平安幻想秘聞録・第三章 11


(11)
「そこにおる佐為殿のお付きの者は、検非違使の近衛光ではないか?」
「そうでございます」
 帝の問いに答えるのはもちろん佐為だ。近衛光の身分では、帝からの
特別なお声掛かりがない限り、直接言葉を交わすことさえできない。
「一昨年の大雨の折り、行方知らずになったと聞いておったが?」
「はい。近衛光は・・・」
 打ち合わせ通り、佐為が続けようとしたとき、帝がそれを制した。
「佐為殿。その辺りは、近衛光に直に伺うとしよう」
「ですが・・・」
「身分のことを気にしておるのか?近衛光は、都の有事を救った立役者
だあろう。それに、以前、二言三言、言葉を交わしておる」
 だから苦しゅうないということなのだろうが、ヒカルにしてみれば話
が違うというところだ。が、帝が光の答えを待っている様子がありあり
と窺える。このまま黙っていても不敬罪になるだけだ。
ダメで元々!平身低頭の状態のまま、ヒカルは覚悟を決めて、大きく
息を吸った。
「お、恐れながら、帝に申し上げます」
「うむ」
「私、近衛光が昨年、任務に赴いた先で不覚にも濁流に飲まれたことは、
お聞きになっていることと思います」
「そうであったな。して、そなた。今までどこにおったのだ?」
「はい。私が落ちました川は、大雨により水かさも増し、流れも速くな
っておりました。水を飲み、気を失った私は、思いも寄らぬほど川下に
流されました」
 不思議なことに、話を切り出した途端、自然と言葉が出てくる。澱み
のないヒカルの口上に、帝がほうと感嘆の声を上げた。



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