ルームサービス DON’T DISTURB 1 - 5
(1)
目が覚めると、誰もいない部屋にぽつんと取り残されていた。
「・・・・」
おきあがろうとすると全身に激痛が走った。
「い・・・た」
筋肉痛だ。ヒカルはその痛みに昨日の出来事をまざまざと思い出す。
(塔矢の手を・・・・いれられたんだ)
体の中心に、うずまくような鈍痛があった。
時計を見る、時刻は午後3時を回っていた。手合いがなかったのを
頭の中で確認すると再びベッドに沈む。がしゃりとドアの開く音がして
アキラが顔をあらわした。
「………塔矢」
声がしゃがれている。昨日叫びすぎたのだとヒカルは思う。
「進藤、起きたのか」
手に何か袋を抱えている。
「何、それ?」
「着替え、家には電話しといたよ、ボクの家に今日も泊まるって」
「ふーん、見せて」
アキラはベッドのへりに座ると、袋を差し出した。中身を確認しはじめた
ヒカルにアキラは聞く。
(2)
「メシ」
端的にヒカルは言った。
「じゃあ、ルームサービス頼もうか」
「ルームサービスはイヤだ!」
ヒカルは間髪いれずに、言ったがが視線はアキラの方を向かない。
しばらくの沈黙ののち、ぜかな慎重なアキラの声が聞こえる。
「………でも、歩ける?」
ヒカルは襲ってきた筋肉痛をだましだましおきあがると、そろそろと
足を動かし、たちあがろうとした。が、ほとんどベッドから転げるよう
にして倒れた。腰に全く力が入らない。
「し、進藤」
あわててアキラがヒカルの体を起こそうとする。しかしヒカルはその
手を振り払って、這った。
「進藤・・・」
「トイレいきてえんだよ」
床をにじる。にじっても筋肉痛があるのは変わらない、ほんの少しの
はずのトイレが遠く思えた。が、突然、胴体に手を回されたかと思うと、
ひっくりかえされ、体が床から浮いた。
「・・・」
(3)
「・・・」
肩の下と、膝の下に入ったアキラの手がヒカルを抱き上げている。
まるで、救助される女のように。軽々とかかえあげられてしまった。
無言でアキラはヒカルをトイレまで運ぶと便器のフタをあげて座ら
せ、ドアを閉めた。
しばらくすると再びドアをたたく。
「終わった?」
「うん・・・」
するとアキラはドアを開き、便器の上に座っていたヒカルの肩と足
の下に手を入れる。
持ち上げられる。
ヒカルはベッドまで素直に運ばれることにした。おろした後、ヒカルと
アキラの目が会う。
「・・・・・・」
アキラは目を逸らし、ヒカルから離れた。
「車椅子が借りられるかどうか聞いてくる」
ぽつんと座ったベッドの上で、ドアがバタンと閉まる音を聞いた。
車椅子・・・。
(4)
そんなたいそうな………、しかし、あるのか?ホテルに車椅子なんて?
そうおもいつつ、ヒカルは袋を引き寄せ。中身を確認する。
「うーん」
白いシャツと、変えの下着。
気が付くと自分はYシャツ一枚の裸だ、下着も何も身に着けてない。
入っていた下着はありがたく身に着けようと思ったが、体を動かそう
とするとものすごい筋肉痛が再び襲って来たのであきらめた。
「車椅子はないって」
言いながら戻って来たアキラの顔に下着を投げつけた。
「進藤・・・?」
「動けないんだよ、はかせろよ」
ヒカルは挑戦的に言った。
だが、オカッパ頭に乗っかった下着を無言で手にとったアキラは、何
も言わずに非常に紳士的な態度でヒカルにそれを穿かせた。ヒカル
の下半身を見てもエロいことひここと言うわけでもなく。それはそれ
は紳士的にヒカルの両足を持ち上げてわっかに足を通し、うやうや
しくゴムを上にあげたわけである。
……いつもはものすごい勢いでおろすわけであるが。
(5)
焦ったのはヒカルの方である、足をあげられた時に、消えかけた拘束
具の後がばっちり目に入り、この足をアキラにも他人にも晒したかと
思うといたたまれない気分になった。
あんないいように弄ばれて、腕まで入れられて。
なのに、なんで、どうして・・・。こいつは・・・。
「塔矢ァァ」
ヒカルは喚く。
「何?」
「ハラへったったらハラへったハラへったぁああ!!なんとかしろよ!!」
アキラは困った顔をする。
「でも、ルームサービスやなんだろ、食堂はいけそうもないし」
「……ラーメン食いてえ、コンビニで買ってきて!」
「コンビニ?」
「レジで湯入れてきて、ホテルに戻るまでにちょっとのびたのが食いたい
んだっ!!」」
「ラーメンってインスタントの?、レジでお湯というのはどういうことだ?」
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