待てない 10
(10)
おちおち休憩していられない。落ちる落ちる。このまま俺達2人は終わるのか!?
まだ、神の一手は極めてはいないというのに…!せめて、せめてズボンが欲しい。下肢をまるだしのヒカルはそう思った。急降下していく際の風が心地よい。風に俺のものはなであげられぶらぶらとしていたそれは硬くなっていっていた。
「あああぁー落ちる!!塔矢っ!!」
俺は必死で塔矢を抱きしめた。これが最後になるかもしれない。対するアキラはまだ何やら思考を巡回させている。
「そうか、これを使えば…!!進藤飛べ!!」
塔矢は俺を放り投げた。こ、これは…「いつでもドアー」…!!前に塔矢が手合いに遅れそうになった時に使った道具だ。バルーンの中に装着されていたのか…
俺は知らない場所へと塔矢より一足先にたどりついた。
ヒカルがいつでもドアからたどりついた先はたくさん木が茂った果物畑だった。
都会では見れないそんな風景に少し驚きながらのあたりを見回す。
さくらんぼの実があった。それを手に取ってみる。ピンク色でふたつ…ヒカルは少し赤面してそれを口にする。
「あ…」
なんだか異様な歯ごたえにびっくりする。それはまだうれていない果実だった。
「塔矢何してんだよ、はやくこないかなー…」
自分だけ先にいつでもドア―をくぐってきてしまった事を後悔した。アキラがいなくて退屈なのかヒカルは続いて林檎に手を伸ばしていた。
こんどの林檎は赤くて熟している。林檎に歯をたてる。おいしい林檎だ。もう一口かじってみると歯が折れた。大事な前歯だった。
こんな事あるのだろうかと驚いて林檎を見つめる。林檎はすました顔をしている。
「ちぇー…」
自分の歯を折った林檎を地面になげつける。もうすでに小一時間が経過しているというのにアキラの姿は見えない。そろそろ来てもいいはずなのに…と樹海をさまよいヒカルはさらに深いところへと迷い込んでいた。
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