初めての体験 10 - 15
(10)
ヒカルは服を全部はぎ取られた。桑原はねっとりとした視線をヒカルの全身に這わせる。
老人に視姦されている!ヒカルの肌は羞恥の色に染まった。ほんのりと朱に染まったヒカルは
いつもの明るいヒカルと正反対の妖しい色っぽさがあった。
節くれ立った指や手のひらでヒカルの肌を這った。ヒカルの体がビクッとふるえた。
しかし、それは恐怖や嫌悪からくるものだけではなかった。ヒカルは、よく働かない頭の
片隅で考えた。先ほどの料理に何か入っていたのだろうか?それで、あの人たちはオレを
あんな風に見ていたのだろうか?いくら何でもこんな猿みたいな爺にやられるのはやだ!
ヒカルの思考は途中で途切れた。執拗に肌を這っていた老人の指が、ヒカル自身に触れ、
舌がヒカルの乳首をなぶり始めた。ねちっこく何度も何度も同じ場所をせめる。ヒカルは
声を出さずに、あえいだ。
必死でこらえようとしたが、ヒカルは耐えきれず、声を上げ始めた。
「やぁ・・・やだ・・・くわ・・・ばらせんせ・・・あぁん ンン」
桑原が満足そうに笑った。
「いいのか?かわいいのぅ。」
桑原はわざとぴちゃぴちゃと音を立てて、耳からヒカルを犯した。羞恥のあまりヒカルの肌は
ますます艶っぽく染まっていく。
「や・・やめてよ・・・せん・・・せい・・・」
泣きそうにあえぐヒカルの口を老人が塞いだ。ぬるりとした感触のものが口の中を蹂躙した。
ヒカルは桑原の舌を押しだそうとしたが、それは愛撫にしかならなかった。
涙を流すヒカルを無視して、桑原はヒカルを責め続けた。足を大きく開かせ、老人はヒカル自身に
舌を這わせた。
「あああぁ・・・や・・あ・・やだ!」
桑原の舌が後ろの入り口に届いた。その周辺をひたすら舐め続けた。ヒカルの中に舌が差し込まれた。
ヒカルはパニックになった。そんなこと誰にもされたことがなかった。足をバタつかせて暴れた。
・・・つもりだったが、実際には体を少し捻った程度だった。
「気持ちいいじゃろう?ん?」
老人の指がヒカルの中を行き来した。ヒカルはもう声も出なかった。と、突然ヒカルは解放された。
うつろな瞳で桑原を見た。
「や・・・やだ・・・!!」
ヒカルは小さく叫んだ。老人のグロテクスな物がヒカルに押し当てられる。老人だとは思えないほどの
堅さだった。
ずり上がって逃げようとしたヒカルの腰を掴むと、一気に中に突き入れた。
(11)
「いやだ─────────!!!」
桑原はゆっくりと動いた。ヒカルは揺すられながら涙を流し続けた。
自分は今、桑原に犯されている。
猿のように醜いこの老人に・・・。
しかし、この考えはヒカルを次第に陶酔させた。『醜い老人に犯される自分』それはヒカルを興奮させた。
桑原に盛られた薬のせいかもしれない。
「ああ────────っ!!」
ヒカルがはてても、桑原はまだうごめいていた。
桑原本因坊・・・伊達に年は食ってない!ろうかいな作戦に要注意!
ヒカルが手帳に書き込んだ文章を見て、
「なんだお前?本因坊と対局したのか?」
と、緒方が訊ねた。
「うん。今日時間があったから一局打ったんだけど・・・。手も足も出なかった。」
緒方が落ち込むヒカルの頭を撫でながら言った。
「食えないじーさんだからな。まあ落ち込むな。」
「すごくねっちこいんだぜ。」
ヒカルがふくれっ面をした。
緒方がヒカルを膝に乗せたとき甘えるようにヒカルが言った。
「それでね緒方さん。今日オレすごく疲れてるんだけどしなきゃだめ?」
「しょうのないやつだ。」
緒方はヒカルの頬を軽くつねって言った。
<終>
(12)
ヒカルのシステム手帳は、表紙が紺、背表紙が茶の革で出来ていて、
中学生の子供が持つには贅沢すぎる品だ。もちろん、ヒカルが自分で買った
わけではなく、プロ試験合格のお祝いとして貰った物だ。
「マスター、ホントにこれもらっていいの?」
ヒカルが目を輝かせて、聞いた。
「ああ。お祝いだからね。進藤君もこれからプロとしていろいろな仕事が
入るだろうから、こういう物も必要だと思ってね。」
マスターは、にこにこと人好きのする笑顔で言った。ヒカルは和谷と伊角に
連れてこられて以来、たびたび、この碁会所に通っていた。
大人慣れしていないヒカルは、初めこそ殊勝にしていたが、時間がたつにつれ、
いつもの闊達なヒカルに戻っていった。明るくて、人懐っこいヒカルは、
今では、この碁会所のアイドル的な存在だ。マスター自身もヒカルが可愛くて
しょうがなかった。
「ホントにありがとう!」
ヒカルは礼を言った。嬉しそうに頬を紅潮させて、何度もその手帳を開いたり、
閉じたりして見せた。ヒカルの嬉しそうな顔を見て、マスターもますます笑顔に
なった。が、ヒカルが急に沈んだ顔を見せた。
「どうしたんだい?何か気に入らないのかい?」
マスターが不思議そうに訊ねた。ヒカルは慌てて首を振って言った。
「ううん!ちがうよ!・・・オレ・・・お返し何にもできねぇなあと思って・・・」
「ハハハ。何だ。お返しなんていらないんだよ。」
マスターはヒカルの頭を撫でながら、言った。
「プロとして、がんばってくれれば、それでいいんだ。」
(13)
「マスターありがとう!」
ヒカルがマスターの首に飛びついた。マスターは少し狼狽えた。ヒカルがしがみついて
来る前に見せた表情が妙に色っぽく、いつものヒカルとは、まるで違って見えたからだ。
マスターは、気のせいだと思った。しがみついてはしゃぐヒカルは、いつもにもまして
子供っぽい。
その時、ヒカルが呟いた。
「オレ・・・ホントは・・・強い奴がいいんだけど・・・マスターならまぁいいか・・・」
マスターには、ヒカルの呟きがよく聞こえなかった。「何?」と聞き返そうとした時、
ヒカルの唇が、マスターのそれを塞いだ。深く舌を差し込んでくる。マスターは、
ヒカルを押しのけようとしたが、出来なかった。ヒカルのキスは余りにも刺激的で、
マスターはその快感にうち勝つことが出来なかった。
ヒカルがマスターから離れた。その唇が動いた。
「マスター・・・オレのこと好きにしていいよ・・・」
今、サロンの中には、ヒカルとマスターの二人しかいない。心は決まった。
マスターは入り口の鍵を閉め、カーテンを引いた。その様子をヒカルはクスクスと
笑って眺めていた。
マスターの目の前で、ヒカルは服を全部脱いだ。マスターはヒカルに見とれた。
少年らしいすんなりと伸びた手足、やや細すぎるが、しなやかな体。
マスターはヒカルの体にそっと触れた。
(14)
マスターはヒカルを机の上に横たえた。ヒカルはマスターに甘えるように言った。
「マスター・・・乱暴にはしないでね。」
マスターはヒカルの言葉に頷くと、その唇にキスをした。
「あぁ・・・マスター・・・」
マスターはヒカルの望む通り、これ以上ないだろうと思えるくらい優しくした。
ヒカルはマスターが触れるたびに、「あん・・・」と甘い声を漏らした。
その声に煽られるように、マスターはヒカルを愛撫し続けた。
細い首筋や、小さな乳首に舌を這わした。そして、立ち上がりかけているヒカル
自身を舐めあげた。ヒカルの体がブルッと震えた。マスターは動きを止めた。
「や・・・やだ・・・マスターやめないで・・・」
ヒカルが喘ぎながら訴えた。ヒカルは、どうやら嫌がってはいないらしい。
「あん・・・気持ち・・・い・・・」
マスターは机の引き出しから、ハンドクリームをとりだし、それをヒカルの後ろに
塗り込めた。ヒカルが小さな声で喘ぎ続ける。
「マスター・・・して・・・」
マスターは自分自身にもクリームを塗ると、ヒカルの中にゆっくりと入っていった。
「───────────────っ」
サロンの中に、ヒカルの嬌声が響いた。
ヒカルは自室で佐為に訊ねた。
「なあ?今日オレどうだった?」
「ふー。まだまだ甘いですねぇ。ヒカルは・・・」
佐為がまるでなっちゃいないと言うように答えた。
「えー?なんでぇ?オレがんばったじゃん。」
文句を言うヒカルを佐為が諭した。
「まだまだ技術が足りません。精進しなくては。」
「神の一手に到達するって厳しいんだなー。」
ヒカルは大きくため息をついた。
「まあいいや。オレ今度からこれに記録つけることにするよ。」
ヒカルは、システム手帳を大事そうにリュックにしまった。
<終>
(15)
アキラは、ヒカルが対戦相手の感想を日記代わりのシステム手帳につけて
いるのを知っていた。ヒカルは強い相手の感想しか書かないと言っていた。
だが、アキラには、一つ気になることがあった。ヒカルが対戦したことがあるのに、
感想が書かれていない人がいるからだ。『どうして、進藤はあの人のことを
書いていないのだろう・・・。』
アキラは、思い切ってヒカルに訊ねた。
「ねえ、進藤。その手帳には強い人のことが書いてあるんだよね?」
「そう。それがどうかしたか?」
ヒカルがきょとんとした顔で聞き返してきた。
「どうして、倉田さんの感想を書いていないんだ?」
「!!」
思いがけないアキラの言葉に、ヒカルはどう応えていいかわからなかった。
「倉田さんと対局したことがあるんだろう?」
アキラはさらに問う。ヒカルは狼狽えて、
「な、なんで倉田さんなんかと!オレは・・・!」
と、真っ赤になって言いかけたが、ハッと口を押さえた。そんなヒカルの言葉を
アキラはどう受け取ったのか、
「進藤・・・。苦手な相手がいるのはわかるよ。負けて悔しい気持ちも分かる。
でもね・・・苦手な相手を避けていては、一向に強くなれないよ。」
と、ヒカルを諭した。ヒカルは、雷に打たれたような衝撃を受けた。
「そう・・・そうだよな。塔矢の言うとおりだ。」
ヒカルは塔矢に、吹っ切れたように笑って言った。
「わかったよ、塔矢。オレ、今から倉田さんに対局申し込んでくる。」
「進藤?ちょっと、急にそんなこと・・・」
ヒカルは、走って出ていった。
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