痴漢電車 10 - 12
(10)
「あ、乗らなきゃ……」
そう独り言のように呟くヒカルの手を取ると、アキラはさっさと電車に乗り込んだ。
驚いているヒカルの手を引っ張って、そのまま反対側のドアへと連れて行く。
「と、塔矢?」
ヒカルは何度も瞬きをしている。華奢な身体をドアに押しつけ、自分は周りからその姿を
隠すように前に立った。後から次々と乗客が乗り込んでくる。忽ち、身動きがとれなくなった。
手をヒカルの顔の両側に着き、身体を密着させる。
「塔矢、いいの?帰るんじゃないの?」
アキラの意図に気付かずに、ヒカルは不思議そうに問いかけてくる。そのくせ、どこかホッと
したような安堵の表情を浮かべている。
「よかった……本当は一人で行くのちょっと心細かったんだ………」
アキラの知るヒカルはもっと強気で、大胆だ。少なくとも、たかが買い物にオロオロするような
人間ではない。身につける物ひとつでこうも変わるとは………。
「塔矢、ありがとうな。」
ヒカルははにかんだ笑顔をアキラに向けた。その瞬間、アキラの理性は完全にぶち切れた。
(11)
アキラは、ヒカルの足の間に、自分の太腿を割り入れた。ヒカルは気付いていない。
いや、気付いていても他の乗客に押されたせいだとでも思っているのだろう。
電車の揺れを利用して、ゆっくりと足を擦りつける。
「あ………塔矢……あの…」
ヒカルはアキラを困ったように見つめる。
「どうかした?」
アキラは何でもない顔をしてわざと訊き返した。ヒカルは、顔を赤くして「何でもない」と
俯いてしまった。
アキラはニヤリと笑った。電車が揺れるたびヒカルの股間をぐいぐいと押した。
「あ…ン…」
「どうしたの?気分でも悪い?」
ヒカルは黙って首を振る。ヒカルの愛らしい唇から「ハアハア」と忙しなく息が吐かれている。
首筋に掛かるその吐息は甘く熱い。
アキラはヒカルの顔の横に付いていた手をゆっくりと下ろし、そのままセーラー服の
中に忍び込ませた。
(12)
「………!と、塔矢!?」
驚いたヒカルが身を捩って、その無礼な手から逃れようとした。だが、その指先が胸の小さな
突起に触れ、その周辺を撫で始めたとき身体に電気が走ったように動けなくなった。
「や…やめて……」
ヒカルはアキラを押し返そうと、手を突っ張った。けれど、身体に力が入らない。
「やだよ………やめて……やめてったら!」
ヒカルは身動きひとつできない小さな空間の中で、必死にアキラから逃れようと藻掻いた。
アキラは肌の感触を楽しむように、ゆっくりとヒカルのヒカルの胸や腹を撫でる。
「んん………やめてよぉ………」
「進藤、可愛い………」
半泣きのヒカルの耳元で、アキラは笑いを含んだ声で囁いた。
頭に血が上った。自分が困っているのを見て、アキラは楽しんでいる。
―――――バカヤロ―――――――――!!
ヒカルは顔を上げ、キッとアキラを睨み付けた。
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