トーヤアキラの一日 10 - 11


(10)
思いとは裏腹に、アキラの右手は自然に股間に近づいて行く。パジャマの中に手を入れて、
下着の上から自分自身にそっと触れる。そこは恥ずかしくなる位に硬くなり、存在を主張
している。躊躇しながらも、下着の中に手を入れて軽く扱くと、ヒカルがそこに触れて
くれた時の感覚が蘇り、分身も嬉しさにヒクヒクと震えている。

───ん・・・・しんどぅ・・・・・キミに触れたい・・・・
キミの甘い匂いを深く吸い込みながら、細い首に口づける。柔らかい髪に手を入れて
キミの頭に直に触れる。首筋から耳へと唇を這わせ、耳朶を軽く噛むと、キミは
『あっ!!』と小さな悲鳴を上げる。もっと可愛い声が聞きたくて、ピチャピチャと音を
たてて耳朶を舐めまわす。キミは『ぁん、トーヤぁ』と言いながらボクの体に足を巻き
つけて来る。キミの次の声が聞きたくてキミの下半身に服の上からゆっくり手を滑らせて
行くと、もどかしげにキミは体を捩りながら『んっ、早くぅ、して・・・・・んんっ』と
ボクを誘う。

瞼の中のヒカルの声にアキラはさらに煽られ、体中の血液が沸騰したように燃え上がる。
アキラの息遣いは荒くなり、手の動きも激しくなる。喜びの雫で、下腹部が濡れる。
───あぁ、ダメだ!!このままではもうイッてしまう!!
───まだキミの中に入っていないのに・・・・!!あの声も聞いてないのに!!
───うぅぅ・・・あぁぁ!・・・進藤、しんどー、しんどぉぉぉぉぉ・・・・!!!!
アキラはあっけ無く手の中に精を吐き出した。
断続的に震える分身を手で包み込み、余韻に浸る。

暫くして頭が覚醒すると、激しい自己嫌悪が襲って来た。ティッシュの箱に左手を伸ばすと、
怒った様に、何枚も抜き取る。自分の精液でベトつく右手をティッシュで拭くと、虚しさが
アキラを支配して涙が溢れる。
自分で自分の体を抱き抱えるようにして横になり、目を閉じる。体の力を抜いてじっと部屋の
空気を感じていると、次第に惨めな自己嫌悪の淵から現実に引き戻され、気持ちが落ち着く。
───明日はキミに会える・・・・早くキミの笑顔が見たい・・・・キミに触れたい・・・・
軽い虚脱感の中で、アキラはヒカルの事を想う事で心が満たされていく。明日の事を考え
ながら、次第に眠りに落ちていった。


(11)
アキラが、ヒカルのアキラに対する呼び方の変化に気付いたのは、いつ頃だっただろうか?
日頃は、はっきりとアキラの事を「塔矢」と呼ぶヒカルだが、2人きりになって、甘える
素振りを見せる時には、少し鼻にかかった間延びした口調で「トーヤ」と言って来る。
さらに2人だけの秘密の時間になると、何かをねだるように「トーヤぁ」と囁く。そして、
理性を飛ばして快楽に溺れている時には「トーゃぁ、トーゃぁ」と連呼するのである。
その事は、もちろん本人には話していない。そんな話をすれば、ヒカルが意識してしまい、
言わなくなるのが目に見えているからだ。
この事は、アキラ以外誰も知らない、ヒカルの欲情バロメーターになっている。

アキラが3軒先にあるゴミ集積場に袋を置いて玄関に戻ると、外で車が止まる音がする。
あっ!と思い、急いで自室に戻る。封筒と印鑑を手に取り玄関に走ろうとすると、案の定
チャイムと共に外で大きな声がする
「塔矢さーん、アキカン便で〜す!」
───あれ?山猫宅急便で来るはずだけど・・・・・
そう思いながら急いで玄関の戸を開ける。配達員は伝票を見ながら、
「認めお願いしまーす」
と言い、品物をアキラに手渡す。発泡スチロールで出来た箱の両側から、持ちやすいように
紐が付けられている。アキラは片手でそれを受け取りながら印鑑を差し出す。
「はい、どーもー」
と伝票に印を押して、印鑑を返す時、配達員は初めて相手が子供である事に気が付いた。
不安になったのか、品物を見ながら念のために言葉を添える
「冷凍便ですから」



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