バレンタイン 10


(10)
アキラはチョコレートがみっしり入った紙袋を俺に渡すのには抵抗があったらしい。
でもほとんど強引に取り上げると、もう何も言わなかった。
「アキラたんを部屋に入れたら、すぐ戻らなきゃなんないけどね」
アパートはすぐそこだった。2階建てのアパートの2階の端が俺の部屋だ。
「尚志さん、前から思ってたけど、その制服すごく似合う」
錆びた階段を上りながら、アキラは俺を上から下まで眺めてそんなことを言った。
「前から?」
アキラたんが俺のバイト先に現れたのは今日が初めてだ。
少なくとも俺はそう思っていた。
「…尚志さんが働いてるのをこっそり見てたことがあるんです。何度か」
アキラは恥ずかしそうに俯き、そのまま俺の部屋のドアの前まで走って逃げた。

部屋に入ると、玄関先でアキラを抱きしめた。
コンビニまでは歩くと5分だが全力疾走なら3分もかからない。
俺はゆっくりと歩くよりも2分間アキラを抱きしめることを選んだ。
「アキラたん、自分がもらったチョコレートをどうして持ってきたんだ?」
「尚志さんと食べようかと思って」
アキラに悪びれたところは全くない。鼻をアキラの髪の毛に潜らせると、彼の髪の毛からは
おでんの匂いと、少し冬の匂いがした。



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