ピングー 11
(11)
水槽のろ過器の静かな稼働音だけが遠くに聞こえる部屋の空気を、悲鳴が
震わせた。
これでもかと使用されたジェルと、緒方の有無をいわさぬ強引さによって、
はじめての挿入は比較的スムーズに行われたと言ってよいが、だからといって、
ともなう痛みが薄れるわけではなかった。
ヒカルの繊細な下睫毛に、透明なビーズのような涙の粒が溜まっていた。
「痛い………、イタイよ……、センセエッ!」
「そんなもの、すぐに感じなくなるさ」
緒方はにべもない。
すぐに、腰を掻き回すように動きはじめた。
他人に中に進入されることが初めての人間に対して、緒方のそれは酷な動き方だった。
こねまわすように、だが同時に抉るように深く抜き差しする。
荒々しい男の息と、ヒカルの泣き声交じりの苦しげな息遣いと、接合点でグチャ
グチャと音をたてるジェルの音が、無機質な部屋の中で繰り返される。
ヒカルの睫毛から、小さなビーズの粒が、ポロポロとこぼれてシーツに落ちる。
緒方に、好きなようにされているうち、ヒカルの中からじわじわと、さっきまでの
指責めで感じていたのと同じ、体の中心が麻痺するような感覚が蘇ってきた。緒方が
しようとすることへの恐怖に、一度は体のどこかへ消し飛んでしまったその痺れは、
再び戻ってきてヒカルの下肢を支配し、さらに、上半身までその魔手を延ばそうと
していた。
「イヤダァ……」
ヒカルが逃げ出そうとするように、身をねじり、足は緒方に抱え上げられたまま、
上半身だけ俯せという無理な格好になって、クールグレイのシーツにすがりつく。
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