戻り花火 11


(11)
「それで、進藤。・・・その間、キミもうちに泊まってくれないか?」
ぐるぐる回っていた思考をアキラの声が断ち切った。ヒカルは顔を上げた。
「・・・え?」
アキラはいつものように口元に手を当てて盤上を睨んでいたが、ヒカルが聞き返したので
顔を上げもう一度繰り返した。
「社がいる間、キミもうちに泊まってくれないか?もちろん、出来たらで・・・構わないけど」
「オレ、行っていいの?」
「そのほうが思い切り打てるだろう?前に合宿した時は、キミは自分からそう言って
泊まりに来たじゃないか」
「そうだけど」
「・・・嫌?」
目が合った。
印象的な黒い瞳には、いつもの強気に似合わずほんの少し心細そうな、縋るような色がある。
もし社との間に疚しいことがあるなら、こんな風に全てを預けたような目でアキラが自分を
見ることは出来ないはずだと思った。

「・・・ううん。そうだな、合宿の時みたいで楽しいかもな。行くよ」
「ありがとう。・・・良かった」
アキラはほっとしたように微笑んで、おとなしく盤上に目を戻した。
ヒカルも石の並びに目を戻した。そこにあるのはもうドット柄ではなく、アキラと自分が
織り成した意味ある模様だった。
ヒカルが打って、アキラが返した。そうして十数手ほど進んだ。



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