バレンタイン 11
(11)
「じゃあさ、俺が帰ってくるまで、中身を開けて板チョコがあったら小さく割っててくれる?」
「ハイ」
もともと生真面目なアキラは、優等生的返事をし、こっくりと頷いた。
コンビニへ全力疾走しながら俺は生クリーム牛乳生クリーム牛乳生クリーム…と唱えていた。
アキラたんは今頃、自分にヌリヌリされることにも気づかないでチョコレートをひたすらパキパキ
割っているのだろうと思う。あるいは、気づいているのかもしれない。
溶かしたチョコレートをとろとろになるまで冷まして、今夜はしっぽりとアキラたんにヌリヌリするのだ。
アキラは最初は嫌がるかもしれないが、あの子はあんな清楚な顔をして見かけによらず快楽に貪欲だから
クセになってしまうかもしれない。
今夜は珍子。明日は乳首。アキラたんと俺ならそんな風に楽しめるはずだ。
ほら、俺のムスコも期待に打ち震えているようだよアキラたん。
「大人しく待っててくれよ、アキラた――ん!」
月夜に向かって叫びながら、俺はポケットの中に右手を突っ込んで走った。
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