heat capacity2 11


(11)
塔矢が苦しそうに息を吐く。
目を閉じて、少し震えている唇から再度ゆっくりと深い息を吐くと、顳かみの辺りから
一筋汗が流れ落ちた。
俺の頬を濡らしたそれが、耳の方に流れていくのに全身が総毛立つ。
塔矢、と名前を呼ぶとあいつは眉間に皺を寄せたまま、それでも無理に笑おうとした。
なんだかよく分からないけど、胸がいっぱいになる。
何度も突き上げられて、声が掠れる程泣いて、気持ち良すぎて、辛くて。
それでもあいつの背中に回した手を離そうとはしなかった。

気がつくと、俺の目の前に静かな寝息を立てている塔矢が居た。
自分が気を失っていたのだと気付いたのは、いつの間にかこざっぱりした浴衣に着替え
ていたからだ。
風呂にも入れてくれたんだろう、自分の髪が塔矢の髪と同じ匂いがするのがなんだか落
ち着かない。
塔矢の髪に手を伸ばすと指の間からサラサラと流れ落ちた。
身を包む倦怠感はどうしようもなかったけれど、心はいつになく穏やかだった。
もしかして、これが愛しいって事なんだろうか。
不意に急激な眠気が襲ってきた。
「塔矢……」
規則正しく聞こえていた寝息が、途絶える。
「もしお前がオレをひとりぼっちにしたら、オレは死んでやる」
暫くして、塔矢の腕が俺の身体に伸びてきて、強く強く抱きしめられた。
塔矢の遣る瀬無い思いが直に伝わってきて、俺も精一杯しがみつく。
持て余した感情が、ただただ溢れていた。

<了>



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