アキラとヒカル−湯煙旅情編− 11
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「あ、ああ・・・あいつらは?」すげーびっくりした。
「布団敷きの方に手伝ってもらって寝かしてきました。二人ともぜんぜん起きないんです。」アキラは少しふくれたような表情をする。変わんねえな・・・ふっと加賀の表情が緩む。
幼いアキラも良くふくれっ面をしていた。小さくて大人しそうな顔をしてるくせに、気が強かった。可愛らしいアキラは年上の子の玩具でもあった。いじめというわけではないが、何かと構おうとする子供が多かった。
そんな子供達に対してアキラは果敢にも向かって行こうとするのだが、ガキ大将の加賀が、すぐ助けに入ってしまう。そんな時、アキラはふくれっ面をして「てっちゃん嫌い。」と言い放つのであった。
「あの・・・?」加賀の思い出し笑いをアキラが不振そうな目で見ている。
提灯の灯りでライトアップされた露天風呂のすぐ先には渓流が流れている。水面にも満月がゆらゆら揺らいでいる。鹿でも覗きにきそうな山奥の温泉にアキラと二人浸かっている。なんだか不思議な気分だった。
「ふうっ、熱い。」突然アキラがザバッと湯から上がり岩の上に座った。露天風呂は温度が高めに設定されているのか、確かにずっと浸かっていると熱くてのぼせそうになる。加賀もさっきまで岩に腰掛けていたのだ。
月の光に照らされたアキラの白い裸体・・・細い首筋から胸元、胸元から腰、と月の絵の具が美しいラインを描いている。細く引き締まった臍回り、手拭で隠された部分からしなやかに伸びた脚・・・。
―――ヤベ・・・加賀は下半身を押さえた。
「熱くないですか?」アキラが涼しい顔で聞いてくる。熱い、ほんとは死ぬほど熱かった。だが、こんな状態で湯から上がるわけにもいかず加賀は「いや。」と出来るだけ平静を装って答えた。
アキラが体を洗いに浴場へ行って、やっと、加賀はゆでだこ地獄から解放された。
「どーすんだよ、コレ。」己の分身を眺め、加賀は大きなため息をついた。
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