初めての体験 Asid 和谷


(1)
 進藤と付き合うようになって、ボクは、自分の中にS因子を発見してしまい、少々
戸惑っている。前から、その兆候はあったのだ。
 この前も競馬中継を見ながら――――どういう経緯でそれを見たのかは、憶えていないが
―――― つい言ってしまった。
「あれってどこで手に入るんだろう……」
みんなはびっくりしてボクを見た。約一名盛大に咽せているし…。
「アキラ君、馬が欲しいのか?」
「まだ、ムリだろう…ははは…」
お父さんの門下の人たちが笑った。
「そうですね。お父さんみたいに五冠になったら、手に入れられるかもしれませんね。」
と、笑って見せた。外面がいいのはボクの取り柄だ。
 でも、実際、ボクが見ていたのは馬じゃない。騎手の方だ。正確には、騎手の手元。
馬に振り下ろす鞭だ。
 あれを進藤に使ったら……想像しただけでゾクゾクする。進藤を傷つけるのは、
可哀想だが……進藤の肌に紅い色は良く似合うと思う。
 そんなことを考えていると、緒方さんが何か含みのある目でボクを見ていた。まだ、
ゴホゴホと咳をしている。
 なんですか?言いたいことがあるなら、はっきり言ってください。それより、煙草―――
気をつけた方がいいですよ。あーあ、ほら……。緒方さんは指先に軽い火傷を
おったようだ。
 …………煙草……いや、さすがに煙草は可哀想だ。ボクはその考えを振り払おうとした。
でも…もっとソフトな物ならどうだろうか?例えば、ローソクとか…。

 こんな自分をボクは持て余している。しかし、気が付けば、ネットでその手のサイトを
まわっていたりするのだ。そうか…馬用と人間用は違うのか…そりゃそうだろうな…
へえ…熱くないローソクってあるんだ…。余計な知識ばかりが身に付く。そればかりか、
無意識のうちに、購入ボタンを押している自分が怖い。
 最近、お気に入りのサイトも出来てしまった。そこにUPされている写真が…ふふ…。
そのお陰で今は、何とか保っているけど…どこまで我慢できるか…。


(2)
 「ああん…やだ…」
進藤が、ボクの手の動きに反応して身体を捻った。その仕草がものすごく色っぽい。
「イヤじゃないだろ?ほら…先っぽヌルヌルだよ?」
進藤の股間を嬲る手を休めずに、彼の耳元で囁いた。進藤の身体が一気に熱くなり、
肌が桜色に染まった。かわいい…!あんまり、可愛いので、もっと虐めたくなる。
「進藤、ボクにこうされるの好きだよね?」
舌の先でつついた。
「ひゃあん!」
進藤が、身体を仰け反らせて、喘いだ。進藤のモノが、ボクに押しつけられる格好に
なったので、そのまま全部呑み込んで、激しくしゃぶり上げた。片手で進藤の腰を抱きながら、
もう片方の手で後ろを探る。優しくほぐすように、少しずつ中に指を埋めていく。
「あ…あふ…とおやぁ…」
進藤は、もう耐えきれないといった様子で、身体をくねらせた。ああ…!可愛すぎる!
 ボクは、進藤の腰を抱え上げて自分の膝の上に乗せた。位置を確かめ一気に引き寄せた。
「ああっ!ア――――――――!」
ボクがちょっと身体を揺する度、進藤が短い悲鳴を上げる。その可愛い声を聞きたくて、
何度も小刻みに身体を揺らした。
「あっ…あっ…やだぁ…あん!」
閉じられた目元は紅く染まり、悲鳴を上げる口からは、涎の筋が何本も喉元に流れている。
進藤は、視覚や聴覚、感覚からもボクを昂ぶらせていく。
「とうや…とうや…」
彼は譫言の様にボクの名前を呼び、激しく頭を振った。
「あ、あ、ああ…あぁ――――――」
進藤の身体が突っ張って、その後、かくんと力が抜けた。


(3)
 進藤との夢の様なひとときは、ボクの中に甘い陶酔感をもたらす。程良い疲労感が
二人の身体を包んでいた。ボクの隣で、進藤はもう可愛らしい寝息を立てている。
 ああ…幸せだ…。それなのに、何故だろうかすっきりしない。満たされているはずなのに
満たされていない。何故だろうなどと、考えるまでもない。原因は明白だ。ボクの中の
アレが…騒ぐのだ。
 ボクは、想像の中で、先ほどの進藤を縛り上げてみた。進藤は、「やめてよ」と、ボクに
訴える…。
 自然と股間に手が伸びる。想像の中の進藤の涙に、ボクはどんどん昂ぶっていく。
ああ…!進藤…!
手の中に放たれたモノに、ボクはいささか落ち込んでしまった。隣に生身の進藤が、眠って
いるというのに…!!ボクは、最低だ!
 進藤に気づかれないようにそっとベッドを抜け出て、手を洗いに行った。ごめんよ…。
進藤の愛らしい寝顔が、余計にボクの罪悪感を強くした。


(4)
 昨日のことで落ち込んでいるのに、よりにもよって、棋院であいつに会ってしまった。
なんて言ったっけ?和谷?彼はいつもボクを敵視している。今日も、思い切り睨みつけられた。
睨みたいのはこっちの方だ。いつも、いつも、進藤に馴れ馴れしくして!
 ああ!ムカムカする!ボクは彼に何もしていないのに、何であんな風に嫌われなければ
いけないんだ!?ただでさえ、今日は機嫌が悪いんだ!

 「キミは、何だっていつもボクを睨み付けるんだ?
  ボクが何か気に障ることでもしたのか?」
ボクは、棋院の屋上に彼を呼びだし、激しく詰問した。彼は、何も答えず目を逸らした。
自分でも後ろめたいらしい。そうだろう。だいたい、ボクは悪くない。一方的に嫌われて、
文句の一つも言いたくなって当たり前だ!ボクは、和谷を睨んだ。
 ……だが、こうしてじっくり見てみると、和谷は進藤とどことなく似ている。外見の
話ではない。雰囲気とかが、かぶるのだ。ボクはちょっと考えた。ふうん…これは……
ちょうどいいかもしれない。
 ボクは、俯いている和谷を、いきなり力任せに引きずり倒した。そして、鞄の中から
手錠をとりだし、素早く彼を後ろ手にしてそれをかけた。


(5)
 「な…何すんだよ!」
和谷は、ボクの体の下で藻掻いた。だが、腕の自由を奪われ、上手く逃げられないようだ。
怯えた顔にボクは、ひどく昂ぶっていく自分を感じた。
 これだ!これなんだよ!!この表情がイイんだ!しかし、ボクは、興奮しながらも
どこか冷めていた。きっと、相手が進藤ではないからだ。ああ…!これが進藤だったら…!
 ボクは、和谷を仰向けに転がした。彼のTシャツを捲り上げ、胸や腹に手を這わせる。
「や…やめろよ…オイ…ヤメロったら!」
口調はきついが、半泣きだ。楽しくて仕方がない。
 ズボンに手を掛けると、和谷は悲鳴を上げた。これから、ボクが何をするつもりなのか
わかっているらしい。そうだよ。ふふ…。和谷は、そうさせまいと滅茶苦茶に暴れた。
だが、ボクは、暴れる和谷の股間を、思い切り握りしめた。
「―――――――!」
和谷は暴れるのをやめた。相当痛かったらしい。目に涙が溜まっている。
 下着ごと、ズボンを脱がし、再び俯せにした。和谷は声もなく震えている。可哀想だけど、
やるよ。ボクは、彼の尻を掴むとそのまま何の施しもなく彼を貫いた。
「ギャアアァ!」
悲鳴が耳に心地いい。ボクが動く度、和谷が悲鳴を上げる。
「ひぃ…!も…やだ…ゆるしてくれよ…!!ああ…!」
和谷が息も絶え絶えに、泣きながらボクに許しを請う。コンクリートの地面に頬を押しつけ、
必死に痛みを耐えていた。さすがにちょっと可哀想になった。
ボクは、彼の前に手を回し、そっと彼のモノを握った。本当は、進藤以外の人間にこんな
ことしたくないけど―――ボクは自分の動きに合わせて、和谷のモノをゆっくりと扱いた。


(6)
 暫くすると、和谷の声に、苦痛以外のものが混ざり始めた。瞼を堅く閉じ、首筋も
薄桃色に染まっている。開きっぱなしの口から吐かれる息は甘い。
「ふふ…気持ちいいのかい?さっきまであんなに泣いていたのに?」
その一言で、和谷の身体が、一気に熱を持った。ボクに声を聞かせまいと、歯を食いしばって
いる。ふん…面白い。ボクは、和谷への突き上げを強めに変えた。根気強く、和谷の中を
かき回す。もちろん、その間も手は休めない。
「はぁ…!」
和谷の息が一瞬止まった。ここがいいのか…。なるほど…。ボクは、そこを中心に、
激しく中を擦り上げ続けた。
「あぁっ」
和谷が喘いだ。そこから後は、声が途切れることはなかった。

「ああ…!いやだぁ―――――!」
和谷は一声そう叫ぶと、身体を硬直させた。ボクの手の中に和谷は、すべてを放っていた。
 ボクは、自分も欲望の印を和谷の中へ注ぎ込むと、すぐに彼から離れた。和谷は、
ぼんやりと濡れた瞳でボクを見ている。ボクは、自分の衣服を整えると用は済んだとばかりに、
彼に背中を向けた。
 その途端、彼が悲痛な声で泣き叫んだ。
「待てよ…!オレをこのままにしていくのか…?やめてくれよ…せめて…この手錠外して
 くれよぉ…頼むから…!」
和谷は、ボクの背中に向かって懇願した。すすり泣きが耳に心地いい。ゾクゾクするよ。


(7)
 ボクは、振り返って和谷の側に膝をついた。泣いている彼に向かって、微笑みかける。
「冗談だよ。いくら何でもこのまま放っておくわけないじゃないか…。」
彼にそう言った物の冗談半分、本気半分だ。彼が懇願しなければ、ボクはあのままここから
立ち去っていた。身体の自由が利かない、裸の彼をそのまま置き去りにして―――――ね。
 和谷は、非難と恐怖と、そして快感の入り交じった潤んだ瞳でボクを睨んだ。その紅く
染まった目元が色っぽくて堪らない。何とも思っていない和谷に対してさえ、こんな感情を
抱くのなら、進藤が相手ならボクはどうなってしまうのだろう。
 血と精液に汚れた和谷の下半身を、ハンカチで丁寧に拭ってやった。下着とズボンを
きちんと履かせ、まくり上がったTシャツも整えた。和谷は逆らわず、その間ボクに
身を任せていた。
 苦痛に呻く和谷を座らせ、後ろにまわった。手錠を外すためだ。彼の手は、傷だらけに
なっていた。暴れたせいだろう。そうか…直接、かけるとこういう可能性もあるわけだ。
ボクの知識はまた一つ増えた。
 とりあえず、和谷のお陰で、ボクの気分はすっきりした。和谷は、まだ泣いていたけど…。
「楽しかったよ。機会があれば、また遊ばないか?」
これは、冗談だ。ボクは、和谷の気持ちを和らげようとにっこり笑った。
 和谷は真っ青な顔で、怯えて、尻で後ずさった。笑ったつもりなのに…失敗したか?
まあ、いい。どのみち、彼とこれ以上関わる気はない。別の玩具も試してみたかったけどね。
相手は、誰でもいいんだし。他にもチャンスはあるだろう。


(8)
 「じゃあ、さよなら。和谷君。」
ボクは、今度こそ本当に彼に背中を向けた。背中に視線を感じたが、振り返る必要は
ないだろう。

 汚れたハンカチを丸めて、ゴミ箱に捨てた。その時、後ろから声をかけられた。
この声は…!
「進藤!」
胸が弾む。喜びを隠しきれない。ああ〜ドキドキする。え…あれ?何か怒ってる?
「もう!一緒に帰ろうって言っただろ!なんで待っててくれないんだよ?」
 進藤、拗ねた顔も可愛いね。そのまま、棋院のトイレに連れ込んで、いけないことを
したくなるよ。この手錠を使ってね…。でも……良かった…。使わずにすみそうだ。
あー、すっきりさせといて正解だった。
 ありがとう、和谷。キミのお陰で、ボクがこの手の道具を使うためには、いろいろと
勉強する必要があることがわかったよ。進藤も傷つけずにすんだ。
 その道の達人は、苦痛も快感も指先の力加減一つで思いのままに操るという。幸い、
ボクは、勉強は嫌いじゃない。目的のためには、努力も惜しまない。色々と実践すれば、
上達も早いだろう。

 進藤に笑いかけた。進藤は、ポッと頬を染めて、ボクを見つめ返した。
「ごめん。時間が余ったから、ちょっと屋上で休んでいたんだ。」
「なあんだ。いつもの場所にいないから…オレ、てっきり、おいて行かれたかと…」
照れ笑いをする進藤も実にラブリーだ。要するに、進藤は何をしても可愛いということだ。
「なあ、塔矢…今日、オマエの家に泊まってもいい?」
進藤が、はにかみながらボクを見上げる。なんて、可愛いんだ!!!
 今夜は、きっとイイ気分で眠れるはずだ。ボクの頭の中で、今日の和谷の姿は、既に進藤に
置き換えられている。……そして、いつかは本物の進藤と………。
 待っていてくれ、進藤。きっと、すべての技を修得して、キミを快感で咽び泣かせてみせる!
新たな目標を前に、ボクは体中の血が滾るのを感じた。
――――――とりあえずは、どこかで鞭を手に入れるか……。隠し場所も確保しないとな。
 そんなことを考えていると進藤が、大きな目でボクの顔を覗き込んできた。ボクの返事を
待っている。
「もちろんだよ。」
ボクは、優しく笑って言った。


おわり



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