夜風にのせて 〜惜別〜 11


(11)

十一
「それでは撮ります」
その声に明とひかるは背筋を伸ばした。写真を撮られるのに慣れていないせいか、二人とも表情が硬い。
「せっかくの記念写真ですから、肩の力を抜いてもっと笑ってください」
あまりの緊張ぶりにカメラマンから言われる。ひかるはドレスの裾がきれいに見えるよう
整えたりして気を紛らわせた。
「椅子を御用意致しましょうか。その方がこのドレスの場合綺麗にうつりますよ」
カメラマンに言われ、ひかるは用意された椅子に腰掛けた。そしてドレスや髪の毛を整え
たりする。その姿を明はじっと見惚れていた。
「どうかしました?」
ひかるに言われ、明は我に返った。
「すみません。あまりにも綺麗なんでつい」
「もう、明さんたら、やめてくださいよ」
ひかるは顔を赤らめた。それは間違いなくいつものひかるだった。それに明は落ち着いた
のか、ひかるの肩にそっと手を置いた。一瞬ひかるの体が硬直する。
「いい記念写真にしましょうね」
明の言葉にひかるは頷くと、満面の笑みを浮かべた。
緊張などなくなり、いつもの二人に戻る。その姿は見ていて恥ずかしくなるほど初々しい
もので、周囲の人々も微笑ましく二人を見つめた。
「それでは撮りますよ。カメラのレンズを見てくださーい」
ひかるは今までにないくらい最高に幸せそうな笑みを浮かべた。



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