heat capacity2 10
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「進藤…進藤……っ」
塔矢の掠れた声が、俺を呼ぶ。
目眩がしそうな程幸せで。幸せで、気が狂いそうだった。
今ならこのまま死んでもいいな、そうふと思った瞬間、言葉がするりと飛び出した。
「もし、オレが碁を打てなくなったら、オマエどうする?」
唐突な質問に塔矢は面喰らったみたいだった。それでも考え考え言葉を紡ぎ出す。
「碁が打てない、という状況自体あまり考えられないけど……」
そして心底不思議そうな顔をして続けて言った。
「どうするとか、どうしないとかいう問題じゃないだろう。碁あってのキミじゃなくて、
キミあっての碁なんだから」
その言葉が漸く回転の鈍い脳に浸透した瞬間。
「あ……」
身体の中にあるモノが急に質感を持って。いや違う、自分が今まで感覚を閉ざしていた
のだと気付いた時には、身体が快感に悲鳴を上げはじめた。
背筋をぞくぞくとしたものが一気に駆け上がり、全身に震えが走る。
「! 進藤…、力、…抜いて……っ」
「…わっ…かんね……、っできない……っ」
塔矢が俺を必死で宥めようと頬に触れる。
けれど、それすらも今は俺の身体にいたずらに刺激を与えるだけだった。
「とぉや、う、うごかない、で…、…カ、ラダ…ヘンに……っ、んぁ…っ!」
塔矢のが自分の中でどんどん大きくなっている気がする。
そう感じれば感じる程、俺は力の抜き方が分からなくなって軽いパニックに陥った。
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