、悪戯心が湧いて、舌先で転がしていた苺に軽く歯を立てる
と、真っ赤な顔で噛むなよ!と睨まれた。
「ごめん、ごめん」
 銜えたまま唇を動かす振動に、ヒカルたんがやぁんと一際大きく
悲鳴を上げる。胸の蕾を可愛がっただけでこんなに感じてくれるの
なら、ここに触れたらヒカルたんはどうなってしまうんだろう。
 ヒカルたん自身は既にトロトロと白いものを零している。その先
っぽを軽く指先で撫でてみた。


(5)
「やっ、やだぁ!」
「まだ、触っただけだよ」
「嘘だ・・・電気が通ったみたいに、ピリピリした」
「それは、気持ちがいい証拠だよ」
 ほらと、ヒカルたん自身と同じように勃ち上がってるオレのモノ
を見せる。
「ツクルも大きくなってる・・・」
 初めて他人の勃起したモノを見たのか、ヒカルたんがため息混じ
りで呟いた。その微かに掠れた声に、ぞくぞくとしてくる。
「ツクルのも触っていい?オレ、触りたい・・・」
 うおっ、大胆発言だね、ヒカルたん!(;´Д`)ハァハァ
 ヒカルたんはオレを、オレはヒカルたんのモノを手で握り合う。
オレを真似るようにヒカルたんの両手も動き出した。
「熱いよ、ツクルの・・・」
「うん、ヒカルも熱いよ、すごく。とろけてるよ」
 前だけじゃなく、ここも。ヒカルたんの無防備に晒された乳首を
ぺろりと一舐めした。
「あっ、やめろよ!」
 大きく仰け反りながらも、オレから手を離さないヒカルたんが愛
しいよ。もっともっと気持ちよくさせてあげたくなる。
「あっ・・・ん、ツクル、オレ、もう・・・」
 爆発しちゃうよぉ。そう言い残して、ヒカルたんがオレの手の中
で弾けた。



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