初めての体験 102


(102)
 運命は非情だ。社は、負けてしまった。しかし、ヒカルの住所と電話番号を訊いておきたい。
それが、無理なら、せめて、メールアドレスだけでも…。
 社が、ヒカルに声をかけようとしたとき、チリチリと焼け付くような視線を感じた。
「?」
視線を感じた方に、首をむけると、一人の美少年がそこに立っていた。切りそろえられた
サラサラとした黒髪。涼しげな目元。だが、優しげな外見には不似合いな苛烈な色をその
瞳に宿し、鬼神のごとき形相で社を睨み付けている。
 その少年が、かの有名な「塔矢アキラ」だと知ったのは、二人の会話からだった。甘えるように、
ヒカルが名を呼ぶと、「塔矢アキラ」は、優しく微笑んだ。返すように、ヒカルも愛くるしい
笑顔をアキラに向ける。
―――――好きになったばっかで、もう失恋か…
知らず、溜息が出た。



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