光明 11


(11)
「・・・そうだな。それしかないんだろうな・・・。
今まで引き留めてすまなかった。もう帰るよ ありがとう。」
アキラは飲み終えたコーヒー缶をゴミ箱に捨て、ヒカルの顔を見ないで背を向けた。
そして そのまま最寄の駅の方へ歩き出すアキラの後姿をヒカルは何も言わず目で追った。
だんだん自分から遠ざかるアキラを見て、自分は はたしてアキラの悩みに少しでも
力になれたのだろうかという気持ちが強くなり激しく心が揺れた。
雪明りのせいかアキラの姿が白く霞み、そのまま闇に消え入りそうな風情が いつかの佐為の姿と
重なりヒカルの胸の動悸が高まった。
たまらなくなり「塔矢っ!!」とヒカルは叫びアキラの元へ走って駆け寄り、アキラの左肩を強引につかみ
自分の方へ向かせた。
その瞬間 アキラの唇は風が撫でるようにヒカルの唇の上を掠めた。

ヒカルは何が起きたのか分からなく あっけにとられてアキラの目を見ると
いつもの矢のように鋭い光を放つ瞳に戻っていた。
「・・・どうした進藤?」
「いや・・あの・・・今 オレの、その くっつ唇にっ・・・。」と
どもるヒカルに対しアキラは無表情で「・・気のせいだろう。」と涼しい目で答えた。
そして左肩をつかむヒカルの手を ゆっくり外しながら「用がないなら帰るよ。」と言って足早に その場を離れた。

アキラの姿が自分の視野から消えるまでヒカルは ただ呆然と立ち尽くしていた。
自分の身に何が起きたのか訳が分からなくヒカルは戸惑っていたが しばらくして だんだん猛烈に腹が立ってきた。
「なっ、なんなんだよアイツはっ!? ついさっきまで今にも泣きそうな顔していたくせに
いきなり元に戻って最後のあの冷めた態度は いったい何なんだよ! 訳が分からねぇよっ!!」と
感情に任せて言葉を吐き出したが深夜の町に自分の声がただ虚しく響くだけだった。



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