○○アタリ道場○○ 10 - 11
(10)
「なっ、なんでまた いかにも『お袋さん』ってな格好をワザワザして
いるんだっ―――!?」
「何事も形から入れというじゃないですか?」と、おかっぱはシラッと
言う。
「まあ、それはそうだが。
っていうか、キミはもろハマリすぎなんだっあぁっ――――――――――――――!!!!!」
「そんなことはどうでもいいですよ、そうだ緒方さん。
今日はサバの煮つけ、それか鰆西京焼きのどちらがいいですか?」
「あ、オレはサバの煮つけがイイ・・・・い、いやそうじゃなくてっ!」
兄貴は焦った。日本の囲碁界を背負う人間の1人であるおっかっぱの
美的感覚を なんとか普通にしようと必死だった。
「アキラくん! ちょっとオレの話を聞いてくれっ」
「だから聞いているじゃないですか。
サバの煮つけと鰆西京焼きのどちらがいいって」
「だぁあ〜あああ〜からぁぁああ〜、人の話を聞けえええぇぇえ―――!」
「ハイハイ、何ですか?」
「ゼイゼイッ・・・・・、キミはもう少し日本の、いや世界の碁界を背負う自覚
を持たなくては・・・」
兄貴が言いかけていたその時、コンロにかけていた鍋が沸騰して、煮汁が
噴出した。
「あっ、火を小さくしなきゃ!」
おかっぱは、自分の目の前に立っている兄貴を勢いあまって吹っ飛ばして
しまった。が、鍋を優先して床に倒れている兄貴の背中の上を踏んづけて
火を止めに行った。
(11)
兄貴は、おかっぱに踏まれた時「げふっ!」とガマ蛙が鳴くような声を
あげた。
「さすがは母は強しのお袋<pワーなりっ・・・・・」
兄貴はゴフッと少量の吐血をし、ガクンと床に顔を落とした。
「ちょっと緒方さん! お話は後で伺いますから、そんなところで
寝てないで、とりあえず居間で待っていてください!!」
おかっぱは、目をカァッ──!と見開いて、どエライ剣幕で怒鳴る。
そして、おかっぱは、目で捉える事の出来ない速さで、まな板上の大根を
タタタッと職人技のように みな同じ大きさで切っていく。
おかっぱの体から立ち昇る異様なお袋さん<pワーに圧倒されて、
兄貴は渋々 台所を後にした。
〜本日の塔矢邸の夕食〜
・サバの煮付け
・里芋の煮物(上にゆずの皮を散らしてある)
・大根とワカメの味噌汁(赤・白味噌の2種類使用)
・ほうれん草のおひたし(海苔醤油和え)
・ササニシキのご飯(新潟の農家と個人ルートで入手)
・きゅうりと人参のぬか漬け(美味しんぼにも登場しそうな一品)
・愛媛のミカン
・・・お題目・お袋おかっぱ、まだ続く。
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