守って!イゴレンジャー 11
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実を言うとこの技は、囲碁発祥の地・中国で開発されたものだった。
広大な国土を股にかけ、ハードな棋戦を戦い抜く彼らプロ棋士たちの疲労は日本の比ではない。
碁の実力は当然ながら、それ以上に重要なのは気力と体力。
老いに胡座をかく者などは即座に蹴落とされる厳しい世界なのだ。
故に棋士たちは常に疲労困憊だった。
このままでは過労死が続出する怖れありと判断した中国棋院は、
心身ともに磨り減ってへたばりかけている棋士たちを癒すべく立ち上がった。
完成した“癒しグッズ”は評判も上々、そこに目をつけた日本棋院幹部が
お色気接待のドサクサ紛れに二次使用の許可を取り付けた末、
対戦用として生まれ変わったのがこの“トントンミサイル”なのだ。
「……ホラ、効いてないだろ?微動だにしないもん」
「やっぱりダメだったか。普通ならもう飛びついてるもんな」
諦め口調で顔を見合わせる越智と和谷。せっかくの国際色豊かな技も、
腹黒い大人にはかすりもしなかったらしい。
「こうなりゃ逃げだ!行くぞイエロー!」
「待て!おまえたち、この生き物は一体なんなんだ!」
初めて見る生物の迫力に、オガタンのポーカーフェイスが崩れた。
「タレ気味の目がなんとも愛らしい…体毛のもこもこ加減など、つい我を忘れて
抱きつきたくなる程刺激的だ。そこにいるだけで可愛いとはまさにこいつのこと…」
「ちょっと待った!アンタ本当にこれ、見たことないのかよ?」
「このようなファニーフェイス、オレの星には棲息していない」
白くてぽてっとした体格。笹の葉が大好物で日中友好の象徴でもあるパンダを模して
造られた癒し系メカ、その名を“童童(トントン)”と言う。
直接攻撃型ではなく、可愛らしい容貌で敵の心を掴み、撹乱させるのが主な役割だ。
「くっ…こいつを見ていると戦意が喪失していくのがわかる…ガキのクセに
小癪な真似を…それにしても可愛いな……ハァハァ」
舞い落ちた笹の葉にまぶしてある幻惑粉の効果も手伝ってか、
オガタンの言動が段々妖しくなってきた!このまま獣プレイ突入か?
「…愛情に飢えてるタイプがかかりやすいんだよね」
越智の説明に、和谷は大きく頷く。
「こないだゲーセンでUFOキャッチャーに大金つぎ込む白スーツ姿の
おっさん見かけたけど、もしかしたらこいつだったのかもしれないな」
「じゃ、あとは“童童”にまかせてブルーのところへ急ごう」
さて、一世一代の正念場を迎えている伊角。
コスチュームを切ってしまっては次の変身時に困る事に気付き、
ヒカルのベルト中央にはめ込まれている金色碁石を取り外し、変身を解いた。
目の前に私服姿のヒカルが艶めかしく横たわっている。
「レッド…いや、進藤…」
伊角の緊張を我が事のように感じながら延長戦決定!好手戦隊・イゴレンジャー!!
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