肉棒だらけの打ち上げ大会 10 - 11


(10)
あらゆる痴態をめくるめく繰りひろげられる愛と汗と肉棒満載の大宴会。
そこから死ぬ思いで逃げだしてきた憐れな子羊=和谷は、温泉施設前方に
流れている川岸で息を切らしながら、その場にヘナヘナと座り込んだ。
「なっ、なんとか、かろうじて助かった〜!
とりあえず安心したら今度は腹へってきたなあ」
グウーと腹の虫を鳴らし途方にくれている和谷の耳に、ガサガサと草木を
かきわけて近づく足音が聞こえた。
「そこにいるのは誰だ!?
もっ、もっ、もしかして森下師匠かあぁあっ!!??」
疲れて川原にヘタっていた和谷は、目に捉える事が出来ないマッハな速さで
ガバッと立ち上がり、音のする方へ素早く身構えた。
「おーい、オレだよ和谷」
ビビりまくっている和谷の視界に現れたのは、和谷の兄貴分にあたる伊角
だった。
「何だ伊角さんかぁ。はあー、ビックリした!」
和谷はフゥーと大きく息を吐きながら胸を撫で下ろした。
「エライ災難だったな和谷」
「まったくだよ! 森下師匠、酒飲むと人変わるしなあ」
「ああ、そうだ。オマエの師匠、張りあうように塔矢先生の横で裸踊り
していたぞ」
「ハハハ、師匠らしいや・・・・・・・・。う〜、腹へった・・・・・」
再び和谷は腹を抱えながらその場にしゃがみ込み、小さく溜息をついた。
「和谷腹すかしてるのか? たいしたモノじゃないが持ち合わせあるぞ」
伊角は和谷の側に腰を下ろし、ズボンのポケットからある物を取り出す。


(11)
「──伊角さんコレって・・・・・」
伊角が和谷に渡した物は、よっちゃんイカだった。
「よっちゃんイカはウマイぞ」
ニコニコしながら伊角は封を開けて、よっちゃんイカを食べ始めた。
──まさか、よっちゃんイカが出るとは思わなかったな。
こんなペラペラしたモノじゃ腹の足しにもならねえよお。
「ねえ伊角さん、他に別な物はないの?」と、和谷は不満顔で伊角にもう一度
聞いてみた。
「他にか? そうだな、あとは酢昆布があるぞ」(都こんぶを差し出す伊角)
「・・・オレ、よっちゃんイカでいい・・・・・・・・」
──伊角さんって、まだ十代なのにどこかジジイ臭いんだよな・・・・。
仕方なく和谷は、よっちゃんイカをくわえた。
──なんか余計腹がへるうう〜。
やがて次第に空は暗くなり、山奥の静かな温泉街の上に赤い夕陽が照らし
出し、街中にあるスピーカーから夕焼け小焼け≠フメロディが流れる。
「おい和谷、川に夕陽が映ってキレイだぞ」
「あーあ、もう陽が沈んじゃう時間か」
「こういう景色眺めていると、なんかこう無性に叫びたくなるな」
「ハハハ、バカヤローとか?」
冗談だろと思い笑いながら和谷は伊角を見ると、伊角はウットリとした顔で、ジッと夕陽を見つめている。
──うわああ、チョ、超マジだ伊角さんっ!!
夕陽に向かってバカヤロウなんて、今時誰もやらねえよ!
っていうか、思いつきもしねえよ。



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