守って!イゴレンジャー 10
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「アキラが立ち往生してるよ〜?助けに行ってあげなよオガタン〜、
キミなら楽勝だろ〜」
「フッ…確かに戸籍も住民票もない派遣怪人のオレにとっては、あんな攻撃など
児戯でしかない。だが、助けを請われてもいないのにのこのこ出て行くような、
そんな甘ったるい真似はオレの主義に反する」
「屈折してるね〜」
「アキラ君がチョモランマ並のプライドを折り曲げて四つに畳んでタンスに仕舞った後、
涙を堪えながら三つ指ついておねだりしてくるのなら考えてもいいがな」
「…その性格直さないとヨメのきてがなくなるよ〜」
「あいにく止まり木には不自由していない」
華麗なる独身貴族ライフをほのめかすオガタンにアキラは叫んだ。
「オガタン星人!たった今ボクのレッドが奪われました!よって、再度
あなたに命じます。飢えた野獣どもから可愛いレッドを取り返して来てください!」
「御意」
先程までの強気な発言はどこへやら、オガタンは身を翻してさっさとブルーの後を追う。
その変わり身の早さにさすがのアシワラーも開いた口がふさがらない。
「故郷のお母さんが泣くよ〜」
一方追われる身となった伊角はヒカルを抱きかかえながら懸命に走った!
「どうしたんだよブルー、オレも一緒に戦うからさ、下ろしてよ」
「そうしたいのはやまやまだが出来ないんだ…オレはこのまま成人式を迎えたくない!」
伊角は竹薮を分け入り、椎茸の原木が立ち並ぶ杉林の手前にヒカルを乱暴に下ろした。
ゴンッ!「あう!」
その際ヒカルの頭を原木にぶつけてしまい、ヒカルの意識が朦朧としだした。
チャーーーンス!!
手首の縛めはまだほどいていない。伊角はごくりとツバを飲み込むと、
流星剣でヒカルのコスチュームに切込みを入れた。
そんな伊角を得意の秘儀で逃がした和谷だったが、さすがにお気楽極楽な独身男には
公団の甘い罠は通用せず苦戦を強いられていた。
「クックックッ…悔しければ住金の力を借りて一等地に家を建てるんだな」
「くそう、やはりいろんな意味で手ごわい相手だ…イエロー、一か八かで攻撃してみろ!」
「ボクのは…ああいうタイプには向かないと思うんだけど…」
「でもやらないよりはマシだろ!ダメな時は棋院ロボで応戦だ」
「わかったよ。行くぞ“トントンミサイル”発射!」
越智は散弾銃を抱え、オガタンに照準を合わせた。
カポン、と間抜けな音が響き、どこからか緑の葉がつむじ風に乗って舞い、オガタンを包む。
降りしきる葉っぱに目を奪われているオガタンの肩を、何者かが優しく叩いた。
“トントン”
「誰だ!オレのバックを取れる人間など皆無なはず!」
動揺を隠し切れないまま後ろを振り返ったオガタンはそのまま言葉を失った。
帝國軍切り込み隊長オガタンに初のピンチ到来?
いやそれより伊角はとうとう漢になれるのか?
それ以上にあと一回で終われるのか自分?
ダメだったら延長戦だよ!好手戦隊・イゴレンジャー!!
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