検討編 10 - 12


(10)
「…とう…や…っ…!」
抱きついてきた熱い身体をヒカルは強く抱きしめた。
頬に熱い吐息を感じる。
「しんどう…」
熱い擦れ声が自分の名を囁くのを聞いて、唇が頬に触れるのを感じて、全身が熱く燃え上がったような気がした。
背を抱きしめていた手を腰に滑らし、更に剥き出しにされた双丘に辿りつき、そっとそこを撫で擦った。
すっかり弛緩したアキラの身体はヒカルの手に委ねられて、ただヒカルの手の動きに甘い息を漏らす。
「塔矢…」
それからヒカルは中途半端にアキラの脚に絡まっていたズボンと下着を剥ぎ取った。
「……ん、」
「とうや……」
耳元で彼の名を囁きながら彼の身体を横たえ、素早く服を脱ぎ捨て、そしてアキラの足を割り開く。
「あ……な、に……?」
「塔矢、ちょっとだけ、ガマンして…」


「え……あ、う、うわっ!」
「ごめん、塔矢、でも、」
「や…やめ、やめろっ!なにするんだっ!」

「い、いた、痛い、痛い、痛いってば!イヤだ、やめろ、進藤!!」

「やめろっ!放せっ!!」


(11)
とうとうアキラの足がヒカルを蹴り落として、ヒカルは床に転がった。
「………………いってぇ……」
床に打ち付けられた腰を擦りながらヒカルが身体を起こす。
「………ひでぇよ……塔矢ぁ…」
「何だと?ひどいのはキミの方だ。何を考えているんだ、キミは!一体今、何をしようとした!?」
「何って……」
「そんな所にそんなモノ入る訳ないだろう!」
「入るはずなんだけど…」
「入るもんか。女じゃないんだから、」
「大丈夫なはずなんだよ…!」
「何を根拠にそんな事を、」
「だからぁ、そこに挿れるんだよ、男同士の場合は。」
「ウソをつけ!でたらめを言うな!!」
「でたらめじゃねぇよ!ホントだよ!!」
不信感もあらわにヒカルを睨みつけるアキラに、ヒカルは唇を尖らせて言う。
「だからぁ、えー、うん、男の場合はソコに挿れるの。そーゆーもんなの。」
返事もせずに疑いの眼差しを向けたままのアキラに、もう一度念押しのように言ってみる。
「どうしても疑うって言うんなら、賭けてもいいぜ。」
賭けるというのが何を賭けようというのかヒカルの目が雄弁に語っているような気がして、更に自分
はその方面の知識には疎いのだろう事も薄々は自覚していたので、アキラもやっとヒカルの言うこと
が全くのでたらめではないのだろうという事を、不承不承ながらも認めた。
「…どこでそんな知識を仕入れてくるんだ、キミは。」
「えー、それは、まあ、その、色々と…」


(12)
「あー、でもさぁ、ホラ、女のコも最初は痛いっていうから、男の場合でも最初は痛くてもその内よく
なるんじゃないかな?」
そう言ってもう一度アキラの上に圧し掛かり、ソファの上に押し倒そうとする。
「だから、塔矢、ちょっとだけ、ガマンして?」
「…なんで、ボクがそんなもの我慢しなきゃいけないんだ。」
ずず、っとアキラが逃げるように身を起こす。
「慣れればきっと平気だからさぁ、」
「慣れるもんか。慣れたくないね、そんな……こら!触るな!!」
パシッと音をたてて、アキラの手がヒカルの手を叩きはらった。
「………ケチ。」
なにがケチだ、と冷たくヒカルを見るアキラの目を、ヒカルは恨みがましげに見返した。
「ずりぃよ、塔矢。」
「…ケチだのずるいだのそういう問題じゃないだろう。」
まるで、そっちが悪いと言わんばかりのヒカルの言い方に、アキラは半ば呆れて、
「それとも、」
と言いながらアキラがヒカルの手首をとった。
「え、え、うわわっ!」
一気に体勢を入れ替えられてしまって、ヒカルは呆然としてアキラを見上げた。
「それ程平気だって言い張るんならキミで試してみるか?」
「え?」
「キミのにボクのが入るかどうか、試してみてやろうかって、言ってるんだよ。」
「え…それは……ちょっと、カンベン……」
「……随分な言い草じゃないか、進藤。」



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