敗着 11 - 12
(11)
柔らかい毛に指を絡ませ、徐々に刺激を与えて行く。
「・・・、あっ・・・」
自分でする時とは比べものにならない上手さに声が漏れる。
顔が歪む。
碁会所からこのマンションまで、車の中では一言も言葉を
交わさなかった。
ただ、助手席に座っていたヒカルは、シフトレバーを滑らかに操作する
緒方の手に見惚れていた。
「あ・・・あっ・・・、ん、・・・ふ・・・」
呼吸が速くなり、足からは力が抜け体重を緒方に預ける。
規則的に動く緒方の腕がヒカルの腕に当たっている。
ビクンと顎を上げた時、ブラインド越しの光が目に入った。
(ヒカル─)
佐為の声が聞こえたような気がした。
佐為・・・
佐為と過ごしたあの懐かしい日々が頭の中で広がる。
そしてそれをあの部屋で聴いたシャワーの音が打ち消して行く。
(─もう、戻れないんだ─)
それを思い知った時、目からは涙が溢れ、
ヒカルは緒方の腕の中で大きく頭を振った。
(12)
「ドクリ」
体液が流れ、ヒカルは緒方の手の中で果てた。
・・・ハッ・・・ハッ・・・というヒカルの息遣いが聞こえる。
「若いな─。」
緒方は耳元で囁き、ヒカルの背後から抱きついた姿勢のまま
ヒカルに手の平を見せた。
「・・・・・」
ヒカルは堪らずに目をそらす。
緒方はその手を自分とヒカルの腰の間に入れ、中心に滑り込ませると
用心深く塗り込んでいく。
ついこの間、塔矢に開かれたばかりの場所。
「・・・ヤメロ・・・」
恐怖で声がかすれる。
アイツだから許せた。
アイツだからどんな痛みにも耐えられた。
「・・・こうしておかないと、後で泣くのはお前だぞ・・・
どうせアキラはろくに準備もせずに突っ込んだんだろう?
でなきゃあんな傷ができるはずがない─。
だからアキラは子供なんだ・・・」
指の腹で粘膜を摩りながら、緒方が耳朶に口を寄せる。
「─放せっ・・・」
一瞬力が緩んだのを見逃さなかったヒカルが緒方の手を振りほどいた。
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