敗着─交錯─ 11 - 12
(11)
「うん…」
目を閉じて体重を預けてきた。耳朶を噛み石鹸の付いていないところを舐めていく。
「さっきしたばかりで、もう欲しがるのか‥‥?」
わざと意地の悪い言葉で囁く。
「うん‥‥欲しい‥‥」
顔を羞恥で真っ赤にさせながら、体を這わせている腕を掴み、自分の股間に持っていこうとする。
「駄目だ‥‥自分でしてみせろ‥‥」
耳朶まで赤くなった。
「やり方を知らないとは言わせないぞ‥‥」
震える手で自分の陰茎を握ると、遠慮がちに扱き始めた。
「ん…う…」
最初はそっと握っていたのが、だんだんと力が篭ってくる。
「‥‥気分出てきたじゃないか‥‥」
そっと息を吹きかけると体を捩る。
「はっ…はっ…」
小さく息を切らせ、一生懸命に扱いている。
(オレがいること分かってるのか?)
と訊きたくなるほど没頭していた。
それじゃこっちも――
身体を抱きとめながら、後ろを指で突ついた。
「あっ」
体をビクリと跳ねさせ、小さく声をあげた。
「だめ緒方せんせい‥‥」
(12)
動きを止めた進藤が振り返って恐る恐る言った。
「…何が駄目なんだ?お前はそっちをしていればいいだろう」
「だって、」
摩っていた指を粘膜に挿入し入口を広げた。
「…あっ」
股間から手を離し浴室の壁に手をつく。
「コラ…誰が止めて良いと言った、続けろ」
ムッとした顔で睨み腕を掴んで指を抜こうとしたが、あきらめるとまた扱き始めた。
「緒方せんせ…これ、やだよ…」
目には涙が浮かんでいた。
指の数を二本に増やし、中を刺激し続ける。
「く‥‥う、」
子犬のような声を出し、異物を挿入され動かされる感覚に耐えている。膝は笑ってきていた。
泡にまみれたしなやかな肉体が腕の中で飛び跳ね悶える。
その感覚は密着した皮膚を通して、時折、自分にもゾクリとするような快感を与えた。
「先生のも…、硬くなってる」
「ああ…」
動かしていた手が速くなり、一瞬止まったかと思うと壁に白い飛沫が飛び散った。
ぐったりと後ろに凭れ掛かってくると、ハァ、ハァ、と胸を上下させている。
その身体を壁に押しやり、指を抜いて一気に貫いた。
「待って緒方せんせ‥‥っ!」
泡が流れ込んでいる分、いつもより楽に進藤の中に入ることができた。
濡れた黒い髪の毛がうなじに貼りつき泡を滴らせ、その泡が背骨をつたいクレバスに流れ込んでいる。
ダラダラと流れる泡が足元のタイルに溜まり、足が滑りそうになっているのを堪え踏ん張って腰を動かす。
濡れた腰を掴んで我を忘れて中を掻き回した。
「せんせ、もっと、‥‥もっと、もっと‥‥!」
壁に手をついた格好の進藤が一人前の口をきいている。
「‥‥っ!」
奥まで突き上げ手に力を込め中で放出した。
進藤の内腿が小さく痙攣し、すっと力を失った。
|