初めての体験 103
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「なあ…?どないしたんや?代表なれるかもしれへんねんぞ?嬉しないんか?」
津坂が、社の顔を覗き込むようにして、訊ねた。
「…嬉しいで…嬉しいねんけど……」
もちろん、代表になる自信はある。越智にはきっと勝てるだろう。だが、代表になれば、
アキラとヒカルの仲の良さを、その間ずっと見ていなければいけないのかと思うと素直に喜べない。
そのくせ、ヒカルと一緒にいられる時間ができたことが、嬉しくて仕方がない自分がいる。
社の口からは溜息しか出なかった。
「…何か心配やなあ…明日ホンマに大丈夫なんか?」
沈んだ様子の社を津坂は気遣った。
「津坂さん、大丈夫や。はよ行かな、新幹線、間に合わへんで。」
社は、無理やり笑顔を作って津坂を急かせた。
ホテルの部屋につくとすぐに、ベッドに寝ころんだ。天井の灯りが眩しい。ヒカルの笑顔は、
もっと眩しかった。
「あ〜可愛かったなぁ…進藤…」
自分の内に芽生えた恋心を持て余して、ベッドの上をごろごろと転がった。
突然、電話が鳴った。
「もぉ〜何やねん…」
しぶしぶ受話器を取った社は、フロントから思わぬことを告げられて、心臓が飛び出すくらい驚いた。
「し…進藤が!?すぐ…すぐ行きます。」
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