○○アタリ道場○○ 11 - 12
(11)
兄貴は、おかっぱに踏まれた時「げふっ!」とガマ蛙が鳴くような声を
あげた。
「さすがは母は強しのお袋<pワーなりっ・・・・・」
兄貴はゴフッと少量の吐血をし、ガクンと床に顔を落とした。
「ちょっと緒方さん! お話は後で伺いますから、そんなところで
寝てないで、とりあえず居間で待っていてください!!」
おかっぱは、目をカァッ──!と見開いて、どエライ剣幕で怒鳴る。
そして、おかっぱは、目で捉える事の出来ない速さで、まな板上の大根を
タタタッと職人技のように みな同じ大きさで切っていく。
おかっぱの体から立ち昇る異様なお袋さん<pワーに圧倒されて、
兄貴は渋々 台所を後にした。
〜本日の塔矢邸の夕食〜
・サバの煮付け
・里芋の煮物(上にゆずの皮を散らしてある)
・大根とワカメの味噌汁(赤・白味噌の2種類使用)
・ほうれん草のおひたし(海苔醤油和え)
・ササニシキのご飯(新潟の農家と個人ルートで入手)
・きゅうりと人参のぬか漬け(美味しんぼにも登場しそうな一品)
・愛媛のミカン
・・・お題目・お袋おかっぱ、まだ続く。
(12)
兄貴が台所から逃げるように退散してから約1時間以内に夕食が
出来上がった。
まるで絵に描いたようなバランス良い見事な純和風の典型メニューに
兄貴は目を見張る。
「コレ、全部キミが作ったのかい?」
「ハイ、料理は昔から お母さんに少し仕込まれてました。
一般的な家事は出来るようにがウチの家訓ですから」
おかっぱは、客用茶碗(大正時代の骨董食器・金額¥40万ほど)に
ご飯を盛って 兄貴に渡す。
「緒方さん、どうぞ召し上がってください」
「ああ・・・、では頂こう」
おかっぱの作った食事の味は、なかなかのものだった。
味噌汁も化学調味料ではなく、きちんと自然素材からダシを取っていて
とても美味だ。
「・・・・・・ところでアキラくん、割烹着と三角巾 取らないのか?」
「ご飯を食べたら、イロイロとしなくちゃいけないことがあるので、
ボクのことは お構いなく」
そうは言われても、眼前にお袋おかっぱがいては食が進まない。
それどころか腹の底から笑いが込み上げてきて、つい兄貴は噴出した。
その途端、おかっぱの目がキラリーンと光った。いつのまにか右手には
ハリセンを握り締め、兄貴の頭上に雷が落下するが如く、スパパーンンンン
と一発しばく。
「食事をするときは、行儀良くしてくださいっ!」
おかっぱは、兄貴にド迫力の般若顔で注意する。
「ハ、ハイ。スミマセン・・・・・・」
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