しじま 11


(11)
ボクの身体のすぐ下に、進藤がいる。
でもこんな状態でも、ボクのそれは稼動する様子を見せない。
進藤は膝頭を軽くボクの股間に押しつけた。そして眉をひそめた。
「どけよ。したくないんだろ」
不機嫌そうな声音に、ボクのなかで何かが切れた。
「嫌だ! どいたらきみは和谷のところに行くんだろう!?」
「なんでここに和谷が出てくるんだよ」
「ボクのが役立たずだからさ!」
進藤は目を見開いて、それから笑った。
優しくボクの横髪に触れてきた。そして耳に手を這わせて……。
「痛っ!」
進藤がボクの耳を引きちぎるような勢いで引っぱってきた。
「このバカ! たとえおまえのが使いものにならなくても、和谷は関係ねぇ! いいかげん
わかれよっ」
「きみがそう言ってくれてから、まだ一週間も経っていない。だいたい、今日のきみはなぜ
そんなに積極的なんだ!?」
進藤は虚をつかれた顔をして、それからほんの少し寂しげな笑いをもらした。
その声がとても静かなものとなった。
「……オレ、熱を出して寝てるあいだ、ずっと塔矢のこと考えてた。おまえが誰よりも大切
だって気付いたら、怖くなったんだ。なにもかもが全部、夢のような気がして。すごく不安
で……だから早くおまえに触れて安心したかったんだ」
きみが、不安? 本当に? そう思ってたのはボクだけじゃないのか?
いつも余裕に見えた進藤が、今はとても気弱に見えた。
――――これも進藤の一面なんだ。いつも明るい彼の持つ、深い悲しみ。
そうだ、ボクはそれに寄り添いたいと思ったんだ。
「進藤」
揺れるまなざしを、ボクはしっかりととらえる。
進藤、ボクはきみが愛しくてたまらない。
「塔矢……」
まだ痛みの残る耳を撫でさすられた。



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