裏階段 三谷編 11


(11)
伯父は少年に優しかった。だが囲碁を学ばせる時は厳しく、そして熱かった。
それは伯父の打つ碁そのものだった。
酒が好きで、碁の指導の合間もよく臭った。時として手合いの勝敗の勢いを
そのまま自宅に持ち帰り、勝てた時は少年が望んだ訳でもない高価なものを
買い与え、負けた時は意味もなく少年を殴ったりした。
だがそうして少年に手をあげたしばらく後で、泣きながら少年に謝り抱き締めて来た。
その時は少年の方が保護者のように白髪の混じった短く刈り上げた伯父の頭を撫でた。
いつからか、泣きながら抱き締めながらもその手が、少年の体をまさぐるようになった。

人とは厄介な生き物である。記憶しようとしたつもりもない、忘れたはずのものが
何かの拍子でこうして鮮明に頭の中に蘇る。
皮肉なのはそれらの記憶が交渉事の支障にならず、新たに興奮を加えている。
「は…あっ!」
自分の体内を侵略するものが質量を増したことを彼は敏感に感じ取り喘いだ。
一瞬見開かれた彼の大きな瞳がベッドサイドの明かりによって暗がりの野生動物のように
光る。受け入れる苦痛だけで体力を消耗しているのか、声をあげるわりに抵抗はない。
片手を枕の上の方を、片手で腰の近くのシーツを掴んで握りしめている。
少しでも痛みから逃れる為か自ら体を深く折り、両足をこちらの腰に絡み付ける。
すでに瞳は閉じられ、汗とも涙とも区別がつかないものに目尻を濡らし光らせている。
経験からなのか本能的なのか、彼の先を誘うような仕種に引かれそのまま腰を埋めた。



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