浴衣 11 - 12
(11)
進藤の指が僕のあごを捉える。
優しく上向かれ、優しく唇を吸われる。
身体中に小刻みな震えが走った。
「塔矢が凄い碁打ちだってことを知ってるのは、俺の他にもたくさんいるけど、塔矢がこんなに感じやすいなんて知ってるのは、俺だけだ」
「進藤、なに馬鹿なことを……あっ――」
抗議は、最後まで言葉にならなかった。進藤が深く口付けてきた。
甘い刺激に、僕の全身から力が抜けていく。
進藤の膝が浴衣の裾を割り、僕の足の間に入りこんでくる。
「し、…しんどっ……」
進藤の太股が僕の性器に触れた。それだけで、僕は精神的には達していた……と、思う。
「塔矢?」
進藤に瞳を覗き込まれて、僕は二重の意味で真っ赤になっていた。
顔を背ける。いまは見て欲しくない。
君に触れてもらっただけで、こんなにも浅ましく喜んでいる自分を知られたくない。
「どうした?」
「なんでもない……」
「顔、隠すなよ」
隠せるものなら隠したい。
「風呂、はいろう」
消え入りそうな声でそう告げると、進藤の腕が動いた。
僕の内股を、進藤の手が撫で上げる。でも、そんな接触でさえ、僕の身体は反応を見せる。
もう片方の手が、背中で帯を解いている。
するりと、帯が落ちた。喉もとに口付けた進藤は、僕の鎖骨に舌を這わせた。
肌蹴た合わせを進藤は顔で暴いていく。なんて横着なんだ!
でも、その間にも片手と足を使って、進藤は僕の下着を下にずり下げ、もう片手は浴衣の裾を捲り上げ、尻の辺りをまさぐっていた。
(12)
乳首を吸われ、立っていられなくなった。
洗面台に体を預け、進藤の愛撫に身を任せる。
軽く閉じた瞼の裏に、神社の暗い水場で、僕の足の指をしゃぶっていた進藤の、あの唇が思い出される。
一度は無理矢理鎮めた熱が、凄まじい勢いでよみがえる。
「進藤―――」
全身の血液が、ただ一点に集まっていく。
「進藤………」
自分の声に煽られる。
僕はなんて恥ずかしい声で、彼の名を読んでいるのだろう。
「塔矢、……ヒカルって呼んでよ」
進藤の熱い呼吸が、僕の勃ち上がった性器にかかる。
君はどこに向かって話しかけているんだ!?
「進藤じゃなくて、ヒカルって……呼んで」
それはもう命令だった。
そう言う君こそ、いまだに僕を苗字で呼ぶじゃないかと怒鳴ってやりたかったが、そんな余裕はもう僕に残されていなかった。
「ヒカル!」
甘い声でも、優しい声でもなかった。
切羽詰った僕は、叫ぶように彼の名前を呼んでいた。
「ヒカル、……ヒカルっ……!」
進藤の舌が、僕の性器の先に触れた。透明な雫をこぼしているだろう鈴口の辺りで、ピチャピチャと濡れた音が途切れることなく聞こえたてくる。
「ヒカルぅ………」
僕のペニスが、進藤の柔らかい粘膜に包まれた。
自分では再現することのできない快感が、そこを中心に全身に広がっていく。
「ヒ……カァ……………ん」
精神的に、散々高められていた僕は、あっけなく進藤の口になかに欲望を迸らせていた。
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