平安幻想異聞録-異聞- 101 - 102
(101)
その動きに思わず感じてしまった快楽を振り払うために頭を左右に振った。
痛い。手首が痛い。座間も菅原も全部無視してやる。無理矢理与えられる快感も。
その時、座間の声がかかった。
「ほうほう、そんなに声を出しとうないか。よいわ、よいわ。我らが手助け
してやろうぞ」
そう言って座間は、扇を大きく鳴らし、再び侍女を呼び寄せた。
美しく薄紅色に染め上げられた綾織の布を持ってこさせる。
それは紅地に、暗がりでもわかるほど、あでやかな金銀の刺繍が細かく
施されている。
普通の人間には一生かかっても手が出ないほどに高価であろうそれを、
座間はヒカルの前で惜しげもなく引き裂いた。
そして、嫌がり、抵抗するヒカルの頭をおさえ、長細く切り裂いたそれを、
猿轡としてヒカルの口に噛ませる。
首の後ろではずれないよう強くしばる。
「これで、望まぬ声も出ぬであろうよ」
座間が笑った。菅原も笑いながら乱暴にヒカルの中の張り型を揺さぶった。
「んんっ……んうっ……んっっんっっ」
座間は再び腰を下ろし、空になっていた杯に酒をそそぐと、ぐいと一息にそれを煽った。
「めったに見れぬ、よい光景よのう」
座間が目を細めた。
必死に声を出すまいとする、ヒカルのけなげな所作さえも、座間達は面白がり
余興のように楽しんでいるのだ。
そうしてもう、半刻近くもずっと責められ続けただろうか。
座間たちの目の前で、すでにヒカルはその張り型により、
二度ほども頂点に押し上げられていた。
だが、責め苦は果てがない。
菅原がその手を休めることはなく、時折、より深く、あるいは角度を変えて
その張り型を突き出しては、ヒカルに身をよじらせる。
そうして、ヒカルが声を押さえながら、望まぬ快感に身を震わす様を、座間は座って
脇息にひじをつき、酒をちびりちびりと飲みながら見物していた。
達したばかりのヒカルの柔肉を、菅原がふたたび掻き回しだす。
頂点に押し上げられたばかりで、過敏になっっている腸壁はその
少々乱暴な動きさえ、安易に快楽に変換してヒカルを苦しめる。
「ん……く……………っ…っ…!」
頬を伝って、唇を濡らしたものが汗なのか涙なのか自分でもよくわからなかった。
体の芯はドロドロとした肉欲に煽られていたが、それは表に出さない。
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キリリと、食まされた布を噛みしめる。
意地でも座間達に自分の感じている声など聞かせたくなかった。
精を履きだして萎えていたヒカルはずのものが、ふたたび腹の底からの
沸き上がるような快楽に反応して勃ち上がるのを見て、菅原が言葉で
ヒカルを責める。
「この検非違使どのは淫乱じゃのう。先ほど、達したばかりというに、もう
こうも立ち上がってきおる。さては、検非違使庁では、若者に閨の術まで
教えているのか」
そう言いながら、その太い張り型をぐいと奥まで捻りながら突き入れる。
ヒカルの太ももが波打つ。暗い明かりの中に浮かび上がる、その日に焼けていない
なだらかな足は、今はヒカル自身が放ったものでドロドロに汚れていた。
「いやいや、顔では嫌がりながら、体は責められて喜んでおるようじゃ。訓練で
どうにもなるものではない。生まれつきのものじゃろうよ。閨用に育てられた
稚児でさえ、こうもよい反応は返さぬわ」
座間が、酒を含みながら言葉でヒカルを嬲る。
身の内から張り型で責められ、身の外から言葉で責められ、ヒカルの心が震えた。
今の座間にとって、そのヒカルが恥羞に流す涙こそが、最高の美酒だった。
「今日の昼間は、気がすいたのう、顕忠。あの佐為の奴の顔を見たか」
「はい、誠に。あの白い顔が、我らともにおるこの検非違使の姿を見たときに、
さらに白くなって歪むさま。まこと見物でございましたなぁ」
言いながら、菅原が手の中のモノを強く突き上げる。
「んううっっっ!」
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