祭りのあと 1 - 5
(1)
「今日の花火大会すごかったよな」
会場をあとにして駅に向かう途中、ヒカルはずっと冷め切らぬ興奮を抑えきれないように話した。
「キャラクター花火っていうのか? 星の形とかの花火って、オレ初めて見たよ」
「そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ。誘ってよかった」
アキラはうれしそうにヒカルの話を聞いた。
大規模な花火大会のため、歩くのもやっとというくらい混み合っていたので、来た当初ヒカルは来なきゃよかったとふくれていた。
しかも慣れない浴衣で来たため、ヒカルは何度も浴衣を着崩してしまった。
浴衣姿のヒカルを見たくて、浴衣で来るように頼んだ自分の責任でもあるが、裾からのぞく足を見ず知らずの者の目にさらしたくはなく、アキラは神経質になった。
しかしヒカルはそんなことなど気にもせず、裾をなびかせながら歩いていていく。
そのせいで何度もナンパされそうになり、アキラはその度に鋭い目つきで相手を威嚇した。
(2)
「この分じゃ、当分乗れそうにもないね」
アキラはまたふくれているんじゃないかと、ヒカルの様子をうかがった。
「仕方ねェよな。でもその分いっぱいしゃべれるからいいじゃん」
ヒカルは屈託のない笑顔で笑う。
アキラはその笑顔を見て、胸がときめくのを感じた。
キスしたい。今すぐここで抱きしめてキスをしたい。そんな思いにかられる。
ヒカルはそれに気づくことなく、先程の花火の話を続けた。
(3)
やっとのことで乗り込んだ車内は、何度か見送ったにもかかわらず、押しつぶされそうなくらい混んでいた。
車内の一番奥の窓際のすみに陣取ったアキラは、ヒカルが人に押しつぶされないよう、自分の体を盾にして立った。
「塔矢、苦しくないか?」
眉をよせて額に汗を流しながら耐えるアキラに、ヒカルは心配そうに声をかけた。
「大丈夫だよ。進藤こそ、苦しくないか?」
アキラは余裕があるとでもいうような笑顔をつくってみせる。
「オレは大丈夫だけどさ・・・」
そう言うとヒカルは恥ずかしそうに俯いた。混んでいるため、周りには気づかれていないだろうが、二人はとんでもない格好をしていたのだ。
両手でヒカルの体を守ろうとアキラは踏ん張っているのだが、あまりにも至近距離で向かい合っているため、まるでキスでもしているかのような感じなのだ。
しかもヒカルの足の間にはアキラの片足があり、人ごみで揺れる度に、ヒカルのそれを浴衣の上からアキラの足が刺激する。
ヒカルは変な気持ちになって逃げ場を探した。とりあえず、このアキラの足だけでもどかさないと、自分の体の異変を気づかれてしまう。
ヒカルは早く次の駅に到着して、客が少しでも減ることを祈った。
(4)
駅に到着すると、客がいくらかホームに出たので余裕ができた。ヒカルはその隙に、アキラに背を向ける。そして乱れた浴衣を直した。
出発と同時に車内にはさらに客が乗り込む。
アキラももう限界なのだろう。支えきれず、ヒカルの体に覆いかぶさるようになった。
あまりの混み合いに、ヒカルは息苦しくなった。酸素が薄くなったのか、息が荒くなる。
それに反応したのか、アキラのものが存在をアピールするかのように硬くなるのを、ヒカルは腰の辺りで感じた。
ヒカルは深呼吸すると、口を押さえて息がアキラの耳に届かないようにする。
しかしアキラの手はゆっくりとヒカルの浴衣のあわせから進入し、乳首を弄った。
ヒカルは驚いてその手をどけようとする。しかしアキラの手には力がこもっていてびくともしない。ヒカルは声を漏らさぬように必死に口を押さえた。
アキラは次第に興奮し、ヒカルの足の間に体を割り入れる。人ごみで押される力も手伝って、アキラはいとも簡単にそれを成し遂げた。
ヒカルは尻の間でアキラのそれを感じると、必死に足を閉じて追い出そうとする。
アキラはそれを押し付けることでヒカルの抵抗を阻止した。
ヒカルは今にも怒鳴ってやりたい気分だった。けれどこんな人ごみの中で声をだす勇気などなく、アキラのされるがままになるしかなかった。
乳首を十分楽しんだアキラの手は、浴衣から出ると、ゆっくりとヒカルの下半身に下りてきた。そして浴衣の上からヒカルの太ももやそれをなでまわす。
ヒカルは泣きそうになりつつもそれに耐えていたが、アキラの手がまたあわせから進入しようとしたので、その手をつねった。
しかしアキラはかまわず入り込む。するとピタリと手が止まった。
ヒカルが下着を身につけていなかったからだ。
(5)
「進藤、せっかく花火大会行くんだから、浴衣を着てこいよ」
えーっ!とヒカルはめんどくさそうに言う。けれど浴衣を着て花火大会へ行ったことないということに気づき、ヒカルは浴衣を着ることを約束した。
「それと、進藤。浴衣を着るときは下着を着けないって決まりが日本には昔からあるんだ。だから必ず脱いでくるんだよ」
「はぁ? なにそれ」
ヒカルは目を丸くして聞いた。
決まりというのはもちろんウソだが、素肌に浴衣という布一枚を帯でとめただけのヒカル見たさに、アキラは熱心に説得する。
だが、ヒカルはそれだけはいやだと我を張った。あまりの意地の張りように、アキラはなくなくあきらめた。
|