初詣妄想 10
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「アキラたん、随分進みが遅いね?もう1時半だよ…」
俺は懐中時計をぱちんと閉じて、またポケットに突っ込んだ。
「うん、お昼食べてきて良かっ………あれ?それ…?」
「なに?どうしたの?」
ついつい頬が緩む俺に、アキラたんは頬を薔薇色に染め、目を輝かせて言った。
「それ、もしかして……ボクがプレゼントしたのじゃなかった?」
その通り。アキラたんがクリスマスに俺にくれた、趣味の良い銀色の懐中時計が
俺の右ポケットの中に入っている。
アキラたんの前でプレゼントを開けることは出来なかったけど、
貰って帰ったその日の昼休みにこっそり開けて以来、俺の時間はこいつが紡いでいる。
毎日持ち続けて、やっと時間が気になるときにも手首を覗かなくなった自分が
なんだか誇らしい。ってちょっと違うけど。
「そうだよ。アキラたん、ありがとう。これ、すごく気に入ってて、
毎日持って歩いてるんだ。懐中時計って格好いいよね」
そう?そう?そう?とアキラたんはいつになくはしゃいでいる。
アキラたんらしくないといえばその通りだけど、アキラたんの年齢から考えたら
ごく普通の反応だ。普段は決して見せない、その子供らしい反応が嬉しくて
俺もにこにことアキラたんを見つめた。
「アキラたん、それより新年会の話、もっと聞かせてよ」
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