平安幻想秘聞録・第一章 10
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「光?」
密着するまでに触れて、初めて分かったヒカルの状態。
「これは・・・」
光が欲情している?でも、いったい何に?
「光、やはり私は向こうで寝ることにしましょうか?」
「やだ!何で置いてっちゃうんだよ!?」
離れようとした佐為に、ヒカルはなおさら小袖の合わせの辺りを握り
締め、身体を寄せて来る。佐為としては、ヒカルが猛りきった己の欲望
を処理するためには、自分はここにはいない方がいいと思っただけなの
だが。熱い身体を持て余してがたがたと震えているのに、表情はまるで
幼い子供のようなヒカル・・・。
もしかして、光は自分がどうなってるのか分かっていないのでは?
「ねぇ、光。寝ていて、急に具合が悪くなったのですか?」
「分かんねぇ、よ。佐為のこと見てたら、急に、身体が熱くなって来て」
佐為のことを考えてただけなのに・・・それとも、佐為のことを考え
てたから、こうなったのか?そう自覚した途端、ヒカルはやっと自分の
下肢が示してる意味が分かった。
オレ、欲情してるんだ、佐為に・・・。
「佐為、ごめん、やっぱ、離れて」
「光、でも、苦しいのでしょう?」
「だって、オレ、変だ」
変だ。こんなの。オレは男なのに、同じ男の佐為にこんなふうに思う
なんて。ずっと一緒にいたとき、触れられなかったせいもあるが、佐為
に対して欲望を抱いたことなどなかった。言葉も交わさないまま別れて
からも、何度も佐為を思い出した。けれど、初めは悲しく苦しいだけの
想いが、今では逆に優しく穏やかに変わっていた。決してこんなふうに
佐為に劣情を感じたことなんてない。
「光、大丈夫です。私がいますから」
「佐為?」
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