初めての体験 109 - 112
(109)
「進藤…オレ…初めてやねん…」
ヒカルの髪に顔を埋めるようにして、社が呟いた。知識としてはある。だが、社はキスを
したのも初めてだった。ましてや、それ以上のことなど…。
ヒカルは、少し驚いたようだった。だが、すぐにフッと優しく笑うと社の胸にもたれ
かかってきた。
「そっか…オレが社の初めての相手なんだ…」
その言葉に社の全身がカッと熱く滾った。社にとってヒカルは初恋で、ファーストキスの相手で、
それから………。すごく、ドキドキした。心臓の鼓動が、ヒカルに聞こえてしまうのでは
ないかと思った。
―――――オレはメチャメチャラッキーや。これ以上望んだら、罰が当たる。
ヒカルが背伸びして、社にキスをした。一番最初にしたような、触れるだけの軽いキス。
思い切りヒカルを抱きしめたかった。でも、我慢した。ヒカルが痛いのはイヤだと言ったから、
力を入れないように必死で耐えた。ヒカルは、そんな社の葛藤に気づいていたのか、
「いいよ…好きにしていい…」
と、小さく囁いた。そうして、力を抜くと社に身体を預けた。
躊躇いながら、ヒカルのシャツの下に手を忍ばせる。すべすべした肌を撫でた。身体の作りは、
同じはずなのに、自分とはずいぶん違うような気がする。
―――――骨格自体が華奢なんかな?腰も、腕も、オレよりずっとヤワそうや…
なるほど、これでは乱暴に扱うわけにはいかない。大事に大事にしなければ、壊してしまう。
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社は、恋人を作らなかったことを少し後悔した。これから先、どうすればいいのか
見当もつかない。しまらんな〜オレってヤツは…。ヒカルは好きにしてかまわないと
言ったが、乱暴な真似はしたくない。だけど、自分が最後までそうしないでいられる自信は
全くない。
悩む社のTシャツに、ヒカルが手を掛けた。そのまま、胸まで捲り上げる。
「え…?ちょぉ、進藤…」
社は狼狽えた。かまわずヒカルは、社の胸に口づける。そして、胸に顔をすりつけるようにして、
社を見上げた。
「オレがしてあげる。」
えええぇぇぇぇ――――――――――――――!!!
それって、オレがヤラレるってことなんか?この可愛い進藤に?
慌ててヒカルを離そうとしたが、逆にヒカルは、社を思い切りベッドに突き飛ばした。
「わわわ…!」
仰向けにベッドに倒れた社に、ヒカルがダイブするように飛びついた。
「心配しなくていいよ。社って、可愛い…」
そう言いながら、キスをしてくれた。今日だけで何回キスしたっけ?でも、もっとしたい。
甘い唇。柔らかい舌。頭がクラクラする。
ヒカルは、ボーっとしている社から一旦離れると、自分で服を脱ぎ始めた。ぼんやりと
それを眺めていたが、ヒカルの裸体が少しずつ露わになり始めると、いっぺんに正気に戻った。
めっちゃキレイや……
社の想像したとおり、ヒカルの身体はどこもかしこも、簡単に壊れそうなくらい華奢だった。
陽の光にあたっていない、胸や腿は白くて、目が眩みそうだ。
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ヒカルが近づいてくる。社は、身体を起こしてヒカルを待った。細い腰に手を伸ばした。
社がヒカルを捕らえるより先に、ヒカルに手をつかまれた。ヒカルはそのまま跪くと、
社の指先に口づけた。
「あ…進藤…」
指を一本ずつ愛撫するように、口に含む。くすぐったいような、気持ちいいような…むず痒い
妙な感覚が社を包んだ。
愛らしい唇から、紅い舌がちらちらと覗く。それを見た瞬間、血液が一気に下半身に
集中した。
―――――げっ!やばい!節操のないやっちゃ……
社は、それを隠そうと足をもぞつかせたが、ヒカルの目はしっかりとその変化を捕らえていた。
ヒカルは微笑んで、社のジーンズのファスナーを下ろした。音がやけに響く。ジーンズの
ファスナーを下ろす音が、これほど艶めかしくきこえたことはなかった。
「進藤…あの…」
この場合、自分はどうすればいいのだろうか。一瞬の間に、いろんな考えが浮かんだが、
結局、ヒカルに任せるのが一番確かだという結論に達した。
「心配しないで…オレに任せて…ね?」
その優しい…だが力強い言葉に、社は複雑な気持ちだった。自分がとても情けない。
そして、自分の分身も情けないことこの上ない。ヒカルの指が触れただけで、達して
しまいそうになった。が、全ての気力を振り絞り何とか堪えた。いくら何でも、それは格好悪すぎる。
でも、このままではいつそうなってもおかしくない。それくらい気持ちがイイ…!
ヒカルの指が社自身を優しくさする。両手で包むようにして擦り上げらる度に、身体が
ふるえ、声が漏れる。
「ああ…進藤…うぁ…」
「気持ちイイ?イってもいいよ?」
そう言われて、素直にイクわけにはいかない。何とか堪えなければ…何とか…ああ…でも…イイ!
気を紛らわせるため、囲碁のことを考えた。しかし、それは逆効果だった。あのハラハラするような
今日の一局やヒカルの真剣な表情を思い出してしまった。可愛い外見とは裏腹のシビレるような
手を打つ強敵。その進藤がオレのモノを…それを考えると、すぐにでも弾けてしまいそうだ。
―――――そや!今日の監督の先生!渡辺先生ゆうたか、あのオッさん…
顔を思い浮かべてみる。魚を思わせる唇や、ゲジゲジというのも生ぬるいあの眉毛…。
吹き出してしまった。よっしゃぁ!これで、当分持つやろ。
いきなり笑い出した社を、ヒカルがびっくりした表情で見つめていた。
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しかし、社の抵抗もここまでだった。社に男の意地があるように、ヒカルにも意地が
あったようだ。どんな意地なのかは、怖いので、この際考えないようにした。
「あ…アカン!進藤!ああっ」
ヒカルが社を舐めたのだ。先端にそっと口を付けると、そのまま含んだ。赤ん坊がミルクを
飲むように先端を舌で押すようにして、吸い上げた。
社は、簡単に陥落した。体中をけだるい心地よさが包んでいる。社の吐き出したモノを
ヒカルは目の前で飲んで見せた。社は、驚いてヒカルを凝視した。
―――――飲んだ…飲んでしもた……進藤が…オレのンを…全部…
イったばかりなのに、また熱くなってきた。これが、ヒカルの手なのか?こんな姿を見せられて、
我慢できるヤツはいない。
「社…ゴメン…ちょっと待ってて…」
ヒカルがリュックの中から、何か小さな瓶を取りだした。
「進藤…ナニそれ?」
何の含みもない純粋な好奇心から、訊ねた。
「これは…その…」
ヒカルは、モジモジと言いにくそうに口ごもった。
「このままじゃ入らないから…これで…その…」
社は絶句した。ヒカルに対してではない。自分の間抜けさ加減にだ。
ああああぁぁ―――――――――――――――――!!
オレは、どこまで鈍感やねん!言いにくいこと言わせて…進藤に恥かかすなんて…!
社は、ヒカルに謝ろうとした。だが、上手い言葉が出てこない。そんな社の態度を
どう受け取ったのか、ヒカルはちょっと困ったような哀しげな笑顔を浮かべていた。
「ここでするの恥ずかしいから…」
バスルームに行こうとしたヒカルを、抱きしめる。
「オレにやらせてくれへんか…?ヘタやけど…進藤にしたい…」
そう言ってキスをした。ヒカルの甘い唇から、微かに自分の味がした。
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