初めての体験 Asid 10
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とりあえず、自分の家で、枕を相手に練習をする事にした。本を片手に、結び目の
強弱を確かめながら、枕を縛り上げていく。
いろんな縛り方があるんだな…………ふう…むなしい――――――
やっぱり、枕相手では盛り上がらない。
せめて、オランダ人妻を手に入れるべきだろうか?だが、あの顔を見ると笑ってしまいそうだ。
リアル何とかには、興味がない。ただ、練習をしたいだけだからな…。まあ、進藤に
そっくりな人形なら、いくらつぎ込んでも惜しくないけどね。一瞬、オーダーメイドを
頼もうかとも思ったが、やっぱり、本物には勝てない気がする。それに隠し場所に困りそうだ。
ボクは、黙々と枕を縛り続けた。端から見ると、これってどういう光景なんだろ?
ボクは自分がまともではないのを自覚し、そのことを受け入れてはいるが、客観的に見て、
枕を縛り上げる自分の姿は変だ。ものすごくヘン!――――だと思う。それを考えると
情けなくなるので、ボクは手元にだけ意識を集中させた。
そんな状態だったので、玄関のチャイムが鳴っていることに、暫く気がつかなかった。
「おーい…アキラ――――いないのかぁ?」
あの暢気そうな声は……芦原さん!?チャンスだ。ボクは、手早く枕と本をベッドの中に
押し込むと、玄関へと向かった。
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