魔境初?トーマスが報われている小説(タイトル無し) 10 - 11
(10)
性器を握っていた手をそっと開いて、和谷の指が奥へ奥へと進んでいく。
一度達した名残でぼんやりしていた俺は、後孔のふちに指が掛かった瞬間にやっと気がついた。
じっとりと、嫌な汗がにじみ出てくるような気がする。
「なぁ……。和谷って、やっぱり俺に挿れたいの?」
「嫌か?」
「嫌、じゃないけど…怖い。痛いのは嫌」
「進藤が俺に挿れてもいいぜ。確かにお前の中に入りたいけど、駄目ならそれでもいい」
そんな簡単に。
そんなあっさり言っていいのかよ。
凄い痛いらしいんだよ? 明日起きられなくなるかもしれないよ? 男のプライドだって傷つくかもしれないんだよ?
だけど和谷は覆い被さっていた身体を起こすと、ベッドの上に座りなおした。そして、俺も起き上がらせる。
目線を合わせて、それから微笑んだ。俺がたぶん一番好きな、和谷の表情。
「進藤が決めていいよ。だけどどっちかにしてくれよ。俺、お前と繋がりたいから」
なんでそんなこと言うんだよ。
なんでそんな顔で言うんだよ。
そんなふうにされたら、俺。俺のほうが、和谷への想いが足りないみたいじゃん。
「……いいよ」
「えっ?」
「だから、和谷が挿れていいって! だけどなるべく痛くないようにしてな」
「努力してみます」
けっきょく、さ。
俺だって和谷の喜ぶところをみたいんだ。和谷が俺の身体で感じてくれるのが嬉しいんだ。
そして、和谷とひとつになってみたいんだ。
(11)
和谷が俺の後孔のまわりをゆっくりとなぞる。手探りで、見当をつけてるらしかった。
微妙に位置を変えつつ指先で突っつくから、俺はそのたびにいちいち反応してしまう。
こんなんだったらひと思いにやって欲しいって思った瞬間に、和谷の人差し指がついに入り口を捉えた。
「ここ、だよな……」
小さな呟きは俺に確認を求めてるんじゃなくて、無意識に出たものだろう。
和谷の指が入ってくるんだと、身構えた。なのに和谷は身体を離して、ベッドの傍に投げ出されていた鞄を探っている。
「……なに?」
「手際悪くてごめんな。忘れそうだった」
鞄の中から出てきた手に握られていたのは小さなチューブと、それから。
「あの、わかってると思うけど。俺、男だから着けなくても大丈夫だよ?」
チューブの中身は不明だけど、もうひとつの小さな四角いパッケージは俺も見たことがある。
使ったことはないけど、中学の保健体育の授業で男子だけに教えられた。
避妊具、いわゆるコンドームってヤツ。
「ばぁか、違うよ。着けないと後からお前、腹壊すかもしれねぇぞ?」
「え、そうなの?」
「直腸に入るはずない精液が入るわけだからな。上手く掻き出す自信もないし。あと、着けてるほうが挿れるの楽だって」
コンドームとか直腸とか精液とか。
聞いているだけでクラクラするほど恥ずかしいんだけど、和谷のほうは真剣で。
だから俺も真面目に和谷が自分のモノにゴムを被せるのを見ていた。
ゴムは薄く破れそうなほど伸びきっている。……やっぱり大きいよ、和谷。
あれが、俺のなかに挿れられちゃうのか。
そう考えたら怖いんだけど、でももし小さくて貧弱だったとしたら、ちょっとがっかりしたかもしれなくて。
ああもう、なに考えてんだろ。
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